ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #3ゲスト:キングジョー
SPECIAL[2014.07.09]
ロックンロール・レーベル「DECKREC」主催のネモト・ド・ショボーレ氏が、交友のある音楽、映画、漫画、演劇…様々な場で活躍する多種多様な人たちを迎えて送る、ジャンルレストークセッション「TALKIN' REC TAPES」。第3回目のゲストはキングジョーさん。ここでしか聞けない話が満載です!
ネモト:初めて会ってから随分経つよね。
キングジョー:15年位?
ネモト:うん、14、5年だね。
ジョー:DECKREC立ち上げた頃やったっけ?
ネモト:いや、DECKRECは99年の2月に初めてのリリースのPOLYSICSがあって、その1年後位かな。
キングジョー:会った直後に「DECKEREC始動」っていうコンピレーション送ってくれたでしょ?かっこいいコラージュしたジャケットの。
ネモト:色んなロックレジェンドのパーツをコラージュしたやつね。今やったら怒られるよね(笑)。
ジョー:怒られるね。
ネモト:誰かの顔の輪郭に、目はスティーヴ・マリオット、ピート・タウンゼントの鼻つけて、口はミック・ジャガー、レイ・デイヴィスの帽子被せるとかそんなことやってたよね。
ジョー:あれ、ネモト君が作ったん?
ネモト:うん。ミュージック・マシーンの手袋が、ボ・ディドリーのギター持ってて、キース・ムーンのバスドラをジョーイ・ラモーンの足が蹴っ飛ばしてるみたいな(笑)。全部持ってるレコードからコピーして作った(笑)
ジョー:好きなもん全部詰めたんやね(笑)。
ネモト:あれはDECKREC始めて結構バンドが揃ってきたから出したんだよね。ジョー君と初めて会ったのはTHE NEATBEATS絡みだよね。
ジョー:その前からショボ兄っていうのは共通の知人からよう聞いてて。その時はイメージ的に下北のQueを中心にお洒落な若者とか可愛い古着の女の子に取り囲まれた人なんやろうなって。
全員:(笑)
ジョー:なのに「ショボ兄」とか言ってて、何この人って。
ネモト:(笑)。俺は元々ジョー君が作ってた『SOFT,HELL!』読んでたからね。一番最初のコンビニコピーのファンジンの最後のやつを読んだの。
ジョー:それまでのは読んでない?
ネモト:それまでのは本になってるので読んだ。
ジョー:14か15まで作ったのかな。それを本にまとめてくれたんよね。
ネモト:『SOFT,HELL!ガレージパンクに恋狂い』って本があって。出たのはいつ頃?
ジョー:96、97年くらいかしら。
ネモト:あと関西のフリーペーパーのJUNGLE LIFEでもジョー君は連載やってたから、それでも読んでた。
●ジョーさんの最初のスタートは物書きとしてなんですね。どういう流れで『SOFT,HELL!』を作ることになったんですか?
ジョー:『GS GS GS』って本の中でジミー益子先生が一番最初の頃のガレージパンクのことを紹介してるページがあって、「聴いたことないけど聴いてみたい!」ってなって。
ネモト:ネオGSがブームになった頃だよね。ジミー先生が始まり?
ジョー:そうやね。あと関口弘さんがDOLLってパンク雑誌でレコードのレビューを連載しとった。地方に住んどったんで、それを非常に有り難く拝読して・・・音楽聴くのも好きやけど、音楽について書かれた文を読む方のはもっと好きかもしれない。
ネモト:その気にさせられる感じがね!
ジョー:そうそう。そそのかされる感じというかね。
ネモト:多分間違ったことも言ってるんだけど、それもひっくるめて刺激を受けるっていう。
ジョー:積極的にそそのかされたがってる(笑)。あとは10代の頃に同級生で今DOMMUNEやってる、宇川直宏にも学生時代に強い影響受けて。その後に会社に入るんですけど、その時面接受けたのが松本亀吉っていう。
●凄い出会いですね。
ジョー:そう。その時は普通に「人事の松本さんって先輩」とゆう認識だったんやけど、半年位した時に一緒に昼飯食った時、音楽の話になって、「プッシー・ガロアとか好きなんです」とかいう話したら、「実は僕な…」って『溺死ジャーナル』っていう彼の作ってたホチキス綴じの、社内の黒いゴシップとかあらゆるこれはいかんっていうものばかり集めたミニコミを見せてもらったりして。あとは関西だったんで安田謙一さんとも知り合って、そういう自分で自分のメディアを作ってる人達に出会って影響受けたのが、自分が『SOFT,HELL!』っていうのを作るきっかけになった。まぁでもそんだけの人に出会ったら「なんかするしかない」いう感じよね。
ネモト:最初から狂ってたんだね(笑)
●かなり特殊な環境ですね。その会社は普通の会社なんですか?
