a flood of circle 『花』佐々木亮介 インタビュー
INTERVIEW[2015.11.26]
●ああ、良い所集めて肉付けしたんじゃなく、逆に削ぎ落としてるんだ。
佐々木:うん。ネタ的なものは削ぎ落としてますし、音楽的な…メロディをもっと強くとかサビをもっと聴かせるって意味で転調も入れてるし、言葉とかメロディをとにかく強く届けるっていうのは思ってました。とにかくリズムとかコードとかでちょっと奇をてらってやろうとかは一切無かったですね。そこは逆にチャレンジしたとも言えるかな。今回はどんだけ裸になれるか、内臓出せるかくらいの。
●内臓!(笑)。
佐々木:裸じゃすまないくらいの。
●でもこれ相当剥き出しでしょ?
佐々木:剥き出しですよね。
●私は『花』を佐々木ソロの時に初めて聴きましたけどそれもヤバかった。
佐々木:嬉しいです。ああ、そういう意味では、コアの部分を作ろうとしてたから、弾き語りでも出来るっていう曲でもありましたね。他の曲だと弾き語りで事前に披露する意味があんまり無いというか、バンドの音だけでドーンと出さないと最初に聴いて貰う形としては嫌だなとかあったんで。
●ああ、初聴きの印象は残るから。
佐々木:今回は俺がそういうつもりで書いてるっていうのを2人がすげー応援してくれてたし、弾き語りで演っても伝わる物があったので、先に演れたっていうのもあるかも知れないです。2人もこれは皆に聴かせるべきだよって言ってくれてたんで。
●はい、私も「まだ 世界は素晴らしい」のフレーズ好きですね。
佐々木:ちょっと開き直りも入ってるんですけどね。結構真実として明日死んでも続いていっちゃうっていう悲しさもあるし、でもやっぱり…自分のバンドの感覚でいくとですけど、フラッドがやろうとしてる事はまだ俺がイメージしてるサイズ感でやれてないと言うか。もっとデカイ規模の事歌ってるつもりなんだけど、だからその悔しさもありますし。ロックンロールって言うキーワードってだいぶ端っこに追い遣られてるご時世だと思うんで、それを真ん中に取り戻したいと思ってて。俺が持ってる曲の価値観とか音楽の面白さ素晴らしさって、絶対皆に伝わるし、もっと大きい所で出来ると思ってやってるんですけど。だから皆に伝えたい、届けたいっていうのはあるんですよね。俺が見てる世界は素晴らしい、もっともっと世界素晴らしいって広げたい気持ちが凄くあるので。勿論世界情勢的に能天気には言えないんですけど、この世界は素晴らしいって言う為にやってるところもある。今言っておくべきというか。そうしたらこの曲をデカイ所に持って行った時に、また歌う意味が強くなったり広がったりするんじゃあないかなって。そういう希望を持たせてますね。
●歌詞の事をもう少し聞かせてください。前半は佐々木君の生い立ちもちょっと入ってて。
佐々木:そうですね。正に自分の事ですね。俺今まで、曲を書くときに一番カッコイイ歌詞の書き方って「5分間の事しか書いてない」っていうのがあって。これはメジャーで最初にプロデュースしてもらった、いしわたり淳治さんイズムなんですけど。
●おー。
佐々木:出来事の最初から最後まで書いてあるわけじゃなくて、どっか一瞬だけ切り取って濃く書く。で、その前と後を想像させる方がカッコイイっていう、これは淳治さんに影響を受けたところでもあるんですけど。例えば『鬼殺し』は飲んだ瞬間の事しか書いてないし、『Dreamers Song』も映画見た後の5分間くらいの事しか書いてないんですよ。だからこれは俺の中でスタンダードな詩の書き方で。でも『花』はそいつをちょっと裏切っていて、生まれてからここまで30年分書いてある。
●30年(笑)。29年分ね。30年弱か。
佐々木:だから俺の中では新しいチャレンジでもあって。熱い言葉が沢山書いてある曲っていう風に取れるとも思うんですけど、時系列を追って生まれてこの方の事を書いたっていうのはね、結構新しい事やってみた感じなんですよ。
●ストレートに書いて、時系列で。
佐々木:そう、生まれて子供の時、学校っていうキーワードも入ってきて、面接の変わりに職質っていう(笑)段々大人になっていく(笑)、段々道逸れていっちゃう感じになって(笑)。2番で、…でも2番はまだ「遺書」な感じで書いてるんですよね。その後に「まだ死ねない」って思って、未来の事を書くっていうイメージ。こんなに説明しちゃうのは野暮ですけど。
●ちなみに「死んだ木」はカートから?
