グッバイフジヤマ『チェリー』・『チェリッシュ!』インタビュー
INTERVIEW[2017.07.18]
●『チェリー』のアレンジですが、カントリーロック風味になってますが、いつ頃から考えていたんですか。
中山:前にワンマンツアーをやったときがあって、その時も『チェリー』のカバーをカントリーで演ったよね。それが始まりかな。で、竹内さんとスタジオに入って、
ルー:色々試しました。ロック、パンク、
中山:WEEZERみたいなパワーポップとか。あとはまんま演るとか。
ルー:本当に色々やったよね。迷走してた(笑)。
中山:途中迷走して、頭から最後までアカペラの合唱で行きます?とか(笑)。それはダメだって(笑)。じゃあ一番自分達っぽいアレンジでやってみようって。自分達過ぎるから避けてたんだけど、「これだな」ってなって(笑)。そっからは早かったです。凄いぶち壊すアレンジもあるじゃないですか?それはそれで面白いけど、僕らは元の『チェリー』が好きでやってるから、変え過ぎられないし、忠実にいこうって。
ルー:雰囲気って言うか、曲の持ってる物を壊したくないねって。
中山:で、どうせ僕が歌ったら、僕らの色が出るなと思って。でもリズムも実は結構違うし、近いようでね、細かく色々アレンジも違って。曲の途中にベースソロパートがあるんですけど、ギターも入れてみたり。スピッツの方はひと回しなんですけど。
ルー:そう、俺たちのチェリーでは2倍になってます。
中山:最初の入りも、僕が一番思ってることからにして。そこは竹内さんとも話しました。
●凄い良い出来ですよね。グッバイフジヤマらしい。この『チェリー』を作るにあたって、苦労したところと楽しんだところはどこですか?
中山:僕は、歌ですね。もう、訳わかんなくなっちゃいましたもん。カラオケでも歌うし弾き語りでも歌うし、あんなに歌ってたのに、分からなくなっちゃって。レコーディングの時その前1週間はずっと『チェリー』しか聴いてなくて。その、マサムネさんはここしゃくって歌ってるとか、1番と2番で違うとか、音を伸ばす・伸ばさないとか。もう自分の歌い方を見失っちゃいました。でも、竹内さんが自分らしく歌わせてくれたっていうか。チェリーの歌入れだけで丸一日使いました。普段は僕、一日で5曲くらい歌録りしたりするんですけど、
●おー凄いですね。ルーさんはどうでした?
ルー:僕は、ギターの音ですかね。何か、いつもグッバイでやってるような音ってあるんですけど、それで演ってるときに竹内さんが「アンプ変えよう」って。普段僕が全く使わないアンプを。
中山:何使ったんだっけ?
ルー:フェンダーの。で、それでちょっとトーン作ってみてって、やったときに、「あ、確かに!」って。こっちの音色の方が合うっていう発見がありました。さっき話したベースソロをギターで弾いたときも、あのフレーズって凄い完成されてるんですよ。だから弾いてても竹内さんが「違う!違う!」って。良いプレイができるまでやらせてもらいました。で、更にコーラス。コーラスがもう凄い難しくて。『チェリー』って、元々コーラスで上パートがいないんですよ。
中山:下ハモが2つある。
ルー:草野さんて声が高いから上ハモが居ないんです。で、グッバイは皆で歌おうってなってるんで、僕が上ハモなんですけど、めっちゃくちゃ難しくて。途中竹内さんに、「一回休んで」って言われて(笑)。凄い難しかったです。でも良い勉強になりましたね。
●皆が大好きな曲は、実は演ってみたら凄く難しかったと。
ルー:すっごい難しかった。
中山:あと、やっぱり、キーが高い!

●はい。で、その後に『チェリッシュ!』って聞いたときはめっちゃ笑いました。
中山:そうですよね(笑)。もう1曲は『チェリッシュ!』って決めてて。でも最初に出した『チェリッシュ!』がボツになって。明るすぎるって。
●あ、じゃあ現在の曲じゃない候補曲があったんですね。
中山:そうです。全く違って『ひばりくんの憂鬱』みたいな曲だった。それがボツになって、どうしようってなってるときに、僕と増沢さんと竹内さんで話して。1週間わたすから、それで出来なかったら、『チェリッシュ!』以外の曲でいこうって。候補の曲はいっぱいあったから。でも僕は絶対『チェリッシュ!』で行きたいって思ってて。ちょうどツアー中だったんですけど、北海道に行く前日に僕がパッと思いついて。最初に出した時めちゃめちゃ急いで作ったんで、歌詞が結構むちゃくちゃだったんですよ。2番は全ボツで、初めて歌詞をボツにされて、わけわかんねぇーどうしたらいいんじゃー!って。また話し合いをして。一番の歌詞のニュアンスのアドバイスを受けたり。2番は「中山君らしく気持ち悪くいこう」って言われて、俺そんなに気持ち悪いんかい!って(笑)。俺そんとき「チクショー」って思ったんですよ。でも過去の色んな歌詞を見てたら「キモイな」って思って(笑)。
ルー:ははは(笑)。
中山:もっと気持ち悪い事いってやる!って(笑)。
●あー際どいトコいってんなぁとは思いました(笑)。でも、好きな曲ですよ。
中山:俺も好きです!大好きです。
●今回、『チェリー』と5曲入りのDisc2でセットですけど、それは最初から決めてたんですか?
