nicoten 『nicoten』インタビュー
INTERVIEW[2016.09.28]
『サイダーの泡』
廣瀬:これは2013年くらいにはもうあったんじゃないかな。アルバムの方向性だったり、宮田君の歌詞の方向性が決まった時に、一番乗せやすいのがこの曲だって話になり、ちゃんと作りこんで宮田君が歌詞書いたって感じです。
宮田:歌詞はレコーディングの前々日くらいに。夏ぐらいに出るって言うのと、仕事してる人に向けた曲にしたいっていう思いがあったんで、そこに寄せていきました。
●皆が思うところを。でも会社員とかなった事が無いと思うんだけど、やっぱり想像で書いてるの?
宮田:想像ですね。僕は結構、大学時代とか高校の時の友達とご飯行く機会が多いんですけど、その時に聞いた話が元になってたりとか。何故接待が起きるのかとか、そういうの聞いたりするのが結構面白くて。あと姉が2人とも仕事をしているので、それを見ていて自分がもし仕事に就いてたらこう言って欲しいみたいな・・こう言われたら頑張れると思うことを書きました。

『Summertime』
岡田:これはこの10曲の中では一番古くからあったんじゃないかな。デビュー前くらいにはこのデモあった気がする。今回の制作で2人が引っ張り出してきてくれて。単調な感じの曲だったんで、ラテン風なテイストを取り入れて、スティールパンも入れて、アルバム用にアレンジし直してこういうサウンドになりました。この際せっかく夏に出すんだからゴリゴリに夏っぽくしちゃえってやったし、歌詞も読み返すと恥ずかしくなるくらい、暑さだけゴリ押し(笑)。夏ワードひたすら盛り込んだ。
廣瀬:夏あるあるみたいな。
岡田:そうそう。
宮田:良いよ。これ、俺好き。

『半径6センチメートルの世界』
宮田:この曲は自分の高校時代の気持ちを今振り返っている曲なんです。音楽が好きで、あの時は何も考えずに色々聴いたりしてたけど、今自分が音楽の仕事をするようになって、聴くとまた耳が全然違って、好きだった曲の何が好きだったか分かんなくなる時もあったりして。原点に戻るじゃないですけど・・そんな気持ちも含めて、あの高校時代に純粋に音楽が好きだった気持ちを忘れちゃいけないねって。
●はい。ちなみに12cmの先って?
宮田:これは、CDの大きさが11.6cmとか。
●あー!
宮田:円って事を言いたくて「半径6センチ」ってしてる。
●なるほど、確かに紙ジャケ作る時12センチで切る。
廣瀬:あはは(笑)。
宮田:CDで伝わる物よりも越えて、伝われば良いなって。

『にびいろジーン』
廣瀬:このアルバム用に書いた曲ですね。自分の中で、歩いてて気持ち良いテンポを探してる時期があって、それの気持ちいいテンポに乗せて曲を書きたいなと思って大枠を作り、「もうエエわ!」ってなるような連呼する曲を作りたかったんですよね。で、「あなた」って繰返すワードがあって、仮タイトルは「あなた」だった。
岡田:歌詞は廣瀬からオーダーを受けて俺が書きました。ちょうど曲をレコーディングするのが1月とかだったんですけど、時期的に恋愛沙汰のニュースのブームだった事もあって。
●ああ、そうですね。表立てない恋愛の。
岡田:そう(笑)それで廣瀬から一番利益を被ってない側の視点で書いて欲しいってオーダーされて。
廣瀬:そうそう。これは絶対、例えば当事者がアーティストだったら体験談として作品に出来たりするじゃないですか?で、相手側も自伝とかに書けたりする、でも、表現者じゃない人は何も出来ないと思って。そういう目線とか面白いんじゃない?って。
岡田:そのオーダーの元、書いた歌詞です。当時のタイミングで出すとあれだけど、半年以上経ってるから。
●はい。音も面白いですね。デジっぽかったり、生っぽかったり。
岡田:あ、これドラム叩いてないんですよ。自分が打ち込んで作りました。

