■2013.12.28 恵比寿LIQUIDROOM
OGRE YOU ASSHOLEワンマンライブ at LIQUIDROOM
REPORT[2014.02.05]
2013年、フェスやイベントなど多数出演、共演者も多岐にわたったOGRE YOU ASSHOLEが、暮れも押し迫った12月28日恵比寿リキッドルームにてワンマンライブを開催した。どんどん進化、深化を続けてきた2013年をふまえ、2014年以降の方向性を示し、さらに新しい領域へ踏み込むステージを展開するとのこと。チケットもソールドアウトし、ますます期待が高まる。

真っ赤な照明に、今回のライブのフライヤーなどで使用されたロゴが浮かび上がる。ほどなくメンバーが一人、また一人とステージに現れて、順番に演奏を始めていく。一曲目からこの日初披露の新曲だ。長めのイントロ、たんたんと反復するフレーズ、どぎつい原色の映像(この日のワンマンはVJが参加)。
『レール』はジョナサン・リッチマンの『Egyptian Reggae』をモチーフとした少しコミカルさを感じるバージョン。こちらは以前にも演奏されているようだ。
続いての『フラッグ』は今までのアレンジが三パターン入っている構成。初っ端から手加減なし、出し惜しみなしで、没入感に溺れそうだ。演奏の不穏さに加えて、ベーストラブルでいれかわりたちかわりスタッフがステージ上を行き来してるのも、どこか悪夢のような風景。
「(ツアーでも)なんでもないワンマンなのに来てくれてありがとう。」と出戸が言うが、なんでもないワンマンこそ、何が起こるかわからないので、ファンとしては楽しみなのだ。
当たり前のようにさらっと新曲が演奏された後は、久しぶりに演奏される『ネクタイ』。曲的に、現在のライブセットに組み込まれてもはまるだろうとは思ったが、その通り素晴らしかった。今のセットや音作りのため、前よりもずしりとした質感ではあるが、基本アレンジは変わってはいないようだ。こうしてセットリストに組み込まれてみると、以前とは逆にポップさが際立つ印象さえあるのが面白い。

久しぶりに演奏された曲でいえば、特筆すべきは『アドバンテージ』。これに関しては少し後述するが、今のライブの中ではもう二度と演奏されないのではないか、とすら思っていたので、とりわけ吃驚させられた。アレンジもテンポも変わらなかったはずだが、この中で演奏されても違和感は感じなかった。久しぶりにも関わらず、観客が沸いて、手をあげ飛び跳ねるのを観て、思わず胸が熱くなる。

今回、VJが参加していたのも、ライブの完成度を強く押し上げているように感じた。原色や、幾何学模様などが蠢くサイケデリックな映像が多めだったが、個人的に一番印象に残ったのは『夜の船』の映像だった。上下に液体のような泡のような映像が行き来して、それがちょうど薄い色のスポットライトの役割をしていた。ぐにゃりと歪んで溶けていくライト。照らされては消えていくメンバーたちの影。

終盤の『100年後』収録曲中心のセットではこの日の演奏のすべてが凝縮されていくような。本編最後はお馴染みとなった『ロープ(Long ver.)』だが、経過していく時間の長さがよくわからなくなり、意識が遠のいていくのと、覚醒感が同時にやってくる感覚を覚えた。

アンコールは『これから』。2014年のオウガの活動の飛躍を表しているようないないような、期待に膨らむような何だか不安になるような…。余韻を大きく残してライブは終了した。
演奏、楽曲のアレンジ、セットリスト…あまりにも満足度が高すぎて、終演後は良かったとか素晴らしかったという言葉がうまく出てこずに、ぼんやりとため息をついてしまった。

今回のライブ自体の素晴らしさも勿論だが、一番印象的だったのは、『アドバンテージ』を筆頭に、『homely』以前の曲がいつもより多く組み込まれていることだった。全くセットリストに入らないわけではなかったが、ほんの一部の曲がアレンジを変えて演奏されるに留まって、明らかに『homely』以前と以後ではライブのセットリストの組み方が変わっていった。

ライブ全体をひとつのものとして作り上げるために、選曲を絞っていて、確かにそれで新たなひとつの世界が出来上がっていったように感じていた。だが、今回のようなセットリストでも、新たに構築していった今のオウガの世界が全く壊れないのだな、と思ったのだ。

今の世界観が確固たるものになる、というか、強度やキャパシティがあがっていて、いつの時代のどんな曲をどんなアレンジでやっても、密度の濃いひとつの空間が築ける(ようになった)ということなのだろうか。
『homely』以降、バンドが自由になると同時に、がっちがちに世界観を固めてきている印象もなくはなかったのだが、この日のワンマンライブを観て、一気に壁が全部なくなったような感じがした。しかし、壁は受け手が勝手に作ったもので、壁なんか最初からなかったんだろう。固まっていたのはこちら側の先入観や思い込みだ。

期待していた以上、改めて、OGRE YOU ASSHOLEというバンドの凄さを実感させられた。正直、ある程度の期間聴き続け観続けているので、今更驚かされることなどそうそうないと思っていただけに、うれしい悲鳴だった。だが、おそらく彼らを次観たときには、また違う扉を開けている、そんな気もしている。
(文:タカクワユキコ/撮影:平林 岳志・円山 なみ)



SET LIST:
01. 見えないルール
02. レール (Egyptian ver.)
03. フラッグ (3パターン ver.)
04. 新曲 (タイトル未定)
05. ネクタイ
06. ふたつの段階
07. アドバンテージ
08. ヘッドライト
09. 黒い窓
10. 素敵な予感 (alternate ver.)
11. 夜の船
12. ロープ(Long ver.)

EN:
01. これから