The Cheserasera 『YES』インタビュー
INTERVIEW[2015.12.18]
●歌詞についても。どの段階で固まってるんですか?
宍戸:ああ…早く歌詞書いてよって言われた覚えもあるし、結構遅かったりする時もありますね。バンドに投げちゃうと遅くなるかも。弾き語りで全部丸々あったりする時もありましたし。それはもうバンドでプレイするだけなんでイメージも全部あって。
●その、まるっとある時は歌詞も一気に書けてるとき?
宍戸:そうですね。書けた時って事です。その時は…作品としての良し悪しと言うよりは…なんて言うんですかね、吐き出して行く感じで言葉が埋まってく、歌詞が出来ていくんですけど、だから纏まってないし。結構、支離滅裂な部分もありながら、それ以上出なかったら、そこまでっていう感じで終わってましたね、歌詞が。だから「捻り出す」みたいなのは昔はやってなかったです。今は作品としての作り方をしてる感じです。
●文章的な事よりも感情的なところで書いてる?
宍戸:そうですね。ふわっとしたワードが続く曲もあったし、昔は。テーマもクソも無いって言うか(笑)、抽象画みたいな感じですね。抽象画っていうと大層な感じしますけど、ワーって言いたい事言ってスッキリみたいな。
●スッキリ(笑)あと、宍戸さんの言葉はどんな所から出てるんですか?言葉のストックって本や映画や周りの人とのやりとりとか、色々あると思いますが、何処が強いのかなと。
宍戸:あー…まず人と人とのやり取りからですかね。一人の時も勿論ありますけど。色んな蓄積があると思いますけど。何に影響受けたとかモチーフを持ってとかは無いですね。
●美代さんは歌詞書くときは?
美代:僕は自分が感じてたり見てたりしてる物をどう上手く伝えるかっていう気持ちがあって。あとはモチーフじゃないですけど、理想の形が合って、それって僕が思ってるだけなんですけど、「歌がこうあったら良いな」っていう、言葉がこう飛んできたら良いなっていうのがあって。ちょっと一回触らせてみて欲しいってお願いした記憶がありますね。前に。あと「ドラムと歌」としてみた時にこうあって欲しいっていう理想があったんですよね。それをあれこれ宍戸に言って作ってくれって言うんじゃなくて、俺が作って見せればいいかなって思って。
宍戸:詞のハメ方ですよね、メロディに対する。僕が避けるハメ方を、たまに美代君が言ってくる事があって。だから僕がそれを受け取って「ちょっとここは」っていうディスカッションもちょっとありつつっていう作り方もありますね。
●はい。では曲がバンドの音になる過程を教えてください。最初は弾き語りで聞かせる?
宍戸:そうですね。当時それだけしかなかった。
美代:時期によって違うよね。メジャー前とかは本当に弾き語りのみで…でもあんまり悩まずにポンポンポンって組みあがっていったような気がするんですけど。
西田:ベース的には多分、弾き語りで来ても、色々入ったデモで来ても、そんなに大きく悩まずにやってた。弾き語りだったらギターと歌だけでベースもドラムも無いんで、聴いて勝手にそれぞれでこんか感じのベースだドラムだって想像して、ひとまずそれをバッと合わせてみる。で、それを後から調整していくバランスとって行く感じで。で、デモでドラムもベースも入ってても、それも聴きつつ、でもココはこうしたいなって勝手に入れたりして(笑)それもスタジオでやってみて、っていう感じですかね。
●はい。ケセラとして音を出すにあたって各自こだわっている事は?
西田:僕は、前までは、聴くと「こんなフレーズ」って思いついちゃう所があるんで、それをなるべく形にするっていうやり方だったんですけど、最近はそれは俺の中で一通り完結したんで、曲的に、こうあったら美味しいっていう所を求めたいと言うか。トータルバランスで見て美味しくなるようにしたいなって所です。まだまだ勉強が必要です。
美代:僕は時期によって違うんですけど、これが良いっていう強烈なビジョンみたいな物が常にあって、何をするにも。それにハメていく作業を常にしてるんですよね。だからそれがメンバーの賛同を得られない場合はディスカッションと言うか衝突が起きたりもしたんですけど。最近はそういうやり方も僕の中で色々出し切って、一段落してて。西田じゃないですけど、曲に対してどう美味しくハメていくかって一歩引いた感じで曲を構成する面白さみたいな物も最近は思い始めてますね。詰め込むみたいなヤツは今までのCDでずっとやってきたんで。今はまた新しいネタとかも、自分の中で仕入れたり考えたりしつつも、俯瞰で見てみる面白さ、にハマってます。
●じゃあ前は自分の理想に引き寄せてたけど、今は自分が寄れるようになった?
美代:そうですね。そういう感じあります。この先どうなるかわかんないですけど(笑)
●宍戸さんはどうですか?
