■2013.09.22 新代田FEVER
tobaccojuice
REPORT[2013.10.20]
久しぶりに聴いたいつものSEに乗ってメンバーが現れ、会場から大きく温かな拍手と歓声が起こる。tobaccojuiceの活動休止から約2年、再始動となったSUMMER SONICでのライブを経てのワンマンライブ。脇山のカウントから『あそぼー』。“君のもとへ 君の心へ 今音楽を鳴らしにやって来たよ” 今日に相応しい歌での華々しいオープニング。「みんな声聞かせてよ!あそぼー!」フロアから飛ぶ声の大きさがこの日を待ちわびていたみんなの思いの大きさだ。ワクワクを増大させる軽快なリズムに乗って『ミラクル』。色とりどりにシャッフルされたハッピーな音に、誰もが体が覚えてるって言うようにそれぞれのリズムで踊っている。どっしりとしたドラムから『トライアングル』。血の通った音、祈りのような歌、そこから生み出される穏やかで温かくて優しい場所。“俺らのミュージック それはマジック”“今日のパーティーが終わるまで 魔法かけるよ 呼吸合わせて” tobaccojuiseだけが鳴らせる音楽がここにある。続く『幸せの海』では、ひとつひとつ確かめるような松本の歌とそれを支える岡田の深いベース音が心に響いてくる。
「ありがとう!ここでスペシャルゲストを紹介します!山口君!from FULL SWING!」ここからは盟友が鍵盤でサポートする。そしてこの日初めて松本が挨拶をする。「お待たせしました、tobaccojuiceです!みんなに音楽を届けるために戻ってきました。一緒に楽しみましょう!おどろーぜ、あそぼーぜ、楽しもうぜ!」合言葉のようなフレーズに大きな歓声。脇山のドラムに山口のオルガンがふわーっと重なった瞬間、鳥肌が立った。始まったのは『幻メルヘンシティー』。一瞬で魔法がかかったようだ。自由に軽やかに、ライブハウスが鮮やかに染まっていく。ライブではお馴染みだが実は音源になっていない『地獄音頭』。大久保のギターフレーズが不穏に響き、岡田のベースが心臓を抉る。純粋な凶暴さ。1曲ごとにこれだけ表情を変えられるのもtobaccojuiceの魅力だ。ダークな雰囲気を保ったまま『HEADLIGHT』へ。重厚なドラムに蠢くベース、吹きすさぶような音で繰り返されるギターのフレーズ、頭から呑込まれてしまいそうな恐ろしく美しい演奏。そして脇山の怒濤のドラムから山口の警告のようなオルガンの音と共に興奮は増し、音が摩擦するようにして頂点へ。ロックバンドとしてのtobaccojuiceを見せつける。一転し、シンプルにしっとりと聴かせたのは『なにもない』と、この日のライブの中でも印象的だった『意味のない朝食』。艶やかな歌、美しいギターの鳴り、体の芯を捉える緩やかなリズム、やわらかな鍵盤の音。どれもが深く染み込み、体が音を吸い込んだような感覚になる。2年という時の中で楽曲がより熟成された気がした。そして初期の名曲『オレンジ』。無垢で切なくてぎゅっと胸が痛くなる。松本の書く詞からは物語が立ち上がる。目を閉じると景色や色が浮かんで、それは私達が経験していなくてもどこかで知っているもので、『オレンジ』は誰の胸の中にもある懐かしい大切な風景なんじゃないかと思う。いつもより長めのブルージーなアウトロで締める。タイトル通りに澄んだ輝きを持った『ダイヤモンド』。今日もその輝きは力強く真っ直ぐに伝わってくる。この曲を聴くと心が洗われたような気持ちになる。空を駈けるような大久保のギターとメロディアスな岡田のベースが絡み合い、長く壮大なエンディング。「ありがとう!やっぱり4人で、そして山口君と、みんなで音出すの楽しいね。」
多分tobaccojuiceにとってもお客さんにとっても大切な曲『ガーベラ』。“死ぬまでに あと何回 ここまでやってこれるのかい”“またここへ もう一度戻って来れるように 闘うよ” 活動休止前最後の兵庫でのライブ、松本は強い眼差しでこの歌を歌った。それからの2年、4人にあったそれぞれの時間がどんなものだったかわからないけど、今日があの頃は良かったねなんて振り返るようライブではないってことは分かる。こうして再始動することも決して簡単なことではなかっただろう。でも、それぞれの闘いの日々の先に今日があって、またこの歌をこうして聴くことが出来て良かったと心から思う。

