ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #4ゲスト:竹内道宏(a.k.a. たけうちんぐ)【前編】
SPECIAL[2014.09.09]

ネモト:イメージ的な部分もあるけど、かまってちゃんとコミュニケーション取れてるっていうのが凄いよね。
たけうちんぐ:どうなんですかね。でも僕、実際の子さんと友達って感じはないと思うんです。いまだに敬語でして…。他のメンバーはタメ口ですけど、それは一緒に飲む機会があったのでそうなっただけで。なんででしょうね。の子さんは年下なんですけど僕はやっぱり凄い尊敬してて。彼は天才なんですよ。元々ファンだったのもありますし、あんまりどういう関係って説明しづらい感じがあって、本当にカメラで関係を築けたって感じですね。
ネモト:俺はかまってちゃんの最初の印象が凄く悪くて、初めてライブ見た時に友達に「人を嫌な気持ちにさせようと思ってるんだったら完璧なバンドだと思う」って言ったんだけど、セックス・ピストルズを初めて見た時も同じように思った人も居ただろうな、みたいな。その後かまってちゃんフォロワーみたいなのが出てきてからもしっくりこなくて、それまではあんまり感じてなかった、完全に違う世代の子達が出てきたなって思った。でも無視は出来なくて、嫌いなのに調べてるっていうか(笑)。だけど『ロックンロールは鳴り止まないっ』って曲が凄くよくて、権利関係無視したようなPVも凄くかっこよくて、そこにはグッとくるものがあった。
たけうちんぐ:(笑)。僕も神聖かまってちゃんを知るタイミングがずれてたら、ひょっとしたら嫌いになってたかもしれないですね。実際テレビで放送禁止的なことをやるとかで毛嫌いしてる人も多くて、気持ちがわかる部分もあるんですけど、そのせいで彼の作る曲に辿り着けないのが悔しくて。僕は何よりもの子さんの作る曲が好きなんですよね。だからその曲に辿り着かせるってことで、僕は今までと変わらない気持ちでやってますね。一度、ある程度知名度が出たし、他に撮る人が出てきたのでもう自分にはやることがないって思って、2010年の4月に彼らが初めて下北の屋根裏でワンマンをやってから撮影を辞めたんですよ。でもその後入江悠監督の『劇場版神聖かまってちゃん』とか松江哲明監督の『極私的神聖かまってちゃん』とかに何故か強引に関わらされることになって(笑)。入江監督の『サイタマノラッパー』も好きだし、松江監督も学校の先輩っていうのもあって、まぁ断らざるを得ないっていうか(笑)。その時に久しぶりにWWWのこけら落としのライブを撮ったんですよ。それで段々気持ちが戻ってきて、と同時にネットでかまってちゃんが凄い悪く言われてて、その誤解を解きたいのもあって撮影を再開しました。実はちゃんとかっこいいんだよ、いい曲ばっかりなんだよって伝えたくて。僕は毎日かまってちゃんのエゴサーチしてるんですけど、の子さんのことをキチガイみたいな悪口が多くて、ただの変なことしているバンドって認識されているのが悔しいって気持ちがあるから撮影してると思います。
ネモト:俺がリリースしてきたバンドって、結局音楽だけじゃなくて人間性もあって。例えば銀杏BOYZも峯田君のことが気になるじゃん。行き過ぎてるところもあるけど、俺は銀杏も峯田君もすごく好きで。リリースしてたバンドだと、キングブラザーズとか。その後に毛皮のマリーズ(現ドレスコーズ)の志磨君と会って、種類は違うんだけど人間力っていうか、そういう力を感じて。それぞれ進行形でめちゃくちゃ苦しんでるっていうか。誤解されると嫌だけど、苦しんでいる人が好きっていうか(笑)。かまってちゃんも見ているうちに同じ種類に感じたんだよね。
たけうちんぐ:それはもう僕絶対ですね。葛藤しているからこそ、それしかないって音楽をやってる人の音楽を聴きたいっていうか。楽しくやってる人の音楽も好きだけど、自分が全てを捧げてもいいっていうのはそういう人なんだなって。だから日常生活はまとまってなくてもいい。
ネモト:いまは簡単に全部理解出来ない人が好きなのかも。仕事柄、分析癖があるから。自分の引き出しとかボキャブラリーの中で何が好きなんだなとか、分析しきれないバンドが好き。
たけうちんぐ:僕の印象では3、4年前位にいたバンドってNUMBER GIRLかくるりかサニーデイ・サービスかに当てはまってるようなものが多かった気がして、自分が聴いてきたものだったから、そういうのには抵抗があったんですね。影響受けてることを遠ざけようとしていたり葛藤しているものが好きで、その中で一番感じさせなかったのが神聖かまってちゃんだったんですね。自分の体験から音を作っている感じがして。
ネモト:確かに何かになりたいって感じがないよね。
たけうちんぐ:の子さんはの子さん自身になりたいんじゃないかって感じて。僕自身、野心が明確な人間じゃなくてビッグになりたいとかもなく、ただ映画に関わりたいってだけだったんで、自分自身になりたいって人を尊敬しちゃうんですよね。

ネモト:結局、ある程度広がった人っていうのは結果だと思う。たまたまそうなっちゃったっていうか。
