nicoten 『nicoten』インタビュー
INTERVIEW[2016.09.28]
自分達が自分達らしくあるために、自らで歩き出したnicoten(ニコテン)。バンドの成り立ちから今夏リリースされたセルフタイトルのアルバムまで、徹底インタビュー。新譜の全曲解説つき!

●初登場ですね。まずはバンドの成り立ちを教えてください。バンド名の由来から。
廣瀬成仁:点がふたつ(・・)で「ニコテン」って読ませてたんですよ。その表記の頃にもQuipさんにお世話になってて。
●懐かしいですね(笑)。
廣瀬:その後に「・・」だと読みにくいからローマ字の「nicoten」に変更して。
岡田一成:うん。そもそも名前にこだわりがあったわけじゃなくて、バンド名をつけなきゃいけない、それなら面白いものがいいなって最初につけたしね。
廣瀬:ライブハウスでライブをする時に提出しなきゃいけない書類があるんですけど、それに必要だったからつけたっていうね。考え始めると止まんないから、思いつきで決めました。
岡田:自分で考えると相当大変だよ。考え出すとキリがないもんね。あと付けの理由なんですけど、元は点が2つで「ニコテン」だったので、一つ目の点が僕ら、もう一つの点が聴いてくださってる方達で、音楽っていう見えない線で繋いでいるっていう。
廣瀬:何回聞いてもダセエな(笑)。
●(笑)で、今はローマ字表記でと。元々はどうやって始まったんですか?
廣瀬:結成は2010年。
岡田:2010年の5月なので今7年目ですね。
廣瀬:最初は、皆他のバンドをやっていて、一緒にイベントを企画したりとかしたんです。その代表者会議みたいなので集まったりしてて。
宮田航輔:ごはんもよく食べに行ったよね。
廣瀬:あと映画を見に行ったりとか。
●ああ、バンド同士が仲良かったんだ。
宮田:そうです。
廣瀬:それで、2009年の終わり位に宮田君のバンドのベースの奴が弾けなくなった時に遊びで一緒にスタジオに入ってみて意気投合したんです。「女性アーティストの歌をカバーする」っていうコンセプトでまずはコピーバンドを始めました。しばらくしてオリジナル曲を作るためのセッションをするようになって、宮田君が歌詞を乗せてメロディを付けて完成したのが『トビウオ』。それがnicotenで最初に出来た曲ですね。
●面白いですね。その、最初に女性Vo路線を選んだのは何故?
廣瀬:宮田君はもともと世界観のあるバンドをやってたんですけど、仲良くなっていくうちに、実はパーティー野郎だってことに気付いて(笑)。新しいバンドを組むならこういう方が楽しくやれるんじゃないかなって提案して。
宮田:そのアイディアにいざ乗っかってみたら、思っていた以上にハマって。最初の頃はキャンディーズの『春一番』とかチャットモンチーの曲とかをコピーしていました。人の曲、ましてや性別も違うとなると気楽に歌うことができて、「音楽ってこんなに楽しいんだ」って再確認できたというか。
●それが2009年の秋くらい?
廣瀬:そうですね。その頃はまだ前身バンドでメンバーも違ったんですけど、色んなコンテストとかに音源を送ったり、大会に出たりとかして。
●OKDはどの段階で加入したんですか。
岡田:コピバン時代はノータッチでした。僕が宮田君達のライブを見に行き始めたのは2010年の夏くらい。その時はもうオリジナル曲を演ってたよね。
廣瀬:でも宮田君の前のバンドの曲とかも演ってたよ。当時はOKDのバンドが一番しっかり活動してたからバンドに誘ってもダメで。
岡田:最初呼んでもらった時はツアー中だったんです。だから今は無理だって一回断ったんですよ。
宮田:ヘッドハンティングしに行ったのにね(笑)。
岡田:やたら楽しそうにしてるバンドだったんで、良いなと思ってたんですけどね。最初はサポートで入って2010年の年明けに正式加入。
●はい。メジャーデビューすることが決まってからデビューするまでが凄い早かった印象があるんだけど、メンバー的にどうでした?
廣瀬:楽しかったよね。あと仲間が増えていく感じが超嬉しくて。初めて行く土地にも僕らを待ってくれてる人達が居たり、CDショップの人も良いって言ってくれてたりして。けど、そこで何か…全く売れてないのに売れた気分になってる自分も居て。今考えたらですけど。
●宮田君どうでした?
宮田:売れるためにはどういう曲を書いたらいいんだろうって事ばっか考えてた気がしますね。
●OKDはどうでした?
岡田:ここからワンステップ上がっていく感じの、上り坂っていうのは楽しかったです。でも技術の面とかで不安要素がある中でだましだましでメジャーデビューまでこぎつけちゃったのかなって気もちょっとしてました。
廣瀬:その時はもう、毎日が必死で、忙しくて皆でスタジオにも入れてなくて。明日何やるのかを考えなくちゃみたいな。新曲を作る時間もないし…要するにクリエイティブな作業が無いっていう状態だったのが、バンドにとってあんまし良くなかったなって今振り返ると思うね。2013年の夏にメジャーデビューしてからはあっという間でした。2014年は自分達発信のイベントをやったり、地方でライブをしてみたり…場数を踏む期間でしたね。で、2014年の年末に新しいアルバムを出すことが決まって、「やっと新しい音源を出せる!」ってバンド全体で士気が上がったんですよ。
宮田:結束感あったね~(笑)。
廣瀬:うん(笑)。結束した俺らは何度もディスカッションをして、自分たち主導でバンドをやるほうが今のnicotenにはいいんじゃないかっていう結論に行き着いたんです。それでレーベルと事務所を離れることに決めて。自分たちだけでバンドを動かしていくことになって、俺ら3人がまず最初にやったのは念願だったワンマンライブ。場所はずっとお世話になってた渋谷ラママで。
宮田:東京ではこれが初ワンマンだったね。ラジオ局の企画で福岡で招待制のワンマンはやらせてもらったことがあったけど、自分たちの力で初めてやれたワンマンだった。
廣瀬:お客さんもたくさん来てくれて楽しかった。自主制作でCDも出したし、原点に立ち返って自分たちの力でできることに積極的に取り組んで充実してたよね。ワンマンが終わって皆で「何かチャレンジをしてみようよ」って話して、O-WESTでワンマンをやることに決めました。5周年イヤーだし、5箇所を回るツアーにしよう。で、その最後にO-WESTでワンマンをやろうって決めて。
●本当に3人だけで動いてるんですか?
廣瀬:本当に3人だけですね。スタッフは誰もいないです。ツアーは自分たちで車を運転して回るし、物販も自分たちで売ってます。
●このアルバムに向けては、どんな物を作ろうとしてたんですか?
廣瀬:入れたい曲をまず詰め込もうって感じだったよね。
宮田:デモ段階の曲がたくさんあったので、それを形にしたいねって。今回新しく書いた曲ももちろんありますけど。
●とりあえずアルバムを、か、こういうアルバムを、ではどっち?
廣瀬:うーん、コンセプトみたいな物は無かったよね。
宮田:うん。俺らの曲で仕事を頑張る人に「そんなに頑張りすぎなくていいよ」っていうメッセージを込めた『グッジョブ!』っていう曲があるんですけど、その曲を好きって言ってくれるお客さんが多くて。多分毎日嫌だなと思いながらも汗水垂らして働いている会社員の人に刺さってるんだろうなって思った時に、そういうコンセプトを持ったアルバムを一個作っても良いんじゃないかって。
●共感性の強い物?
宮田:そうですね。2、30代の仕事に就いてる人達の「今日、疲れたな」って聴いた時に「nicotenを聴くと癒されるわ」って思ってもらえる作品を作れたら良いなって。だからリードになってる『サイダーの泡』とか、そういう思いを込めて歌詞を書いたし。レコーディングも楽しかったんですよ。売れる、売れないを考える必要がなくなって、もう一回自分達が「音楽って楽しい!」って思ってた頃の気持ちで、作品を作ることができたから。「楽しい!」が先行した状態でアルバムを1枚作れたのはバンドにとって一つ自信にもなったし。
岡田:メンバー皆が曲を書くことができ多様性があるところが良いなと思ってメジャーデビューしたけど、それはイマイチ響かなかったんですよね。でもやっぱり、そうやって皆がバラバラに曲を書きながらも、一つの集合体として居る事が楽しかったっていうのがあったんで、そこに戻った気持ちでした。
●廣瀬君はどうですか?
廣瀬:アルバムタイトルがずっと決まってなかったんです。アルバムを作るために色んなアイデアがバーって出てきたときに、このタイミングでセルフタイトルを出した方が良いなって思ったんですよね。初期衝動って音で表すのは難しいと思っていて。やっぱり一発目には絶対勝てないから。だったら最初に自分達が作ったデモと同じエンジニアに頼んで、演奏者も同じっていう条件を設けて、やってみようと思ったんです。最初より演奏スキルや表現力が上がって、鳴らしたい音を鳴らせるようになった。じゃあ自分達が今表現したいことってなんだっけ?って考えたら、「きちんと伝える事」だった。宮田君は歌いたい事がハッキリしてきたし、俺は作りたいサウンドを妥協無しで作れるようになってきた。昔の自分達らしさを今の自分達が演奏してる…それなら『nicoten』っていうタイトルでいいんじゃないかなって。
宮田:だから幅が凄いあるかな。幅を持ってた事がnicotenらしさだったんだろうなって改めて感じました。