ジョー:大阪有線です。
ネモト:それは何年位?
ジョー:俺が24歳から29歳位までやから
ネモト:90年代半ばくらいだね。
ジョー:当時の有線は面白い会社で。今は統合されて2つか3つなんですけど、放送所が全部で800箇所くらいあって、放送所が閉鎖されたら、リクエスト用のレコードが全部段ボールで本社に送られて来るんです。それで本社でお金払って産業廃棄物で出してたのを、夜中に忍び込んで…。
全員:(笑)
ジョー:たまにどえらい貴重盤とかあるんですよ。
ネモト:そこで見つけて今でも持ってるのある?
ジョー:ドクター・フィールグッドの『炎のロックンロール・ナイト』とかプラスチック・ベルトランの『恋のパトカー』とか。ラモーンズとかダムド。
ネモト:ちょうど高かったよね。90年代『Killed By Death』とかあったから。
ジョー:そうそう。
ネモト:70年代のC級~Z級パンクバンドのコンピみたいのがあって、その辺が盛り上がってて。
ジョー:日本盤のシングルは世界的に見ても数が少ないから価値が高くて。で、そんなことがあって、こういうジンを作って。と同時に、多分体力余ってたんでしょうね。バンドもやったりして。
ネモト:マグニチュード3だね。他にDJもずっとやってて、イラストも書いてて。
ジョー:今もね、やってることは変わらんちゃ変わらんあ(笑)。
ネモト:その時に面白いと思ったことをやって。
ジョー:そうやね。あんまりこだわりなくやってる感じでしょうか。
●イラストを描き始めたのはデザインの学校に行っていてとかではなく?
ジョー:ないんですね。子どもの頃から漫画家志望ではありましたが、自分がミニコミ作り出した時にページに隙間が出来るんで、そこを埋めるために描き始めた。
ネモト:俺、SOFT,HEL!を読んで衝撃だったのは、ディスクレビューで普通ジャケットの写真載せるところが全部手描きだったの。
●(笑)
ジョー:あれヤバかったね。
ネモト:すごいゆるゆるの。でもちゃんとわかるし、感じが出ていて、本物のジャケより伝わるんだよね。
●それは本物のジャケットを載せちゃいけないとかでですか?
ジョー:いや、LPってコンビニのコピーでもはみ出るんですよ。で、2回に分けて切って合わせたらいいんかなとか思ったけど、描いたらいいやって(笑)。
●今だったらネットから画像を取ってとか出来ますけど、そういう時代じゃないですものね。
ジョー:そう。でもあの頃にああいうことが出来て、それを単行本出せて良かったなって思います。
ネモト:俺も10代の頃、チラシ作るのに色んなところから文字切って貼ってってやってた。
ジョー:誘拐犯みたいなやつでしょ?
全員:(笑)
ネモト:そういうことしか出来なかったもんね。一晩かけてやったりね。そういえばあの界隈のバンドマンも美大生とか服飾専門生とか多かったよね。THE EVIL HOODOOとかGREAT MONGOOSEとかJACKIE&THE CEDRICSとか。いまの仕事もデザイン関係だったり。
ジョー:そうだったんやね。俺はそういう教育をまったく受けてないんで、ここ最近アクリル絵の具とか使いだして、そんなの使うの高校以来で。影の付け方とかも分からないから、それこそ公民館でやってる市民講座とかに行って、1から教わった方がいいんかなとかよく思う(笑)。
●(笑)
ネモト:手描きジャケの画集(『SINGLES GOING STEADY』PRESSPOP刊)も出してるよね。60年代とかの中古7インチってジャケがなくなっちゃってて、白いスリーブに入ってるのが多いんだけど、そうするとどれがどれかわからなくなるからって描き始めたのが始まりで。それがいつの間にか作品になっちゃったっていう。
ジョー:段々凝りだして。
ネモト:でも本当あれDJやってると分かり易いんだよね。
ジョー:でしょ。凄いプリミティヴな発想というか(笑)。
ネモト:初めての画集があれでしょ?