佐々木:そうそう(笑)。だからかぎカッコつけて、カートがヘロヘロになってアコギ弾いてる感じとか正に「死んだ木弾いてる」感ですよね(笑)。あの名言が好き過ぎて引用させていただきました。分かる人には分かって欲しいと(笑)。
●あと、最後のほうに「咲くときは命懸け」って言葉にハッとさせられたんですが、どこから出てきたフレーズなのかなと。
佐々木:これは…そのちょっと前までは作詞ハイと言うか、そこまでバーッと書けたんですよ。勿論歌う前に微調整してますけど。作詞ハイ、遺書ハイがあって、深夜って言うか明け方だったんで。バーッと、集中して書けてたところで、このままじゃ死ねないって気付いて、ここからがちょっと理性的なんですよね。理性的になって気付いたのが、フラッドっていうバンドに対しては何で自分がこんなボロボロになってまでバンドやってるのかなって考えたときに、ほぼ本能だなと思って(苦笑)。
●本能。
佐々木:ここまで転勤族で色々変わってきた生い立ちも含めて、運命って言うとカッコよ過ぎて違うなと思ったんですけど、バンドを始めてずっと変わり続けて、そういう生き方をしてるなと気付いた時に、それでもギターと唄は手放せなくてずっとやってきてる。これはもはや本能でしかないなって。それで「花」ってワードが出てきたんですよね。咲く時が命懸けっていうのも本能でしかなくて…花って絶対どんな環境でも陽が当たる所に伸びていくじゃないですか?当たり前なんですけど、その当たり前の凄さと強さみたいな物、フラッドのがむしゃらな強さみたいな物も本能レベルなんじゃないかなって。そん中で感情だけじゃなくて、本能でバンドやってるんだけど、表現を凄く大事にしてやってるので。いい加減に書いてるわけじゃなくて。「土に還るまでが遠足」とか「大喜利」とか(笑)普通のロックンロールバンドが歌わない事をいっぱい散りばめてて、それは意識的なんですよね。聴いて欲しいから本能だけで叫んで終わりじゃなくて、ちゃんと詩作として、歌詞のクオリティとして高い物を作ろうと心がけましたね。
●テンションと勢いだけで成立するバンドもあるけど、フラッドはそこじゃないんだなと。
佐々木:そうですね。ワーッと叫んでる時の自分と、それを見てる作詞家としての自分と別に居る感じがあって。これに向き合って何十時間もやってるんで苦しくなってくるんですけど、この、動いてる自分としてはめっちゃ苦しいんですよ何時間出てこないし悩んでるし。でも、もう一人の自分がこの苦しみを通過しないとこれが出てこないって言ってるから止めない、みたいな。そのもう一人の自分がこのユーモア的な部分を出してくるんですよね。
●おー。意外な。
佐々木:苦しい曲なんだからちょっとしたユーモアとか駄洒落とか、意外と大事と言うか。
●はい。前半は自伝で、後半は決意とか覚悟を歌ってると言うか宣言しておく感じがあって。
佐々木:そうですね意思の方になってきます。うん、いつも叙情的な歌詞は全部叙情的に書いてて、叙事的な歌詞は全部それで書くっていうのが自分のスタイルだったんですけど、これは2番までが叙事的で今までの事を書いていて、3番から叙情的になってるのかも知れないです。気持ちの問題と言うか。
●凄い曲が出てきちゃったなと。あと「届け」って言葉はどんな気持ちで書いたんですか。結構色んなミュージシャンが歌ってきた言葉ですけど、表現者から出る物として軽い言葉じゃないから。
佐々木:やっぱ自分が生きてる世の中とか、もっと言うと社会とか、良い方に向かってないっていう感覚があるんですよ。それがあるから自分が思い描いている、ロックンロールとかジャンルに捕らわれないで、この音楽が響く世界の方が絶対良いと思ってやってるから、やっぱり変えたいとか変わって欲しいっていう祈りがあったりするんですよね。それは具体的に言ったらどういう法律が自分にとって良いのかとか、どうやって生きていくのが良いのかとか、自分が歌ってる事にもリンクしていて、自伝って書いてるんですけど、何か…冷静な自分の分析でいくと、自分語りをしちゃうのって「こうして生きてきました」って報告を書くだけじゃ意味が無いんですよ。どうしたらそれに意味が生まれるかって考えた時に…俺が嫌だなって思ってる世情の一つに「情報が速過ぎる」っていうのがあって。