中山:僕が決めてました。特典みたいなので良いんじゃないですか?って。『チェリー』もそうだし、『チェリッシュ!』もちゃんと出したくて。2枚組だったらどっちもリードになるじゃないですか?結構『チェリー』と『チェリッシュ!』って繋がってるところあって、その、『チェリッシュ!』の2番の感じとかが『チェリー』の題材そのものに繋がってたり。コードも結構似せてて、キーも一緒なんんですよ。『チェリー』は自分の事ですけど、『チェリッシュ!』は大事にしたい大切な人っていうイメージなんです。で、メジャーの1stなんで、ビートルズのオマージュを付けようと思ってて、『アイワナホージョーハーン』って繋げてやろう!って思って。分かる人は分かると思いますよ。で、MVでリッケンバッカー持ってスーツで歌ってるんですよ。
●あー。何で皆スーツなんだろうって思ってた(笑)。
中山:330のカジノみたいなの使って、丸メガネで。
ルー:ジョンレノンを意識して。ビートルズ感(笑)。
中山:ビートルズオマージュなんですよ。ケンスケもベースを左利きに変えようかって言ってたんですけど、それはやり過ぎだろって(笑)。MVのストーリーも「ハードデイズナイト」みたいに女の子が追っかけられて、スタジオに来るっていう案で。
●やりたい放題ですね(笑)。
中山:そうです。やりたい放題、オマージュしまくり(笑)。しかも入れたい曲入れまくったんで。
●あ、選曲のポイントは何だったんですか?
中山:ああ、まず『いつも飛んでる♪』っていうのは、インディの1stの曲だったんで。アルバムにも入ってなかったし、星美がまだ叩いてなかったんで。叩かせてあげたいなって。『海辺のまちのカーニバル』も一番最初のデモに入ってて、ルーも弾いてないし、星美も叩いてないんで、これもこのタイミングで入れようって思って。この2曲を入れた事で、星美もルーもグッバイの曲全部演った事になります。レコーディングで。これでやっとスタートラインだなって思ってこの2曲は絶対入れたかった。『Hallelujah!』はレコーディングに向けて作ってた曲で。リアレンジはしましたけど、コンセプトとしては、どこかに行きたいダメな自分、みたいな。情けない自分を認めてくれっていう、承認欲求みたいなところがありますね。『チェリッシュ!』もそうだし。『ひみつのなつやすみ』は新曲だけど、元々あって。2年前くらいから?
ルー:うん。
●はい。全部カラーが違う印象があるし。勿体無い事するな~って(笑)。
中山:(笑)。良い曲書けるんで。これからも!
●でもこれ2枚組みなのって1年間限定なんですね。
中山:らしいです。やばいです。売れて欲しい。
●皆あるうちに買っておけよと。『チェリッシュ!』の事をもう少し聞きたいんですが、1日で出来た?
中山:貰った1週間かけて作ったんですよ。移動中とかも使って。普段は作曲は時間かかんないんですけど、『チェリッシュ!』は時間かかりましたね。どんな曲を作ったら良いか分かんなくて。その、『チェリー』のカップリングだから歌が強い曲にしたら良いのか、カントリーロックアレンジだから、その方面にした方が良いのか、全く分からなくて、初心に戻ろうっていう意味で、こういう曲を書いたんですよ。で、出てきたのがこれで『Love me Love me』って出て来て、これで行こう!って。
●はい。前に漫画に影響受けてとか、いくつか作曲方法を伺ったんですけど、これはどういった感じで?
