ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #7ゲスト:あヴぁんだんど 宇佐蔵べに
SPECIAL[2017.11.22]

ネモト:うさべにちゃんは何でレコードが好きなの?
べに:オールディーズの時代は全部レコードで出てるって知って、当時の音源をそのまま聴きたいなって思って。それまでレコードとか知らなかったので凄く新鮮で。
ネモト:やっぱり音が違うからね。CDって無音だけど、レコードって曲じゃないところ針の音がするじゃん。あれがドキドキするんだよね。針を落とす音から始まってるから。あと自分が好きになったTHE KINKSとかTHE WHOとか、当時のレコードプレイヤーで聴いた時にびっくりして。真空管で出来てるやつで。THE KINKSのレコード初めて聴いた時は、それまでそこまでパンクってほどじゃないなって思ってたのが「うわっ!物凄い音するな」って。当時の人はこの音で聴いてたからびっくりしたんだって思った。
べに:欲しくなっちゃう。
●元々レコードプレイヤーはご自宅にはあったんですか?
べに:いや、なかったです。安いやつを買いました。
ネモト:安いポータブルプレーヤーでいいと思うよ。小さいので聴いた方が7インチはいい音だったりするし、モノラルで。レコード色々買っていくと、このレコードの音がいい悪いとかわかっていったりするじゃん。
べに:33回転、音ちっちゃとか(笑)。
ネモト:45回転の方が溝が深いからね。レコード好きな人が、7インチを集めるのは、音がいいからなんだよね。
べに:大瀧さんのレコードも33回転のは安いけど、45回転のはめちゃくちゃ高かったり。
ネモト:あと45回転っていう響きがいい(笑)。
べに:確かに(笑)。あヴぁんだんどの『ドーナツふれんど』も”45回転で踊ろうよ〜”だし。
ネモト:シングル盤は一対一で曲と向き合える感じがして好きなんだよね。アルバムで3曲目の曲とかって流して聴いてたりするから、それをシングル盤で聴いた時に入ってくる感覚って違うから。
べに:逆にアルバムの流れの中で良い1曲もありますしね。
ネモト:そうだね!でも、うさべにちゃんが今好きになってる音楽って、みんなシングル盤で出てるような曲だと思う。難しい曲じゃないっていうか、音楽が複雑になる前のポップミュージックとしてキラキラしていた時代の曲。初めて聞いたのに歌える感じっていうかね。
べに:初めて聴いたのに歌える感じ、それでオールディーズの魅力にはまっていっちゃったんだと思います。
ネモト:パンクとかは聴いてないの?
べに:ロリータ18号とかは好きです。でもあまり知らない…。
ネモト:パンクバンドがオールディーズの曲をカバーしてるものも多いから面白いと思うよ。俺は元ネタがあるものがすごく好きで、オマージュというか。ちょっとニヤっとできる感じが好きなんだよね。チロリアンテープ・チャプター4の時も意識してた。
べに:チロリアンテープ・チャプター4の『HEART』がすごく好きで、あれも原曲ありますか?
ネモト:あるよ。ニック・ロウのいたRockpileの曲で、最近はTHE SWING KIDSってバンドもカバーしてる。でも、自信を持って言えるのは、日本で一番最初にあの曲をカバーして録音したのは、俺達だと思う。『HEART』はニック・ロウがガールズグループみたいな曲を意識して作った曲で、イントロも全く同じ曲がある。
べに:なんだろう?
ネモト:色々YouTubeで送るよ。
べに:お願いします!
●(笑)。元ネタと並べて聞いたりするの本当に楽しいですからね。
ネモト:そうそう。CHILDISH TONESはそれをやりたくって、特典で元ネタ集を作った。店舗によって違う種類を作って、1枚はカバーしてる原曲を全部入れてて、もう1枚はフレーズをパクったり、サンプリングした元ネタを集めて。それはTHE CRAMPSってバンドがいて『BORN BAD』っていうTHE CRAMPSの元ネタを集めたレコードがあって、チャルトンのBORN BAD作ろうと思ったんだよね。
べに:あヴぁんだんども、いつかそういうの作りたいです。
ネモト:あヴぁんだんどは、そういうの似合うと思う。カバーにしても曲だけじゃなくて、過去のアイドルの振り付けやったりもできるだろうし。俺とかチャーベくんはサンプリング文化の人で、チャーベくんが最初に作ったソロアルバムもそうだけど、DJもそうで、ゼロから新しいものを作るんじゃなくて、過去にあったいろんなものを組み合わせて作る世代だから、近いものを感じるんだよね。それは好きで掘ってるものがあるから出来るっていうか。
べに:好きになるって大事ですよね。アイドル好きになってよかったなって思います。多分、アイドルやってなかったら、何にもやってないと思います。大学も適当にいくような人になってたと思う。
ネモト:うさべにちゃんとは、あんまり世代の差を感じないというか。好きなものが俺の理解出来る、経験してきたものだから教えることもできるし、俺の知らない知識だったり表現方法を知ってたりするから、俺が教えられることもあるし、そこが世代の差を感じないところなのかも。CHILDISH TONESも世代バラバラだしね。
べに:つづみっこちゃん、まだ若いですよね?
ネモト:22歳かな。バンド組んだ頃は19歳だったから。最初はギターのニシオカくんが20代で、内藤くんが30代で、俺が40代っていう(笑)。
●4世代って凄いですよね(笑)。
ネモト:CHILDISH TONESは、それまでいろんなバンドとかやってきたけど、それとは違う人脈で、それまでやったことないことを45歳で一から始めた。でもそれも単純に、古いおもちゃが好きだったからおもちゃの楽器でそれでやりたいなと思って始めただけ。そうやって好きなことやってたら結果がついてくるときがあるから、いつでもまだ始められると思う。でも俺みたいな世代より、20代とか10代の方が広がりも可能性も高いと思うから、あんまり狙わないでやってる方が。多分あヴぁんだんどって好きなことやってるから、こうなってきたんでしょ?
べに:そうですね。別に私が振り付けをやりますって言ったわけじゃないし、プロデュースをやりますって言ったわけでもなくて、気付いたらこうなってた感じです。
●結果的に、今が一番好きなことできてるんですものね。
べに:そうですね。やっぱり二人だと自由だし、こたちゃんもぶっ飛んでるけど、優しいし面白いし。
ネモト:2人だとユニットになるけど、バンドって感じがするんだよね。1人でもそういう人いるじゃん。TUCKERとか。
べに:確かに(笑)。こたちゃんはビートルズがすごく好きみたいで、だから次はこたちゃんの好きな音楽もやってみたいなと思ってて。
ネモト:いろんなことやってみたらいいと思う。アイドルとして固定観念でやる人もいるけど、今は境目もなくなってきてるからね。
べに:でも私、アイドルの先輩、レジェンドたちに対してのリスペクトがあって、だからアイドルとして大事なことは守りつつ、自由にやりたい範囲でやりたいなって。アイドルってやっぱり大げさですけど、夢とか希望、明るさを与える存在だから、ステージの上ではそうしようって、そこだけは外せないねってあヴぁんだんどでも言っていて。逆にそこが楽しい。
ネモト:そういう表現って大事だと思う。俺も震災の頃からだと思うんだけど、それまではKING BROTHERSや毛皮のマリーズとか激しいロックンロールをやるバンド出してたけど、少し自分の興味が変わってきて、世の中が暗くなるほどキラキラしたものを求めるようになって。受け取る側は何も深いこと考えない、楽しいだけでもいいし、ちょっと救いになるのでもいいし、何でもいいと思うんだよね。
べに:私もそれLEARNERSさんのライブを見て、感じたことで。LEARNERSさんたちが楽しくやってるし、音楽も楽しい、空間全てが楽しい、本当に凄いなって思って。せっかくライブ見るなら、明るい気持ちになって帰ってほしいなって思ってます。
●これからやってみたいことはありますか?
べに:私、何にも楽器ができなくて、中1の時、ライブキッズに憧れてギターをやってみたんですけど、全然出来なくて、3ヶ月で飽きちゃって。
ネモト:実はうさべにちゃんにやってみてほしいことがあって、CHILDISH TONESでつづみっこが弾いてるトイギターを弾いてほしい。あれは押さえて弾くだけで音が出るから。同じギターを二つ持ってるので、一つ貸すから練習してみてよ。
べに:やったー!
ネモト:見た目としても可愛くて、おもちゃのギターなのにこんな音鳴るんだって驚きもあるし。あヴぁんだんどって基本オケでやるけど、プラスでギターあったりしたらいいなって。
べに:こたちゃんも最近どっかの民族楽器もらって。あのディジュリドゥでしたっけ?
●GOMAさんのやってらっしゃる楽器ですね。
べに:それをずっとやりたいって言ってたら、貰ったらしくて。出来たら一緒に。
ネモト:いいね!いろいろアイデアはあるので、何か一緒にやれたらいいなと思います。
べに:是非よろしくお願いします!

