音速ライン『明日君がいなくなったら』インタビュー
INTERVIEW[2017.11.22]
ただもう、切なくて聴いてて泣きたくなるような曲っていうところに戻って来れた。
元々の俺等の得意なところをやっと書ける時期に来たのかな。

彼らの王道、疾走系・切ないナンバーが遂に戻って来た!
凄く向き合った6年半後、封印を解かれた音速ラインが放つのは"強い″4曲を収録したE.P.盤。
4曲について語る2人が本当に楽しそうで、来年2018年には結成15周年を迎えるバンドだけれど、このE.P.から「初めまして」もアリだなと本気で思った。
●『明日君がいなくなったら』リリースおめでとうございます。
メンバー:ありがとうございます。
●『鋼鉄の魔法使い』を作った時に、すぐ次を作りたいみたいなこと言ってましたが、構想はその時期から?
藤井:なんだろうね、自然ななりゆきだったかな。「作ろうぜ」って意気込む感じが無かったもん。
大久保:そうだね。シングルというか、リードになる曲、1曲作りたいんだよって話をしてたんですけど、だから今回e.p.っていう形で。
藤井:一番重要なのは、悲しい曲を書きたくなかった時期がやっと明けて。何かこう、悲しくて切なくてっていう世界観…元々の俺等の得意なところをやっと書ける時期に来たのかなって。自分なりに思った瞬間があって。今までセーブしてた物がバラバラって剥がれた瞬間があったんですよ。
大久保:時間の経過がデカいんじゃないかな。
藤井:その、ウチの兄貴にさ、「悲しい曲は聴きたくない。聴いたら泣いちゃうから」って言われてて。その中で生まれてた曲達にも物凄く意味があって良いんだけど、でも一番の得意分野を、ちょっと避けてた、封印してたのかな。
●それは無意識に?意識的に?
藤井:いや、無意識じゃないと思うんだけどね。そこがちゃんと向き合えたと言うか。だから『明日君がいなくなったら』はそういう曲なんですよ。3年ぐらい前だったら、まだ書いてないと言うか。うん、書いてもボツにしてたと思う。
大久保:もったいない!
藤井:ははは(笑)。やっと、そういう時期に来たんだと思うんだよね。上手く説明出来ないんだけど…福島の人に聞けば分かるかも。いろんな事と向き合えて、凄く向き合ってる6年半後、かな。ある日突然やってくるんだよ。ちゃんと向き合える日が。そこが、俺にとっては、今回のタイミングで。悲しい曲を聴きたくないっていうタームじゃなくなった。兄貴から言われた事も一旦乗り越えて、「音速っつったらココだろ!」って所に帰って来れた。ただもう、切なくて聴いてて泣きたくなるような曲っていうところに戻って来れたなって。意外と難しいんだよ。
●そうですね。藤井さんは福島在住ですし、切なさの棲み分けや意味付けの違いとか、折り合いが難しそうです。
藤井:うん。震災前は福島の原発とか状況とかが無いところで、切ない悲しい曲とか書いてたけど、そこがリンクし過ぎて、書けなくなっちゃった所があるんだよね。これ歌っちゃうとリンクしちゃうな、直結しちゃうなっていう所は書きたくないからさ。みんな直面したくなくても直面しちゃう日常があった所で。前向きな曲を書きたいって確か『風恋花凛』の時に言ってたと思うんだけど、そこのベクトルとも違うし。
大久保:全然違うね。
藤井:いろいろさ、経験してさ、思って、たどり着くわけでしょ?俺らもそこに行きたいなってだけの話で。だから、やっとこういう曲が書けるようになったっていうだけなんだよ。だって『明日君がいなくなったら』なんて普通書けないもん。震災後にこんな題名の曲書けないよね。
大久保:そうね。
藤井:そこで重い思いをさせてたら申し訳ないんだけど、何か、そこを言えるようになったのは自分的には成長したんじゃないかなって。強くならないといけないなって。違うな…強くじゃなくて、そこと対峙する覚悟が出来たっていうところ。やっと…7年くらいかかったけど。
●力が蓄えられたのかな?たぶん癒されたまでは行かないと思うので。
藤井:まあね、癒されたところまでは行ってないけど、言えるぐらいのパワーは蓄えられたのかなって思うね。うん。
●はい。去年クラウドファンディングという手段を使って、お客さんと今までになく密に、深く関わったと思うんですよ。イベントもツアーも多かったですし。その中でも変わっていったのかなと。
藤井:それはあるよね。そうとう助けられてるわけじゃん、俺らって。そこをどう解釈するかだよね。クラウドファンディングでやっぱりいろいろあってさ、心無い人からとかいろいろ言われたよ。けどさ、根底にあるのはさ、俺らも含めてここを守っていきたい…俺らが守っていきたい物を、一緒に守りたいって思ってくれる人があんだけたくさん居たっていう事実に突き動かされてるよな。
大久保:そうだね。本当にクラウドファンディングで助けられて出来た事は感謝でしかないんで。今はもう、これからもやっていくしかないし。
●「この先が見たいから」ですね。
大久保:そう、最近、ライブやっててもスゲー楽しいし。
藤井:確かにライブが楽しくてしょうがないな(笑)。
大久保:(笑)とにかく、何だろう…いつも言ってるかも知れないんですけど、「今」見てって。
藤井:今でしょ!
全員:(笑)。
藤井:いや、本当に!
大久保:その気持ちが凄い強いですね。今、ライブ見てもらえれば凄い共感と言うか…。
藤井:好きになってくれると思う。
大久保:うん、そう思うし、良い相乗効果を生んでいくのが、支援してくれた人達への恩返しなのかなって。
藤井:若い子にもライブ見てほしいっていうのはあるね。今まで応援してくれてた人も納得させられる自信があるもんね。何故なら、俺と大久保は楽しいから。
大久保:ははは(笑)。
●発信する側が楽しいのは基本ですね(笑)。

●そんな中で出来た作品ですが、めっちゃ良い盤になりましたね。
藤井:今回コンセプトがあって、俺は海外のバンドのマキシシングルを買いあさる男だったの。
大久保:買いあさる男(笑)。
藤井:だからアルバムに入らないんだけど、B面扱いで入ってる曲が1番良かったりするっていう、全曲良いマキシっていうヤツをやりたかった、今回のEP盤は。アルバム聴いたこと無いけど、このミニアルバムは凄い良いんだよねっていう作品になって欲しいと言うか。勿論アルバムも聴いて欲しいけどさ(笑)。
大久保:そういう風な意図としては、一番素直に僕らの音楽に入れるアイテムだと思います。
藤井:そのプレッシャーに勝つくらいのアルバムを作る自信はあるんだけど、俺的には本当に好きなマキシシングルがあるのね、ずーっと何年経っても色あせない、そういう4曲入りって超・ヘビーローテーションして欲しいし。そういう一枚になって欲しい。
●はい。本当に王道に戻ってきたなっていうのと、肩の力が抜けたかなって思いました。
大久保:あ、それは凄く感じました。今回作ってて(笑)。曲を詰める為の合宿に入った時に、福島でいつもやってるんですけど、何かこう「作んなきゃ」とか、「こねくり回して」とかじゃなく、もうキャッキャ言いながら作ったんで、今回。
藤井:あははは(笑)。
大久保:本当、バンド始めた頃の感じだったのかなって、終わってから思いましたね。
●もう高校生バンドみたいなノリで。
藤井:そういう事。中学生かな(笑)。