グッバイフジヤマ『この胸いっぱいの愛を』インタビュー
INTERVIEW[2016.11.02]
●今回のファーストフルアルバム、どんな物を作ろうと考えてましたか?
中山:僕は、もう、タイトルどおりですね。『この胸いっぱいの愛を』。この5年間で出会った人とか別れた人、に対してまた聴いて貰えたら「良いな」って思ってもらえるアルバムを作りたいと思って。2016年の自分達が、もう一度今まで出会った人達に歌えるならこの歌を歌うっていう、絶対グッと来るはず、っていう曲達を入れたつもりです。
●はい。ルーさんはどうですか?
ルー:僕は単純に、今の自分達のフルアルバムっていう感じです。昔の色々あって来た自分達じゃなくて、今の自分達を見て欲しいですね。凄い好きな曲があるんですけど、5番目の『陽だまりのセレナーデ』、これは本当に今の4人だからこそ出来るんじゃないかなって自分の中では思ってて。今の4人で作るセレナーデを。セレナーデの意味あんま分かってないけど。
中山:(笑)好きな人に対する歌だけどね。
ルー:ああ、じゃあ大体合ってる。
●うはは(笑)。
中山:分かりましたよね?ルーはこんな感じです(笑)。
●(笑)曲的にはいつぐらいからあるものなんですか?
中山:一番古いのは『星めぐりのこどもたち』っていう曲で、バンドを始めた時に最初に作った曲です。色んな物のきっかけになった曲なんで、いつリリースするかいろいろ考えてたんですけど…「今歌わなかったら、もう胸を打つような唄は歌えないかも」って。
●ああ今の4人での曲達だけど、バンドの歴史がある曲も入ってるって事ですね。
中山:そうです。それこそ『ひばりくん』とか『星めぐり』は前から演ってる2曲。後はもう今年に入ってからの曲ですね。

●では曲紹介をお願いします。『BOYS IN THE BAND』から。
中山:これはもう本当に、フルアルバムの1曲目にしたいと思ってて。もう、僕等!みたいな。4人でやっていく決意の曲。歌詞見ると結構ヘイトな感じを歌ってるので、聴き取れない感じにしないとお客さんに嫌われると思って(笑)。詰め込むだけ詰め込んだんですよ(笑)。
●小心者?(笑)。賑やかなのに結構辛辣な事言ってんなと思って(笑)。
中山:そうなんですよ(笑)。嫌われたくないけど、言いたい事は言いたくて。これを1曲目にした理由は、今まで、バンドの形が変わったりすると、お客さんとか離れたりとかいろいろあるじゃないですか。僕としてはお客さんを凄い信頼してるから、居なくなられると凄く落ち込むんですよ、いちいち。でも、続けてるとまた戻ってくる人も沢山居るんですよ。それに気付いて。だから、歌い続けていれば何かが変わるかも知れないって、期待してるんですよね(笑)。そんな感じの曲です。
ルー:これ、ライブとかでも自分達も力が入る曲と言うか。結構バンドでも自分達のスイッチになる曲です。

●『Summer of Lovers』
ルー:これは、会場限定シングルを出す時に別の曲がシングルになる予定だったんですけど、その曲をレコーディングする直前に出来た。
中山:シングル候補の曲をスタッフに聴かせたら、「これじゃないのをもう1曲書いて」って言われて(笑)。レコーディングの4日前?一週間切ってる時に。ええぇ~って切羽詰りながらも、その時ラップにハマッてたんで、出来たのがこの曲。そしたら思ったより良い曲が出来て。僕アルバムでこれが一番好きかも知れない。『Summer of Lovers』って一夏の恋みたいな感じあるんですけど、実はヒッピーのシュプレヒコールみたいな、そういう事件があったんです。第一次・第二次『Summer of Lovers』みたいな。
●フラワームーブメントみたいな?
中山:そうそう。で、それを歌おうと思ったんですよ。歌詞にもそれは出てるんですけど。そんなの時代遅れですよって。後半に比喩みたいなのも入れて。よくないこれってココまでの軽さで言っちゃうダメさが今っぽいみたいな。そのダサさが良いなって。
●(笑)ブギーバック?
中山:はい(笑)引用してます。ぜったこれ使おう!って。10代の人は分からない人が多いみたいですけど、たまに「オザケン好きなんですね」って(笑)。