たけうちんぐ:実際僕もいつの間にかこんなことやってるって感じで。映像の仕事、特に編集の仕事がしたくて東京に出てきて日本映画学校っていうところに通ってて、でも半年で辞めて(笑)。自分で学費と生活費150万円位貯めて上京してきたんですけど半年後に50万円位しかなくて、でも次の学費が50万円位で、もう払うと死ぬ(笑)ってなって。だけど本当にバイトする時間もなかったんです。学校が忙しくて夜までみっちりやって、課題も多くて。僕に体力がなくて。それで元々高校時代からホームページを持っていて日記を毎日書いていたんですよ。まだブログとかなかった時代だったんですけど、当時NUMBER GIRLのことを熱く書いてたら、大阪でライブがあった時に路上で向井さんにばったり会って、その時に話の流れで「お前が竹内ミチヒロックか!」って言われて(笑)。ハンドルネームで言われてすっごい恥ずかしくて。
全員:(笑)
たけうちんぐ:当時、NUMBER GIRLのファンの間で有名な掲示板に書き込んでたんです。そこに自分のホームページを貼付けてたのを向井さんが日記とかライブレポを見てくれていて。凄い嬉しかったのは「お前の文章は面白い」って言ってくれて、それで調子に乗って、18歳位からネット上に文章を書くっていう癖が出来て。上京してもフリーターで日払いのバイトとかやりつつ、日記は書いていたんですね。その日記が裏モノJAPANって雑誌を作っている鉄人社って出版社の編集長に見つけられて、「うちで一緒に雑誌作らないか?」って言われて。韓国映画でイ・チャンドンの『オアシス』が凄い好きなんですけど、それについて書いてたのを感銘を受けてくれて。そこでお金に少し余裕が出来て、友達のバンドとか趣味で撮ってアップロードしてたんです。それをやっている中で、普段洋楽ばっかり聴いてる大阪の友達からかまってちゃんを薦められて、聴いて「うわっ!すげっ!」ってなって、4月にライブがあるって知って。行こうと即決しました。それもお金の余裕があるから行けて。だから本当に鉄人社に入ったおかげもあって。そこからライブを撮るようになって、別にカメラマンになろうと思ってなかったですけど、認知して頂くようになった。
ネモト:俺も目指してレーベル始めたわけじゃなくて。自分のバンドをやりながら下北沢のCLUB Queっていうライブハウスで働いてて。言ってみればNO FUTUREな感じで、将来何になろうとかもなくて。偶然POLYSICSを見て「何かしたい!」って思ってたら周りにいた人に「レーベルやれば?」とか言われて。Queの親会社がU.K.PROJECTで、その頃ちょっとしたインディーズバブルだったから、「POTSHOTのリョウジ君が社長にレーベルやらせてって言ったら、やらせてくれたらしいよ」って話を耳にして。ただのライブハウスのドリンク係だったんだけど、社長に「話があるんですけど」ってアポとって、「POLYSICSってバンドがいるんですけどレーベルやらせて下さい」って言ったら「いいよ」って。
全員:(笑)
ネモト:だからその時は何も考えてなくて、これ一発で終わるんだろうなって始まりだったんだけど、たまたまPOLYSICSが上手くいって売れてくれたんで、「好きなもの出していいよ」って言われて、自分は60’Sとかガレージパンクのシーンにいたから、そういうもの出してたら、たまたまギターウルフとかMAD3とかGYOGUN REND’Sとかデキシード・ザ・エモンズとか盛り上がってきた時にぶつかって上手く進んだみたいな。
たけうちんぐ:本当に好きって気持ちだけですよね。
ネモト:本当にそうなんだよね。
たけうちんぐ:そこは全く一緒ですね。好きって気持ちが将来の不安を凌駕していたっていうか、目の前にある熱中しているものが今後の不安をかき消してくれてたのはありますね。正直今もそれに近いかな(笑)。色々損得で考えたら基本的にライブ撮影とかタダだし時間も使うし全然良くないけど、好きだからやっていて、それが仕事に繋がったりしてる。
ネモト:俺もライブハウスで働いて何も考えてない自堕落なその日暮らしをしてたけど、それまでの友達やその時に知り合った人達が今に繋がっている。憲ちゃんもAxSxE君(現NATUSMEN)とか、元ビークルのヒダカもそうだし、サニーデイとかもそうだし。
たけうちんぐ:僕とか20代のバンドマンからしたら、その頃の下北って憧れですよね。
ネモト:まぁ、それも何十年と経ったからそうなってるってことだよね。二位さんに読まれるとまずいんだけど(笑)、でももうバレてるからいいと思うけど、俺がバイトの中で一番年上だったから夜中に勝手にお店閉めて、バンドマンの友達呼び出して夜中中セッションしたりしてた(笑)。近所に住んでたデキシード・ザ・エモンズのはっつぁんとか憲ちゃんとひさ子とかも呼んで、Queの店員みんなでNIRVANAの『Smells Like Teen Sprit』を延々30分演奏してたり(笑)。
全員:(笑)
ネモト:振り返ってみるとそれもバブルっぽい雰囲気だったのかな。自由に好きなことやれたから。だから「これからレーベルをやりたいんですけど」って若い子に相談とかされても、何も参考になることを言ってあげられない。
全員:(笑)
ネモト:まさかそれが15年も続くと思ってなかったし。
たけうちんぐ:ツイッターとか見てると、今の若い子は目に見えて鬱屈してる人が多くて、そういう人って何かしらになりたいとか面白いことやりたいとかだったりするんですけど、好きなことやってたらええやんって本当に思うんですよね。僕もそうだったし。合間合間で嫌なこととかもあったけど、全部好きなことに救われてるなって思うんです。でも、それがマジで好きじゃないといけないんだろうな、とは思います。