(文・小山裕美)
[PROFILE]
宇佐蔵べに
2014年結成の”見捨てられたアイドル”ことあヴぁんだんどの唯一の初期メンバー、宇佐蔵べに、略してうさべに。1998年生まれの18さい。グループの振付・プロデュースを自ら行い、高校1年生の時から始めたZINE制作やグッズ制作も日々行うなど、DIY精神に溢れた活動を続けている。また音楽好きが高じてアナログDJも始め、その幅広い選曲で話題を呼んでいる。いろんなことに興味があり、いまをとにかくたのしく生きるアイドル。11月には、あヴぁんだんど初の7inchシングル「ドーナツふれんど」をVIVID SOUNDからリリース。相方の小鳥こたおは大学受験のため半年間お休み中のため、現在はうさべにひとりでなんとか奮闘中。

https://twitter.com/avandoned_beni

[PROFILE]
ネモト・ド・ショボーレ
POLYSICS、SCOOBIE DO、KING BROTHERS、THE NEATBEATS、毛皮のマリーズ、黒猫チェルシー、住所不定無職、うみのてetcなどを輩出したロックンロール・レーベル「DECKREC」主催。 ギタリスト として、チロリアンテープ・チャプター4、THE NERDS、The Mighty Mogulsなどのグループに参加。 2015年秋に、すべてTOY楽器を使ってロックンロールを演奏する「CHILDISH TONES」を結成。
 フリーの音楽プロデューサーとしても活動中。

https://twitter.com/DECKREC