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COLUMN[2015.06.17]
Bad Kitty Nap
Vol.3 2015/6/17
こんにちはおおくぼです。
すっかり暑くなってきました。間もなく夏がやってきますね。
今回初めて読んでくださる方は続きものとなっているため、ぜひ先月の第一章から読んでみてください。
それではさっそく始めます。

第四章「さっちんのこたえ」 翌日さっちんに 「あの男の人わかる? ちょっとこわい人ムショ上がりの。 あの人がさっちんに手紙だってさ、昨日渡されたんだよおれ」  と言うと さっちんは 「えーー?!」 と驚き 「おおくぼちゃんちょっとそれ読んでみてよ」 と言う。照れ隠しなのだろう、ヘラヘラしている。 「はあーー? いいの?? おれが読んで」 「うん」
ぼくは手紙を開くと、さっちんに向かってその内容を読み上げた。 おれはおまえのことが好きだ。 付き合ってほしい。 だけどおまえがおれのことを好きでなければもう二度とここには現れない。 「、、、だってさ。。 どうすんの?」 「、、、は? いや、あ? あー? いや! ない! ないよ! ないない!」 まっちんは嬉しかったのかもしれない。 赤くなった顔で下を向いたまま 「ないない」 と言いながらも、その手紙を受け取ると きれいにたたんで自分の胸ポケットにしまいこんだ。
「そんなさ、いきなり好きも嫌いもないじゃん、あいつの事よく知らないし!とりあえずあいつのことは放っといて」 と言うとさっちんは店を出て行ってしまった。 見ていた限り、さっちんとムショはさほど親しく話していた様子もなく 挨拶をしたり、せいぜい世間話をする程度だったので その手紙の内容が予想通りだったとはいえ、その強引さにはぼくも驚いた。 しかし参った。ムショになんて言おう。あいつまたキレなければいいんだけど。 とりあえずごまかすしかないか。めんどくさ、、 それから数日後、久しぶりにムショはやってきた。 相変わらず元気そうだ。 「おう」 「いらっしゃいませ 久しぶりすね」 「手紙は渡したのか?」 「はい」 「どうだった?あいつはおれに気があるのか?」 「いやー どうっすかねー とりあえず読んだみたいだけど、いきなりは 返事もできないんじゃないですか??」 「そうか。で、どうだ おまえはおれがあいつと付き合えると思うか?」 「いやあ難しいんじゃないっすか?? ははは」 と冗談で返した途端 ムショは 「おい おまえこっち来い! このやろう」 と突然またキレた。 え!なんで、、 と思う隙もなくムショはまたカウンターの中に入ってくると、ぼくの腕をグッとつかみ、客席のほうに引っ張りだした。 なんでいつもバイトがおれの時だけこいつは来て、そして暴れるんだ・・
「そこに座れ」 ぼくにフロアのイスに座るよう命じた。 ムショはキョロキョロ店内を見回すと 「誰もいないな」と言って、自分の履いているズボンからベルトをするするするっと抜き、右拳にぐるぐる巻きはじめた。 巻き付けた拳の上にはベルトの大きなバックルが乗っている。 「これで殴るといってえんだよ おう??!! 」 そうだったこいつはバカだった キレるとすぐに包丁を持ち出してしまうようなバカだった。 シャレは効かないのだ。 「いや!! うそ うそっす! すいません! 可能性あります! あります あります!!」
ひたすら謝った。もうぼくはムショの舎弟みたいだった。 いや、すでに向こうはそう思っていただろう。 何度も「あります」を繰り返した。 「そうだろ? あるだろ~う? 可能性。 あるよなあ~ わははは」 ムショは拳からベルトをほどくと再びズボンに締め直し、 喜んでカウンターに戻り、祝杯のビールを飲んだ。 なぜかこの恋愛勝負、ムショは自信があるようだ。 わはっ わははっ わははははー  ムショの笑い声がビールの泡とともに店内に弾けていく。 その日の夜 さっちんは店に来るなり  「わたし、あいつとは付き合わない」 と ぼくに告げた。 「だよね・・うん」 それから2日が過ぎ、店に現れたムショに恐る恐るぼくも告げた。 「えと、すいません さっちんは付き合わないそうです。」 
キレて暴れるかと思っておびえていたぼくの予想に反してムショは随分さっぱりとした顔で 「そうか」 とだけいうと振り返ってそのまま店を出てしまった。 そしてムショはほんとうに、以来二度とぼくらの前に現れることはなかった。 ムショはあれからどうしているんだろう。 そもそも口だけで本当に刑務所に入っていたのかどうかも疑わしいし、さっちんに書いたあまりにも純粋な手紙とその引き際の良さを思うと、バカだし、すぐ暴れてずいぶん大変な思いもさせられたけど、なんだか憎めない人だったな とも思う。
こうしてムショが去っていくのと同時にさっちんのネコが約束通り3日間だけぼくのアパートにやって来ることになった。 そして、それはとても長い、長い3日間となるのだった。 つづく
文と絵 おおくぼcatひでたか
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おおくぼひでたか
東京都在住 74年生まれ AB型
ぬいぐるみ作者、tobaccojuiceのギタリスト
古着や帆布、フェルトを主に使ったカラフルなどうぶつぬいぐるみを制作。
ワークショップを各地で多数開催し新宿伊勢丹、銀座三越など大手百貨店での販売も好評を得る。
著作
『どうぶつぬいぐるみ
~ちょっと不思議なかわいい世界~』文化出版局
ネコを溺愛し、手作りフードで飼育中、ときに悩む。

・http://monacos.info/

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