●では1曲ずつコメントをお願いします。
『1.2.3』
宮田:この曲は僕が書いたんですけど、元々、「1.2.3でジャンプして」って所だけ結構前からあって、サビが全然違ったんですよ。そこに別のメロディの方が良いんじゃないかって廣瀬がコードだったりメロディのアイデアを持ってきて、足したところまでの形の物があってアルバムを作るタイミングでこの曲を一個の形にしようってなって…。あれだよね?これ「フリースタイルダンジョン」に影響されてラップを入れることになったんだよね(笑)。
廣瀬:この曲を聴いた時に一つフックが欲しいなと思って。それでデモを録ってる流れで宮田君がラップを考えてきてくれたんです。結果良かったよね。
●後で杏仁豆腐も出てくるし、中華押し?って思いました(笑)。
宮田:何故か今回そうなったんですよね(笑)。「サイダーの泡」と同じような話になるんですけど、世の中には「頑張れ」ってメッセージが込められた曲が多いので、「頑張りすぎだよ」って言われる事によって「もういっちょ行ってみるか」っていう気になってもらえたらいいなって思っています。

『テレパシー』
廣瀬:この曲はずっとアコースティック編成のライブでやってたのをバンドアレンジにして収録しました。
●1曲目とのバランスも良いですね。歌詞的には?
宮田:僕らは口下手なので歌で直接的に伝えられるフレーズを入れたかったんですよ。
電波上じゃなくて、目の前に居る人達に届く言葉選びをしたかなって思います。
●あと「愛してる」っていう言葉を使ってて。
宮田:あ、そうですね。初めてですね。
廣瀬:俺、「愛してる」って言葉ってメロに乗りにくいと思ってて、ちゃんとハマって無い時はそれが「愛してない」に聴こえちゃうと思うんですよね。ココはメロディが元々あって俺がラララで歌ってて、宮田君がそこに「愛してる」って言葉を入れたのは凄いなと思いました。