『私が今日泣いたことは、桜のせいにして』
宮田:「最高の離婚」っていう大好きなドラマがあるんです。瑛太さんや真木よう子さん、綾野剛さん、尾野真千子さんとかが出てるドラマで。というかこのドラマの脚本家が凄く好きなんですよ。「東京ラブストーリー」とかもやってる坂元裕二さんって人なんですけど。ドラマの中で良いなって思うセリフがいっぱい出てくるんですよね。ドラマの中で瑛太さんが「桜が嫌い」って言うんですけど、そこから何となく世間一般の意見と逆を言う事って「え?何で?」ってその一言に興味が沸くなと思って。例えば「ずっと側に居る」よりも「ずっと側には居られない」って言うほうが「何で?」って思うとか。そういう歌詞を書けたらなって。あと、そのドラマが目黒川沿いを舞台にしてたので、そのイメージで。
●ああ、なるほど。リア充っぽいと思った(笑)。あと、ハイトーンの声が凄く良いです。
宮田:あ、サビが。ありがとうございます。何となく、タイトルも小説のワンフレーズみたいにしたくて、つけました。

『歩幅』
廣瀬:これは、元々1曲目にしたかった曲なんです。バンドの皆で足並みを揃えて歩こうぜって思いながら書いた記憶があって。この曲って今入れなくても良いって最初思ってたんですよ。いつか入れたいけど今じゃないかも知れないって。でもこのアルバムの方向性が決まった時に、この曲は入れなくちゃいけないなと思って。バンドにとって、自分にはとっても大切な曲だと思っているからセルフタイトルのアルバムに入れたかった。
●歌詞はOKDだけど、曲のイメージとかは話したり?
岡田:ニュアンス程度は。僕の持論なんですけど、人を応援する曲を作る時って2タイプに分かれると思ってて、一つは背中を押すタイプ、もう一つは付いて来いよっていうタイプ。でもnicotenにはどっちも似合わないなと思って、いろいろ考えた末に横並びで一緒に歩くのがnicotenなりの応援なのかなと思ったんですよね。
●いい歌詞ですね。最後の一行も効いてて。
岡田:そう、1曲目にしようと思ってたから、スタートとか感じさせたいなって。
宮田:まさか8曲目に。
岡田:あはは(笑)。この曲と次の『杏仁豆腐の逆襲』はちょうど自分達で動き始めてバンド感がよく出てると思いますね。

『杏仁豆腐の逆襲』
廣瀬:僕、基本的にピアノで曲を書くんですけど、これはギターで作った曲です。多分今回収録される曲の中では初と言うか。ギターでしか出てこないメロとかがあって。皆で作業してる時にあんまりしっくり来てなくて、テンポ感が速い曲ってnicotenに似合わないのかなって思った時期もありつつ。途中の「杏仁豆腐食べたい関係ないけど」ってフレーズだけ、宮田君が考えてくれました。元々違うサビがあって、イントロとかも全然違ったんですよ。宮田君が理由はよくわからないんですけど「杏仁豆腐」っていうワードが入った曲をやりたいってずっと言ってて。じゃあもっとキャッチーにしようかなって作りこんでいったのがこれ。バンドで皆でアレンジした時も楽しかったから、これは良いぞ!って、そこから一気に完成までもっていったね。
宮田:「杏仁豆腐」のワードは、違和感が大事だなと思ってる時期があって、このフレーズだけがライブとかで絶対残るなって核心があったので。何か、もう一回自分達でやるんだったら、もう一回nicotenっていうバンドを知らしめなきゃいけないってなった時に、「杏仁豆腐」とnicotenっていうのを結びつけて覚えてもらえたら、忘れられないかなって思って。なのでギャップが凄いというか、結構真面目に話してるのにそこだけイキナリ関係ない話するっていう。後は「頑張れ」って言われるのは僕は好きじゃないので。

『休日戦線異状なし』
廣瀬:これは、俺が二日酔いで家に帰ってきて、本当に酒飲むのは一生止めようって思いながら書いた曲です(笑)。このままじゃいけないんだけど、とか、仮歌では「朝起きたら地獄で」みたいなワードも入ってました。でも改めて聴いてみたら「うーわ!酷え!」って思って(笑)。「今日嫌だけど、シャキっとしなくちゃな」みたいなのを大枠で作って、そこから宮田君が歌詞を書いて。これはいつ頃出来たのかな。杏仁と同じ時期かな。これもライブでやってて。
宮田:廣瀬の仮歌は本当に二日酔いの歌詞だったんですよ。「タクシー飛び乗って自宅へ」とか。二日酔いから連想して、ダメダメな女性の姿を書こうと思ったんです。歌詞の中に出てくる女の人、足で冷蔵庫閉めたりしてちょっとガサツな感じで女っ気がないじゃないですか(笑)。
●(笑)この曲を最後にしたのは?
岡田:ガッツリ、ストーリーとして、作品として完結させる感じよりは、ちょっと気が抜けた終わり方の方が、良いんじゃないってなって、これが最後になった気がする。