●『ひばりくんの憂鬱』
中山:「ひばりくん」って性同一障害と言うか、『ストップひばりくん』の歌で、それを自分なりに消化してみたっていう。あと、今回女の子のコーラスを入れたんですよ。友達のバンドで『さよなら、また今度ね』の佐伯香織に「心と体がバラバラで」の所でコーラス入れてもらって。男と女の声が入って面白く出来たなって。これ、シングルで出した時に、漫画家の江口さんに渡しに行って、そうしたらコメント書いてくれて。だから本人公認です!
●おー。でも『ストップひばりくん』とか、結構年代的に違いますよね。
ルー:多分、僕らは見てない。(※漫画が原作でアニメ化もされてる)
中山:僕、漫画凄い好きなんですよ。めっちゃ読むんです。昔の漫画も。今のJUMPも大好きだし、ほとんど漫画から出来てます。『ですとらくしょん!』と『星めぐり』も漫画からです。
●歌詞に対して、漫画からのインスピレーションって事ですか?
中山:…何でしょうね、漫画読むじゃないですか?自分の中でこれは名作だって思う漫画に出会うと読み終わる頃には1曲出来てるんですよ。考えないで一曲出来てます。でも、読んでても面白いけど一生、何回も読むヤツじゃないなっていうのは曲になりません。
●中山さんの中でどんな漫画が曲になりやすいんですか?
中山:卑屈なのが多いです(笑)。
ルー:(笑)。
中山:とりあえず、良い結末じゃない後ろ向きな感じの。ハッピーエンドではないですし、自分と向き合って自分はダメだ、みたいなのが多いっす。中2病っすね(笑)。

●では『恋のダンスビート』
中山:これは、ライジングサンの帰り道にサビが出来て。パーティーっぽいなって思って、絶対「恋」って付けようと、何故か(笑)。そして絶対ルーに歌わせようと思ったんですよ、何故か(笑)。
ルー:既に決められたんですよ。
中山:普段歌ってないから歌わせよう、しかもダサく行こうって(笑)。ただ、その代わり、演奏めっちゃかっこよく行こうって。曲・歌・歌詞とかダサいけど、演奏マジでかっこよくしようと思ってギターのイントロとかめちゃめちゃ厳しく作りました。
ルー:かなり、難易度の高い。超むずいギターフレーズ。
中山:最初の半年くらい、全然ライブで弾けないんすよ(笑)。メンバーからの駄目出しも凄くて。
ルー:じゃあお前演ってみろ!って思いましたけどね(笑)。このフレーズ作ってんの俺なんだよ!って(笑)。
中山:誰も弾けないよね(笑)これはギターのフレーズが全てです!(笑)。この曲はもう、歌詞はどうでもいいっす。これはもう楽しもうぜって。楽しみ方は君次第っていう。心を開いてくれたら俺達がいくらでも楽しませてあげるよって曲です。

●『陽だまりのセレナーデ』
ルー:僕の推し曲ですね。ギター的な話で言うと、かなり自分の中で挑戦だったなって。バラードなんですけど、普通のバラードにしたくなかったんですよ、淡々とした物にはしたくなくて。だから結構、ギター自体が凄く動いてるんです。イメージ的にソウルっぽいニュアンスをこの曲では出したかったんです。
中山:最初のテーマもそうだったもんね。僕が持ってきたリズムのパターンがソウルっぽい感じだったんです。ちょっとハネ気味のね。地味に面倒くさい事やってるんです(笑)。
ルー:凄い、一音一音に魂を込めて弾いたっていう感じです。凄い難しいんですよ、間とかが。
中山:そうね、裏で入ってくる所とかね。ソロが良いね。オッサンだよね。
ルー:おっさんが降りてきた。僕がソロ取った瞬間皆笑ってましたからね。
中山:(笑)。アコギも先輩から高い良いアコギ借りて。めっちゃ良い音で。曲自体はまあ…僕、バンド始めてからずっと彼女が居ないんですよ。で、歌う事は昔の彼女のことばっかり。その時のことを歌ってますね。…3年くらい付き合ってた彼女が居たんですよ。大学からずっと付き合ってて同棲もしてて、結婚もする予定で。でもバンド始める時に、全部捨てなきゃって思って別れたんですよ。
●え?バンドの為に?
中山:そうです。会社も辞めたし。
●好きだったのに?
中山:そうす。人生で唯一多分、本当に好きだった人で。その時の彼女への申し訳なさと、その時の自分への申し訳なさ、懺悔じゃないですかね。しがみついて、とか言ってるけど、ちゃんと前を向かなきゃなぁって。そんな感じのバラードです。凄い思い入れがあります。