音楽と生命の歌『ドリームス』。煌めく音、揺るぎない歌、スカのリズムに合わせて踊る笑顔のお客さんたち。かつて彼らが取材で「この歌はドリームではなくてドリームスなんだ」と話していたことを思い出す。この楽曲はこうしてライブハウスでお客さんたちと共有してこそ、本当の意味を持つ。音が駆け巡り松本が畳み掛け、歓声が上がる。フロアの興奮が治まる間もなくあのギターフレーズが鳴って『サッチモの青い鳥』へ。脇山のドラムが冴える。休止中ソロシンガーのサポートやバンド活動を積極的にしてきた脇山のドラマーとしての成長はバンドにも大きな影響を与えているようだ。「みんな声聞かせてよ!イエーイ!」会場いっぱいのコール&レスポンス。“朝まで一緒にいようぜ おどろーぜ あそぼーぜ 楽しもうぜ” この零れ落ちるような多幸感。全身に音楽の幸福が満ちる。弾けるような『スモーキーラム』。“今日も世界のどこかで誰かが悲しい夜を過ごしてる だからそう いつまでも音楽は鳴り止まない 悲しい夜にはいつでもここへ来いよ” tobaccojuiceのライブはパーティーで、ただ見るだけじゃなくて一緒に楽しむ場所だ。鮮やかなこの場所はいつも自由。踊っても歌っても、もちろん何もしなくてもいい。でもこの場所にいると気持ちが緩んでいく。悲しさや怒りのような気持ちがほどけて、隣の人に優しく出来るような穏やかな気持ちになる。音楽にはそんな力もあるって教えてくれる。イントロに合わせて松本が歌詞にない言葉を歌いだす。“始まるぜ この瞬間から繋がっていく 一人一人の未来 繋がるぜ 選んでくのさ 君が選んでいけるのさ 今ここにあるのは君が選んだ未来 今夜は一緒だぜ もっと高いところへ行こうぜ リラックス!ダンス!エンジョイ!” 『パーティーブルース』。完璧な演奏、フロアから上がる手、みんなの笑顔。こうしてライブを見ている時間なんて、人生にしたらほんのひととき。だからこそ大切でかけがえのない時間で。この瞬間は終わってしまうけれど、今ここで聴いた歌は音は一人一人の身体に残されていく。tobaccojuiceの音楽と共に一緒に過ごしたこの時間は、目には見えないけれどきちんと残っていく。
アンコールはこの日唯一の新曲『サーリ』。ファンタジーとリアルの間を漂う世界観の歌詞、ブルースやカントリーの古き良き音楽を感じさせるシンプルで美しい楽曲、松本の力強い澄んだ歌声が響く、実にtobaccojuiceらしい曲だった。そして邪気みたいなものが一切ない削ぎ落とされた『ヘッドフォンゴースト』。いつもより優しい響きだ。鳴り止まない拍手にダブルアンコール。「今日は来てくれて本当にありがとう。最後の曲だぜ!どこまでも行けるさ!」体の力全部を振り絞るような5人の熱演に胸がグッと熱くなる。“わくわくする冒険の予感 奇跡を迎えに行こう” 今日から始まる新しい冒険はどんなものになるんだろう。「ありがとう!また遊ぼうぜ!」The Foundationsのゴキゲンなサウンドに乗って5人は並んで挨拶すると、会場は手拍子で彼らを見送った。2年の時を経て奏でられたtobaccojuiceの音楽は決して思い出としての音楽でなく、
2013年の今、現在の私達の心にもぴたりと合った。
それはこのバンドの存在と同じように、とても自然で、特異なことだと思う。
(文・小山裕美/撮影・Koei Yamada、サトウマリ)

OFFICAL HP
http://tobaccojuice.info/

tobaccojuice ツアー情報
・ninohira☆37
 2013/10/26(土)@札幌@COLONY
 tobaccojuice / アナログフィッシュ
・ninohira☆038
 2013/11/5(火)@京都磔磔
 tobaccojuice / ベベチオ
・ninohira☆039
 2013/11/22(金)@下北沢CLUB Que
 tobaccojuice / and more...

詳しくはこちら
にのひら



SET LIST:
01. あそぼー
02. ミラクル
03. トライアングル
04. 幸せの海
05. 幻メルヘンシティー
06. 地獄音頭
07. HEADLIGHT
08. なにもない
09. 意味のない朝食
10. オレンジ
11. ダイヤモンド
12. ガーベラ
13. ドリームス
14. サッチモの青い鳥
15. スモーキーラム
16. パーティーブルース

EN1:
17. サーリ(新曲)
18. ヘッドフォンゴースト
EN2:
19.どこまでもいけるさ