ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #4ゲスト:竹内道宏(a.k.a. たけうちんぐ)【後編】
SPECIAL[2014.09.19]

たけうちんぐ:狙いを定めて書きましたね。やっぱり熱い気持ち、好きって気持ちは届かないことはないんじゃないかって。他の人を見ててもそう感じますので、今の熱い気持ちを誤摩化さないほうがいいと思いました。
ネモト:それを行動に移すことだよね。
たけうちんぐ:行動のタイプにもよりますよね。好きにも色々あって、例えばバンドのファンでも好きが悪い方向の狂気に感じるものになる人もいると思うし、僕何でもそうなんですけど、バンドとプライベートとかで繋がろうって夢がないんで。むしろプライベートで繋がろうと思うと夢がなくなるっていうか、わりと距離をちゃんと保ちたい。あんまり仲良くなりたくないんです。憧れってものがなくなるとキツいなって思ってて、かまってちゃんも距離はめちゃくちゃ意識してますね。の子さんと仲良くならない方がいいって思ってて、実際その距離感をわかってくれてる気はしているんですけど、どうなのかな。何でもそうですけど、作品とコミュニケーションを取ることが一番だと思っている。実はそのことを感じたきっかけがあって、最近ツイッターで書いたんですけど、園子温監督と12年前位に飲んだことがあるんですね。『自殺サークル』って映画の公開が大阪であった時に、園子温って名前もそんなに知らないくらいだったんですけど、当時映画に凄い興味を持っていて、終わった後にファンの人を交えて飲み会みたいのがあって、そこに勇気を出して一人で行ったんですね。当時僕は未成年だったのでオレンジジュースでしたけど。そこで園監督が相当酔っぱらって暴言吐いたりしてたんですよ。女の人にセクハラ的なこと言ったりして、当時僕18歳でピュアというか、そういう人を見たことなかったんですよ。
ネモト:悪い大人をね(笑)。
●しかも一番悪そうなところを(笑)
たけうちんぐ:そう(笑)。一番不穏なところを見てしまって、酔うことでそういうことになる人も初めて見て、「なんて奴だ」ってずっとムカついてて。それで夜も更けて将来の夢を語るみたいな気持ちの悪い感じの時間になったんですけど、園監督が誰かが何か言う度に暴言吐いてて、流れで僕が「映画を作りたいって夢があります」って素直に言ったら「死ねよ」って言われて。初めてそんなこと言われたし、さっきまでの鬱憤が溜まっていたので、ついキレちゃって。「お前が死ね!」って言っちゃって。
全員:(笑)
たけうちんぐ:そしたらそこに構成作家の倉本美津留さんもいたんですけど、「そんな、死ねとか言っちゃ駄目だよ」って、「まぁまぁ」って収めてくれたんですよ。で、そこから園子温大嫌い死ねって思いながらも、作品はずっと観てたんですよ。正直これいいなっていうのとうわーっていうのとあったんですけど、2009年にフィルメックスで『愛のむきだし』を観て、それが本当に自分の中では傑作で、映画館で4回観たんですよ。それでわりと今のBABYMETALみたいな熱い気持ちで、mixi日記に『愛のむきだし』のことを本当にこれは凄いって書いたんですよ。その最後に園子温監督とは大阪でこういうことがあって、「最低な人間だけど映画は最高」みたいなことを書いたんですよ。そしたら数日後mixiにメッセージが来て、件名に「園です」ってあって。
全員:(笑)
たけうちんぐ:ちょっと怖かったんですよ。この日記を見たんかよ、やべえよって思って、開いたら「大阪では失礼しました。いい映画作るよ」ってメッセージが来て、凄い嬉しくて。そこで思ったのが、人間性を否定されてまで映画を肯定してくれて嬉しかったんじゃないかなって思ったんですよ。あの人は人間的に好かれたいと思ってないんじゃないかなって。だから今も僕は人間よりも作品が一番だと思って接してるんですよね。
ネモト:逆に作品に人間性は出るしね。
たけうちんぐ:そうですね。人間のいいところも悪いところもどっちも描ける映画って凄いと思ってるんで。園子温監督は現実でめちゃくちゃだけど、作品がクリエイターにとっては一番重要なんだなって。そのメッセージも12年前のことも含めて、自分の中では凄い重要なエピソードなんですよね。
ネモト:園さんは俺がやってたバンドが凄いお世話になった、リトルエルビスリュータさんっていうロカビリーの奇人がいて、その人の従兄弟なんだよね。「子温ちゃんは映画撮ってなかったら死んでるね」って言ってた。
全員:(笑)
たけうちんぐ:の子さんもそうですけど、音楽やってないと本当にヤバいって人が好きで、そこで僕はどうなんだろうって思うと、ちょっと違うなっていうのがあって、自分の憧れとは違う形で物を作っているところがありますね。めちゃくちゃ人に迷惑かけたりとかしないし、酔っても暴言とか吐かないし、平和に過ごしてきた人間なんで。ある程度空気を読むというか。
ネモト:そこがコンプレックスだったりしない?
たけうちんぐ:ありますね。恐れなしで物を作る、空気を読まない人に憧れてて。山戸結希監督にも感じるんだけど、あんまり遠慮ないじゃないですか。遠慮ない人って凄い物を作るのに適してるんですよね。人に嫌われる覚悟がある。僕は人に嫌われたくないとかはないですけど、やっぱり常識的に人が嫌なことはやりたくないっていうのがあって。けど、最近カメラ複数台で撮り始めてから、自分の性格が分かるようになってきたんですよ。人にやってもらったことで不満を覚えて結構怒ったりとかして。カメラが常に傾いてるのとか、演出じゃなく揺れてるのが凄い苦手なんですよ。意識的に揺らすことは多いんですけど。そういう物を作ることにおいては人を叱るんだって初めてわかった。日常生活はめちゃくちゃじゃないですけど、物を作るときは少し神経質になってるのかもしれないですね。
ネモト:俺はちんぐのこと客観的にしか見れないから、この人狂ってるなって思うよ(笑)。
たけうちんぐ:(笑)。元々神経質なんですよね。部屋が奇麗じゃないと気が済まなかったりテーブルが歪んでたら嫌だったり。それが正に映像にあって、リズム良く映ってないと嫌だし、字幕の位置も絶対ここっていうのがあって。だからどの映像見ても字幕の高さとサイズと影のサイズとか一緒で。統一化したい。CDラックもバンドごとに並べないと気が済まなかったりしますね。だからといって、誰かと住んだ時にそこが乱されても怒ったりはしないんですけど。
ネモト:自分の中でちゃんとしておきたいんだね。