●はい、次はガラッと変わって『ですとらくしょん!』
中山:これ何か、家で寝てて、パッと起きたらサビが出来てて、ヤベえ!これ盛り上がるぞ!って。この時期、病んでたわけじゃないんですけど、色々面倒くさいなと思ってて。歌詞が思いっきしそのまんまですね。無力無気力って。
ルー:文字で見るとヤバイなこれ。ででででででで…。
中山:デストロイ!サビはもう勝手に出たんですよ、寝起きで急に。歌詞と。
●この歌詞だけ見るとアナーキストなのかなとか。
中山:アナーキストかもしんないです、ちょっとだけ。『戦争しましょう』って曲もあるんで、あれは戦争をしたいわけじゃなくて、元々、僕凄い「大きい力」が凄く嫌いで。政府とか、音楽で言ったら事務所の力で売れるとか。今はそういう力を味方につけるのも才能だと思ってますし認めてますけど、当時はそれに対して否定的だったんですよ。自分じゃどうにも出来ない生まれとか育ちとかで勝てない物があるのが凄い悔しくて、そういう物と戦争しましょうっていう気持ち、奪われたものを取り返しに行きましょうっていう曲だったんですけど。そういう思想はやっぱりどっかあります。この曲にもちょっと出てるかな。でもアナーキストとは言い切れないんですよね、「どうでも良いや」って思う現代人っぽい所もあるので。テレビの中の出来事です、とか。
ルー:あー。
中山:つまり、もう、駄目なヤツなんですね(笑)。よく居る駄目なヤツ。家から出ないで何もしない駄目なヤツ(笑)。
●これは寝起きでとか、漫画とは違うパターンの時は曲はどうやって作ってるんですか?
中山:曲作ろうと思って作ったのはあんまり無いですね。数日ギターも触らないで普通に過ごしてると、何か、塊みたいなのが出来るんですよ、自分の心か頭の中に。曲の塊みたいなのが出来てて。こういう音楽が勝手に育ってる。それを時間があるときに吐き出して書いておく。だからあんまり楽器使って曲作らないです。コードを照らし合わせるくらいで。
●コ-ドから作る人も居るけど、中山さんはメロディからなんですね。
中山:逆にコードから曲作れないです。
●メロが出てきたときは歌詞は?
中山:一部は一緒に出てきますね。細かい2番とかは無くても丸々一節は出来てます。そういう塊みたいなものがいっぱい頭の中に今もあって、一番だけ出来てる物とかいっぱいあります。

『夜明けのシュプレヒコール』
ルー:曲自体結構短いんですけど、でも、スタジオで結構悩んだ曲だったかも。展開とか何回も変わって。キーも変わったよね。
中山:そう、音階も終わり方も何回も変わって。終わり方は寸前まで悩んだよね。一番アレンジに悩んだかも。結局サラッと始まってサラッと終わる曲になったけど。その潔さが凄い良いなってアルバムに入ることになって、何故かシングルには入らなかった。意味はちゃんとあって、『Summer』、『ですとら』、『夜明け』、この3曲は結構近い所があって。いつか、今自分が歌ってる事が、鳴り止まなくて何かを変える事になるかも知れないっていう期待の現われ。だから全部似てますよね。曲の、言ってる事が皆同じかも知れない。いつか変わったら良いなって、願望が多いです。
●私この曲好きです。
中山:僕も好きっす。
ルー:僕も、好きです。
全員:(笑)。