中山:これは、漫画関係ないです。…全く関係ないけど、この時期、何か…初心に戻ろうと思って『さくらの唄』っていう漫画をずっと読んでました。何回も、上下巻。安達哲さんっていう方の昔の漫画です。結構ドロドロした漫画で。鬱屈した青春みたいな。
●何というか、中山さんのスタンダードなところですね。
中山:そうですね。そっから出てきたのかな。こういう感じは。もしかしたら。あと、この時期はGOING STEADYをめちゃめちゃ聴いてました(笑)。ゴイステ聴いて『さくらの唄』読んでって、初心に戻ろうと思って(笑)。
●自分をフラットに戻して、なおかつ色んな人からアドバイスを受けて、ひねり出した、というような。
中山:そうですね。これは捻り出しましたね!出た瞬間マジ俺喜びましたよ!これ絶対最高になる!って思って。で、スタジオに持ってったら、(チラリとルーを見る)
ルー:ははは(笑)、
中山:ケンスケは、いつも曲に対して何も言わないのに、「これめっちゃ良いよ!」って。えっ珍しいって思ってたら、星美とルーはいつも「めっちゃ良いじゃん」って言うのに「これ分からんわ」って言い出して。俺ちょっとキレましたもん。俺がこんなに捻り出して来たのにお前らは!怒りながら凹むっていう。でも、増沢さんと竹内さんがOK出してくれたんでコレで行こう!って。
ルー:何か、想像がつかなくて。イメージが…どういう感じなんだろう?って思っちゃって。でもいざ皆でスタジオでやったら、この今の形になったんで。「ああ、良いな」って。そこで思いましたね。
中山:あと、ギター超良い!ギターソロ一発だったよね。一発って言うか合わせた時に「ここギターソロ。適当に弾いて」って言ったらスグ出て。もうソコ!それ使う!って。後半のギターの所が一発でビビビッて来て。すぐ止めて録ったもんね。もう一回弾いて!って。あのギター最高だよね。
ルー:…ん。良いと思う。
中山:おい、思い入れないのかよ!(笑)。俺あそこ超好きだよ!『チェリッシュ!』のこの盤のギターソロでは圧倒的に好き!
ルー:最初は逆にダメかなって思いながら。リハしてる時に録音もするんですけど、記録的に。適当に弾いてって言われた時に、テッテッテレレ・レーってこれダメかなぁって思ったらOK出て。俺もビックリして。
中山:最高だよ。最高のソロが来た!これで!って。
●じゃあ固める作業はすんなり進んで。
ルー:そうですね。
中山:アーイワーナホージョー~の所は最後に入れました。これ入れたらダサいかな?大丈夫かなって言いながら。なんか恥ずかしいから、増沢さんと竹内さんにも言ってなくて、この前後に何か入る予定でいるんですよって(笑)。
ルー:あはは(笑)。
中山:で、スタジオで作りこんでる時に、最後に「アイワナ~」って入れるんだけど、「ん?」って(笑)。探り探り。で、入れて録ったのを送って、しれっと通しましたね(笑)。そこは。
●最高ですよ。しかもココがカタカナなのがまた良いです。あと、最後に何かに続きそうな感じで終わりますけども。
ルー:おー。
中山:良くぞ聞いてくれました!『チェリッシュ!』って『チェリー』の対になる曲じゃないですか?ここにもスピッツのオマージュを入れてやるって思って。『運命の人』のオマージュ入れました。最後にドラムの違うパターンが入るんですよ。『チェリッシュ!』にもドラム入れよう!って。

●では『いつも飛んでる♪』を。元々は古い曲なんですか?
ルー:そうですね。僕が入ったときにレコーディングしたんですよ。
中山:一番最初のレコーディングの時だね。まだ自主でね。
ルー:かなり思い入れがありますね。それまでそういう曲無かったのに、ファンキーな曲で。今のタイミングで出せるのはめちゃめちゃ良いねって。凄い音も良いし。これを演るってなった時に、昔録った音源とかも聴くじゃないですか?俺めちゃくちゃ自分上手いなって思ってたんですけど、聴き直したらめちゃくちゃ下手で。
中山:あれヤバイよね(笑)。
ルー:超下手で!何か、音もロックロックし過ぎてて。今録れて良かったなって。凄い、昔よりもこの曲を分かって弾けてる。
中山:…僕、グルーヴみたいな曲もカントリーもロックもやるし、パンクもやるし。ジャンルとか全く気にしてなくて。バンドで同じような事やるのがどうしても耐えられなくて、全然違う曲ばっかやっちゃうんですよ。だから俺以外はこの3人じゃないと出来ないんです。
ルー:ありがとうございます。サンキューボーカル!
●褒めあい(笑)。でも本当にウキウキしてる曲ですよね。これも「テイクミーハイヤー」が英語じゃなくてカタカナで。
中山:ああ、あんまカッコつけらんないなと思って(笑)。僕の歌ってるフレーズなんで、カタカナのテイクミーハイヤーなんですよ。これは好きなミュージシャンがブッ飛んじゃったのをテーマにしてて。いつも飛んでる君が好きさって意味です。…曲とか、今の消費されてる感じが凄く嫌で、本当はもっともっと丁寧に出したいんですよ、色んな物を。全部MV作りたいし。今の時代って…曲をぽんって出したら、半年くらいでそのアルバムは消費されたものになっちゃうじゃないですか?そういうモンなのかな?って。作り手は皆あると思うんですけど、1曲1曲こんなに思い入れがあるのに、って。もうちょっと大切にしたいですよね。