宍戸:僕は一時期ギターで別のバンドやってた事あるんですけど、大学のサークルで女の子ボーカルの5人編成でやってて。その時は凄く…それこそ作品を作る感覚でやってたんですけど、こっち戻ってきた時の、何かその、「何でもない感」ていうか(笑)
●?制約が無い感?
宍戸:いや、あの…朝起きて飯喰って、風呂入って寝るような感覚と同じなんですよね。スタジオにのそのそ入っていって…もう生活でしか無かった。何か、ありのままっていう感じ。
美代:ありのままでやってたって事か。
宍戸:うん。だから憂鬱…昔の曲は憂鬱な曲が多かったんで、憂鬱に浸る時間っていうか、そういうところでしたね、ケセラセラは、元々は。その延長線上でやってた事は間違いないです。自分の生活っていうか。昔の作品は「はきだめ」みたいなところもあったんで。イライラとか納得いかないことが尽きないじゃないですか。
●…結構、社会好きじゃない?
宍戸:(笑)多分、皆普通にあると思うんですけど、それを引きずっちゃうタイプと言うか、凄く。うやむやに出来ないタイプ。それってもっとこうしたら良いのにみたいな事を抱えた時に、何か誰に言うでもないけど、歌にする事によって発散してたんですよね。誰にも言うような事じゃなかった、そのイライラとか、疑問を。
●逆に歌にする事によって言える?
宍戸:うーん、そうすね。誰が悪いとか、決まってる問題じゃないので、僕が歌にしてるのは。…だから誰に言うでもない、言ってもしょうがないじゃんって事しか歌にならないですね。
 
●では今回のアルバムに『YES』ついて。今回のテーマとかは考えてましたか。
宍戸:漠然と…タイトルとかの世界感に最終的に循環出来たんですけど、その時は一番どうしようかっていう時期だったんですよ。西田君が入院してたんで。
●ああ、そうでしたね。もう大丈夫ですか?
西田:大丈夫です!
美代:勇ましいな(笑)
宍戸:勇ましい(笑)で、その前には僕が喉壊したりとかあったんで…前回のツアーでかなりのその、ダメージって言うか挫折みたいな、僕はそういう気持ちだったんですけど。そういったときに、この作品の話し合いがあって…作品も何もっていう事態だったんですけど、けど、それでもやりますよねっていう感じで。じゃあどんな歌が良いんだろうなって。僕が大人しくしてるしかない時間で(笑)、弾き語りで家でコツコツ一日一曲目指してやってた時期があって。で、メンバーとか色んなスタッフとかに送って、何となく『賛美歌』っていう曲が今んとこ一番良いんじゃないかって事から、アルバムの全貌を見ていったっていう感じですね。
●じゃあ最初はテーマとか考えず、とにかく曲を書いていった?
宍戸:テーマって言うか…こういう作品にしようっていうのは無くて、ただ次の作品は必ず自分達にとって前向きで皆を納得させる物でなければならないっていうのは絶対思ってたんですよ。作品を出す事は決まっている、けども、自分達のメンタルをどう持っていくのか、が、まだ見えてない時期で。どういう歌詞でどういう歌を歌ったら、自分も納得して、お客さんにも胸張って「前に進んでるんですよ」っていうのが出来るのかなって、考えて作ってはいました。
●はい、これめっちゃ良いですね。
メンバー:ありがとうございます!
●打破しなきゃいけないっていう気持ちが強かったから、こういう作品が出てきたんでしょうね。
宍戸:そうですね。メジャーデビューしてから歌詞の事は凄く考えるようになって、共感性とか、それを聴いて貰ってる人に対しての誠意みたいなものを凄く考えるようになったし。
●誠意を考えるきっかけは何かあったんですか。
宍戸:自分の歌みたいだって言って貰えた事があったり、前の曲、『Drape』とか『でくの坊』をそう言ってもらえた事があって、それから、ですかね。それから歌詞は凄く考えるようになった。その、元々はメジャー的にもうちょっと前向きに終わった方が良いんじゃないかってアドバイスがちょいちょいあって、そういう歌も作るようになってたけど、今回はより、そういう結末…自分から始まってはいるが、最終的には作品の世界で完結すると言うか。フィクションとノンフィクションの混じってる感じって言うか。で、今回は自分達にとって、絶対的に肯定できる物が良いんじゃないかって。最終的にそうなっていってますね、結末は。だから今までで一番…簡単に言えばポジティブな歌詞だと思いますね。
●はい、タイトルの『YES』も肯定するっていうところから?