●ではお一人ずつこのアルバムを作り上げた気持ちを。
廣瀬:セルフタイトルの作品を作るって、それなりの覚悟があると僕は思ってるのでそういう思いで作った作品です。まだnicotenという存在を知らない人、nicotenをちょっとしか知らない人にも届いて欲しい。聴いて貰わないと意味が無いから、まずは一回アルバムを聴いていただいて、ライブに会いに来て欲しいなと思います。
岡田:自分達で一からアルバムを作ったやるのは今回が初めてなので、知らない部分もあったし、すごく勉強になったなって(笑)。今後僕らがずっとこのまま独立したスタイルで作品を出し続けるのか、誰かのお世話になるのか分からないですけど、ただこうやって自分達で一個作品を作れたっていうのは大きな経験だったなって。そういう意味でも本当に大事な作品だと思ってます。
宮田:とにかくまずは聴いて欲しい。単純に自分達がやりたい事を一個のアルバムにしたんで、nicotenとは何ぞやみたいなのを分かってもらえる一枚になったと思います。是非是非手にとってみてください。
●今後の予定を。
廣瀬:この一年で自分達で色々回ったのは東京出身のバンドはまず東京を固めないとなっていうのは感じたので。ツアーの後、10月2日に新宿MARZでちょっと大人数の編成でやります。ツアー後はアコースティックでこのアルバムを表現するツアーもやりたいなと思ってます。それは11月くらいに。俺達アルバムをもっと伝えるって事を今までちゃんと出来てなくて。レコ発とかもちゃんと出来てなかったなって思ってて、そのアルバムに失礼だなというのもあり、全曲可愛がってあげて、思い出してあげてっていう一年になると思います。
●じゃあ年内色々ありますね。楽しみです。これから先の野望みたいな物があれば教えて下さい。
宮田:このアルバムを機に方向性としてはちょっと変わってみようかなと、メンバーの中のクリエイティブな部分とか、一個の音楽に対しての部分が変わってくるのかなって話をしてて。
廣瀬:もっと皆“ミュージシャンズミュージシャン”にならなきゃいけないと思ってるんですよ。歌を歌う事、演奏する事、曲を書く事、詞を書くこと、それぞれのスキルをもっと磨いていかなくちゃいけない。俺たちは良い意味でも悪い意味でも何でも出来てしまうタイプだと思ってて。でもそれだと深みが無いと思うんです。「間とか空白とかを楽しむのも技だし味になるよ」って前作のプロデューサーに言われて、俺はまだそれがどういう意味かよく分からないんですけど、いつかはそれをわかるようになりたいし。もっともっと良い曲書きたいなってバンドの総意で思ってるし。そうなるためには、バンド続けるためには、良いライブをして良い曲書くってい当たり前の事をするためにはもっといろいろやんなきゃいけないなって。
●それぞれの得意分野を伸ばす?
廣瀬:うーん、それもありますね。あとは自分達の見せを考えなくちゃいけなくて。ライブもポップミュージックを、歌を伝える為に必要なものを揃えなきゃいけない。O-WESTのライブはそれがうまく表現できた内容だっだと思うんですよ。でもO-WESTは想像よりもお客さんが入らなかったんですよね。だからもっとnicotenの存在を知ってもらって、多くの人にあのライブを観せたい。ああいうライブを成功させられたらもっとやりたい事が見えてくるんじゃないかって思っています。だからまずはそこからですね。
●はい。ありがとうございました。(写真・文:朝倉文江)


『nicoten』
01. 1.2.3
02. テレパシー
03. サイダーの泡
04. Summertime
05. 半径6センチメートルの世界
06. にびいろジーン
07. 私が今日泣いたことは、桜のせいにして
08. 歩幅
09. 杏仁豆腐の逆襲
10. 休日戦線異状なし

nctn-0001
2,300円(税込)
BITANSAN.INC.
2016.08.03発売

LIVE SCHEDULE
「2ndフルアルバム『nicoten』リリースツアー「ワンツースリーでツアーファイナル!」
2016.10.2(日) 新宿MARZ(ワンマンライブ)


■公式HP http://www.nicoten.jp/