ジョー:そうそう。
ネモト:日本とアメリカで同時発売で出てね。俺をモデルにした画もあったね(笑)。
ジョー:あった、あった(笑)。
ネモト:ジョー君、友達をいっぱい描くから。俺が今ツイッターとかで使ってるアイコンも描いてもらった。
ジョー:今年は20年分の絵をまとめた画集が出ることになって。でも原画ぜんぜん残してないんですよね。描き終わったものにそんなに執着がなくて。だけんストックないんで最近沢山描いてるんですけど、確実に今の方が上手くなってる(鼻高々)。
ネモト:元々ジョー君ってヘタウマなタッチだったけど、最近の丁寧に描いた画も凄い好き。
ジョー:ありがとう!うれしいなあ!
ネモト:ヘタウマなタッチと違和感なく、どっちもジョー君の画って分かるのが凄いなって思った。漫画みたいな感じがあっていいよね。
ジョー:基本漫画家に憧れてるところがあるしね。
ネモト:漫画も描いてたよね。一時期コンビニコピーでホチキス止めされた漫画がよく送られてきてたよね。
●やろうと思って、それが出来てしまっているのが凄いですね。音楽も文も画もきちんと形になっていて。
ジョー:そうですね。「やろう」と思った時に直ぐポンと、後先考えずにやってしまうところがあるんで。
ネモト:何かやりたいと思って、やりたいで終わっちゃってる人が多いと思う。
ジョー:あぁ。これをやるにはあれを準備しなければとか言う前に、近くにあるもので済ませるというか(笑)。
ネモト:カウントで言うと、1,2,3!の1,2!でやってるみたいな感じだよね。
全員:(笑)
ネモト:一個の既にある価値観を追求するよりも、勝手に自分の中にある価値観を追求する、自分を追求するっていうかね。
ジョー:自分世界をね。本当そうやね。俺の場合は、同世代にROCK’IN JERRY BEANみたいな絶対的なイラストレイターがおるし、あれの亜流と言うか真似たダサイのもよう見るしね。どんだけテクニック磨いてもあれには敵わん(笑)。試合放棄。
全員:(笑)
ネモト:あと『淀川ハートブレーカーズ』の話もしたかったんだよね。
ジョー:あぁ。『淀川ハートブレーカーズ』っていう漫画の原作をやりましたね。元々『江戸川ハートブレーカーズ』っていう漫画が20代位の頃に凄い好きで、ひょんなことからその作者・須田信太郎氏と知り合いになったの。その頃、彼は次に描く漫画のテーマを探してるところがあって、「良かったら原作みたいの書いてくれない?」って軽い感じで言われて、こっちも「そんじゃ」と書いて送ったら割といい感じだった。そっからはじまった。
ネモト:あれは名作だよね。ああいう漫画って今までなかったじゃん。ロック漫画、バンドものはあったけど、DJを主人公にした青春漫画ってなかったもんね。
ジョー:もし出てくるとしても、凄くかっこいい仕事としてのDJやんね。
ネモト:あぁーそうだね。本当俺達の知っているDJがね。
ジョー:俺の、地を這うような目線からね。
全員:(笑)
ジョー:あれもまぁ自分のやってること全部そうだけど、とりあえずやってみる。それがある程度まとまったんで本になったっていう幸運なんですけど。
ネモト:あそこで流れる音楽もみんな良かったよね。
ジョー:あの漫画のストーリーは、音楽の歌詞の力にかなり頼ってるんですけど。
ネモト:歌詞の世界観と物語が繋がってるもんね。イルリメの『トリミング』が流れるシーンは名シーンだよね。ザ・ハイロウズの『千年メダル』のところもすごく好き。
ジョー:あれはヒロトさんにも読んでもらって、コメントももらったよ。
ネモト:もう2、3年前だっけ?出たのは。
ジョー:そうだね。だから結構自分の中では終わった感じがある。
ネモト:どんな場所でも青春の物語ってあって、でも普通だったら書こうともしないような話を形にしてる青春漫画とか小説とか、そういうのって凄いと思う。
ジョー:それの極北がいましろたかし先生なんでしょうね。見事に何も起きない。
ネモト:何も起きないけど、何かを残すものが名作だよね。
ジョー:そうやね。心に何かを残すものがね。