宍戸:これは3人でタイトル色々考えて、美代君が言ったのが『YES』だったんですけど。皆良いよねって。何か救いだったのが…まあこんだけ一緒に居るんで、これこれこうだよなって、話す反省会みたいなとこで、「俺今こういう気持ちなんだ」っていうのが、結構言わなくても割と同じ事考えているのが増えてきた。だから、そう、肯定的な物を。その時肯定っていう言葉だったかはもう忘れましたけど、やっぱり同じようなビジョンだったんですよね、3人が。だから皆納得したタイトルだった。
美代:うん、綺麗に纏まったよね、何か。インパクトはあるし、いいのハマったなって(笑)
宍戸:でもあのままツアーが成功してたらこの作品は無かったです。
●ああ、そっか。
美代:なるほどね。
 
●では曲紹介をお願いします。『賛美歌』、軸になった曲ですね。
宍戸:この曲は、最初の方に出来た曲っていうのもあって、割とその時に言いたかった事が出てる、1,2曲目はどっちもそうなんですけど。何かその…明日には他人かも知れない僕らにも賛美歌を、って言葉が結構ハマったなと思ってて。結構その時バラバラだったんですよね。個々で色々考えてるみたいな、メンバーもスタッフも。だからこの先どうなんのかなって思ってて。本当にパーソナルな話になっちゃうんですけど、それでもポジティブな物をって思った時に、「賛美歌」って言葉が出てきて…うん。色々慣れてきて、情熱が段々薄れていく、何でもかんでも、始めた頃よりもどんどん薄れていってる気がしていたんです。その、恋人だろうが仕事だろうが音楽だろうが、慣れていく部分があるなと俺は思っていて。それが凄く嫌だったんですよ。どうしても許せなくて、何かモヤモヤしてたんですけど、これもこれでしかないなっていうのを、思えたのがこの曲だったって言うか。
●変わってしまう事もあるっていう事を受け入れた?
宍戸:そうですね。今の、今を生きるしかないって言うか。初めての気持ちって輝かしい物だよねっていうのを言いながら、でも今しかないよねっていうところですかね。どこら辺がポジティブかって言うと、分かんないですけど。
●今まで許せなかった物を許せるようになった自分がここに居る。
宍戸:そうですね。
●歌う時も気持ちが違うものですか?
宍戸:まあ、切ない感じは常にあるんですけどね。そこが軸になってるので。自分を変えてしまった気持ちも特に無く、こういう考え方が出来るようになったなって。そういう感じで歌ってますね。今まで自分が嫌な所とかを言って、ワー!みたいな、嫌です!嫌です!みたいな感じだったんですけど、今はそれを「どうしていく?じゃあ」みたいな所で、作ったっていうか、詞を。それは全部に通して言えることだと思いますね。
●現状をどうするかっていう考え方はとても前向きだと思います。
宍戸:(笑)なるほど。
●プレイヤー的には?
西田:ベースは、この『YES』からのテーマとしては、もう出来るだけ難しい事しないで、最小限の力で最大限の効果を、じゃないですけど、そういった狙いの元で作って一番ハマったのがこれで。何これ?みたいな複雑なベースは弾いてない(笑)
宍戸:(笑)
西田:何あのベース馬鹿みたい、みたいなベースが僕は大好きなんですけど、少し大人になって、この曲はそういうの入れないぞってやって、多分一番出来たと思います。
美代:ははは(笑)ドラム的には…どうすかね、これは『賛美歌』っていうキーワードに引っ張られて、最初のドンドンドンっていう白玉の所とかは出てきましたね。あとは結構細かい、スピード感のある、今までより難易度が高いアプローチが全体的に多いんですが、これもそうですね。自分の中で今までナシだった演奏とかを結構、OKにしてきてる曲かなって思いますね。

●2曲目『Youth』
宍戸:この曲は『賛美歌』と割と同時期に作ったんで、CDタイトルの『YES』に一番添ってるのがこの2曲なんですけど。あの…このサビの歌詞が「同じ時間~素敵なことでしょ」って所がもう中心ですよね。て言うか他に言う事無いんですけど(笑)で、そういう言葉を自分で書いた時に画が浮かんだのが、煙草を電柱の下で吸ってる画なんです。
●やっぱり夜ですね。
宍戸:そうですね。確かに。
●目のクマのところでちょっと笑いました。
宍戸:ははは(笑)何かそれぐらい、カッコ付かない事になっていくなって、見た目って。それをこういう形で書いてみて。
●はい。カッコ良さとちょっとのダサさのバランスが調度良いな思ってて。
メンバー:(笑)
●カッコ良過ぎると人間味って失われちゃうと思うんですけど、不器用な所が出てるところがケセラの魅力かなって。
宍戸:あー。ありがとうございます(笑)
美代:良かったな(笑)
●あと、これドラムパターンが面白いですね。
美代:これはまあ、何か、ドラムンベースだったりとか、今までだったら入れない手法(笑)を入れてたりとか。あとスタジオでバッとやった時に、一番自分のハートに来るなと思ってて。上手く説明出来ないんですけど、勢いだとか衝動とかをドラムに詰め込めたら一番良いなとずっと思ってるんですけど…それがこう…自然に出来たのがこれかなって。スタジオでワッとやった時にそういうのを感じると、この曲はイケるなって思うんですけど。それが一番あったかな。僕だけじゃなくて2人も感じてて、それを共有する時だけそういう気分になれるっていうか。それが僕の中では乗ってきたっていう状態なんですけど。
●これはそれが特に入ってると。
美代:はい。出ましたね。