⊂[TOTE | COLUMN | Bad Kitty Nap ]
COLUMN[2015.07.17]
Bad Kitty Nap
Vol.4 2015/7/17
第五章「残された電話」 約束の日にさっちんはぼくのアパートに猫を連れてやってきた。 「帰ってきたら連絡するから、よろしくね」と言うとさっちんは旅行にでかけた。 「オッケーまた3日後に!」 猫はうちに入れられるとすぐさま押入れに逃げ込んでしまった。 こちらも猫についての知識はゼロだ。 おい 遊ぼうぜ などと言って引っ張りだすが うぎー と怒ってまた隠れてしまう。 まあいいか  そのうち慣れるだろ。
2日目。 困ったことが起きた。 高校時代の友人がたまたま遊びに来ている間に窓から猫が逃げてしまったのだ。 「おいヒデ、猫逃ちゃった」と友人。 「ばか! だから開けるなって言っただろ!」 一階のぼくの部屋から飛び出した猫はすぐにそのままどこかへ消えてしまったようだ。  「やばい、探しに行こう」 と言ってアパートの周りをウロウロしてみたが、猫は一向に出てくる気配がない。 まずいぞ こりゃまずい。 まじでまずい! 「逃げちゃったごめん」では済まされない。 焦るぼくに友人は 「大丈夫だろ そのうち帰ってくるよ テレビでみたけど、けっこう覚えてるらしいよ家の事。」 いや、そりゃお前、ほんとの家ならそうかもだけど、うちきたばっかだぞ。 と思うが、考えても仕方ない。 あ、そうなんだ?!と無理やり自分を信じこませると いつの間にか猫のことなどすっかり忘れて遊びに出たが、帰ってきてもやはり猫は出てこない。 やばいなあ・・ けどまだ明日がある、大丈夫だろ。 3日目 やはり猫は戻ってこなかった。それはそうだ 訳のわからぬ家に連れられて、きっと怖くて逃げ出したのだ。 うーむ まずいなあ、、まずい。 さっちんは明日帰ってくるぞ。 なんて言えばいいんだ。 軽い感じでさらっと切り出すのがいいかな 「あーさっちん、なんかさ 猫なんだけど、あれ、逃げちゃってさ ハハハ」 「・・・」 いやいや、誠実に謝るしかない。 「さっちん ごめんよ あのさ・・」 さっちんは泣くかな、いや、あんなタバコの灰なんかを頭に落とすくらいだ、 「そのうち帰ってくるよ、気にしないで!」 と許してくれるかも。 うん そうだ。 いや そうかな_、そんな訳ないだろ。悲しむだろ絶対。 まずい・・おーい猫 帰ってこいよ 4日目 朝、ベランダでなにやら音がする まさか。
「にゃ~」 もう一声 「にゃ~」  猫だ!! おい お前! 帰って来たのか!なんだよ、すげえ! 網戸を開けてやると猫は「にゃ~」と言いながら_ぼくの部屋に入って来た。 おいー よく帰って来たなあ おーよしよし。どこいっていやがったこのやろう~ 見ず知らずの住人が住むこのアパートに、ほんとに猫は帰ってきた。 そうか、今日さっちんが迎えに来るのを分かっているんだな。 これで無事さっちんに猫を返せる。 3日間預かることは預かった と言えるのか?これは、、まあいいか。 猫は無事だ。 よかったよかった。 ところが夜になってもさっちんからの連絡はなかった。 どうしたんだろ、予定でも変わったかな。 まあいっか。 5日目、6日目、7日目 1週間が過ぎてもさっちんからの連絡がない。 もちろんバイトにも来ない。電話にも出ない。 さすがに心配になったぼくはさっちんのアパートへ行ってみた。 玄関のチャイムを鳴らす。 「おーい さっちん」 反応はない。やはりまだ帰ってきていないのか。 ベランダ側に回ってみる。 部屋にはカーテンがなく部屋の中が丸見えだ。 ベランダの手すりにつかまって室内をのぞきこんでみる。 「おーい、さっちん、、あれ、、」
 物が 無い。。 部屋にあったすべての荷物が消えて、なにもない。 ただ、空っぽになった部屋の真ん中に電話機がひとつ 床に置いてあるのが見えた。 なんだよこれ。なんかトレンディドラマかよ・・ りか、、 かーんち!
こうしてさっちんは旅行に行くと言ったまま電話機と猫を残して姿を消してしまった。 バイト先の皆もさっちんの行方を心配した。 前の男にばれたのかな、それともムショとその後、なんかあったのかな。 普段のそぶりも普通であったし、何がどうなったのかまるで検討もつかなかったけど、とにかくさっちんはまた夜逃げをしたようだ。 ねこはちゃんと3日で帰ってきたのにな。 でもなんとなく思う。きっと旅行の話をした最初から猫は置いていくつもりだったのだ。 困ったなとは思ったけど なぜか裏切られたとか、さっちんを恨むとか そういう感情がまるで湧いてこなかった。 そして次に猫のことを考える。とりあえず、うちで飼うしかないよな。 そうして家に戻り 「おい猫 さっちん、いなくなっちゃったよ」と言うと  猫は 「にゃ~」 と言った。 そうか よし わかったんだな、じゃおまえ、これからうちの猫だ。 そういえば猫、名前も聞いてなかった。なんていうんだろ。 「おまえ名前、何?」 それにトイレとかごはんはどうすればいいんだ? うーむ、まずは名前をつけるか。 さっちんの猫だし、さっちんはどうだろ? いや、また逃げるかもしれない縁起が悪い。やめておこう。 うーん、、なまえなまえ・・ つづく 文と絵 おおくぼcatひでたか
次回、「猫に名前をつけなくてはいけない」 話はもうちょっとつづきます。 ~お知らせ~ ぬいぐるみ本のお知らせ。 この春、紀伊国屋サンフランシスコ店でのぬいぐるみ展示が終わり、 夏からはニューヨーク本店での展示予定となっています。 そんなぬいぐるみの作り方本 文化出版局より絶賛発売中、通販でもご利用いただけます。 http://books.bunka.ac.jp/np/isbn/9784579114900/
おおくぼひでたか
東京都在住 74年生まれ AB型
ぬいぐるみ作者、tobaccojuiceのギタリスト
古着や帆布、フェルトを主に使ったカラフルなどうぶつぬいぐるみを制作。
ワークショップを各地で多数開催し新宿伊勢丹、銀座三越など大手百貨店での販売も好評を得る。
著作
『どうぶつぬいぐるみ
~ちょっと不思議なかわいい世界~』文化出版局
ネコを溺愛し、手作りフードで飼育中、ときに悩む。

・http://monacos.info/

Vol.7 Vol.6 Vol.5 Vol.4 Vol.3 Vol.2 Vol.1