●ああ、なるほど。
佐々木:色んな事が洗い流されていくように、スグ流れていっちゃうし。自分が本当に良いと思ったものも流されていっちゃって。その良いと思った感情を持ち続けられるか試されちゃうと言うか。良いと思ってた物がすぐ入れ替わっちゃう時代かなと思ってて。バンドも色々居なくなりますし、レコード会社もすぐ無くなって、業界も入れ替えが激しくて、この人とやろうと思ってた人が居なくなっちゃったり。俺の場合はバンドメンバーもそうだったり。こんなに転職が多い世の中って思うと。情報が速過ぎるっていうのと入れ替わりが速過ぎるっていう、それが時代の面白さを作ってるっていうのはゼロじゃないと思うんですけど、僕は結構…自分がこれだって思ってる仕事をじっくりやるタイプの人が好きだし、俺はそうなりたいっていう感覚があるので。だから、自分がある意味流されているかのごとく転勤族だったりメンバーが変わっていっても、このロックンロールっていう柱だけはずっと守ってきた感覚があるんで、てことは、自分がここまでの人生、いっぱい入れ替わってきたけど守ってきたもの、「届け」って気持ちがちゃんと書ければ、この時代にシングルを打ち出す意味があると思ったんです。だからこれが自伝ですよっていうのを面白がってネタとして言ってるだけじゃなくて、今こういう書き方の唄は他に無いと思うし、これをロックンロールバンドとしてシングルとして世の中に発表する事に絶対意味があると思ってるんですよ。むしろ自分語りじゃなくて時代の歌なんじゃないかと俺は思ってる。
●なるほど。
佐々木:冷静な自分がそれを言ってくれたんで、そう書ききれたっていうのがありますね。そういう意味でもいい歌だなと思ってます。自分の事全部書けましたっていう安心感じゃなくて、今こそこれが必要なんだっていう思いがある。

●はい。カップリングの曲達についても。
佐々木:急にこっからくだけていきますけど(笑)。『鬼殺し』なんて笑い話でしかない(笑)。
●わはは(笑)。でも今回、全体的に生き死にに関する言葉が多いなというイメージありますけども。
佐々木:ああ、俺それ人に言われるまで気付かなかくて。結果そうだったんですけど。実は『Dreamers Song』は前の曲で去年からあったんですよ。今回『花』出来て、『鬼殺し』作って、もう一曲って時にこの曲思い出して聴いたら凄い良い曲だったんで。作ったときはポップ過ぎて恥ずかしくて出せなかったんですよね。俺の中で即効お蔵入り決定したんですけど(笑)。
●マジか!めっちゃ良い曲だよ!
佐々木:(笑)『GOLDEN TIME』の時からあって、でも『GOLDEN TIME』には入れたくないって俺が選考から落としたんですよ。でも今聴いたら凄くはまってる気がして。それは歌詞が連れてきてるのかも知れない。曲調は全部バラバラじゃないですか?でも歌詞で繋がってるっていう、自分の中では正直無意識だったんですけど。確かに!って思って。バランスの良い3曲になったかなって。
●そうですよね、3曲とも全然カラーが違うのに共通点がある。
佐々木:そうそう。で、『TRUSH BLUES』は、ほぼボーナストラックだと思ってるんで。アルバムって、俺は曲間とかもこだわってて流れがあるのが好きなんですけど、シングルは、これ曲間めっちゃ長いんですよ。分離させてて、独立して3曲置いてある感じ。俺、シングル盤てそれが好きなんですよ。一個ずつ見せるって感じ。