the coopeez 『rucksack』インタビュー
INTERVIEW[2015.08.28]
●ではそれぞれパートごとに、今回のアルバムで意識していたことや苦労した曲などあれば教えて下さい。
小川:『リュックサック』は結構時間かかったよね。
山本:デモが凄い良かったんですけど。
藤本:Dragon Ashみたいって言われて。
山本:言った(笑)。ラップのところが実際仕上がったのは1コードでいってるんで熱量が下がったんですけど、最初はもっとコード進行があってエモかったんですよ。それで熱い感じになっちゃうと勿体ないなって、宏実君とどうしようって考えて。
小川:ベースが決まってバッキングのギターも決まって、これ以上ギターも思いつかへんし、どうしようかなって時に音資料色々聞いてキーボードがいいかなって思ってですね。
山本:今回、宏実君の蔵出しアイデアが多かったよね。
全員:(笑)
小川:ちょこちょこ出したかな。でもそれを広げていってくれてんのはメンバーやから。
●アルバム全体で、今回ギターはこうしたいとか思ってたことはありますか?
小川:ファズってエフェクターがあるんですけど、ライブでよく使ってて、でも前回『newbalance』のレコーディングでほんまに1ヶ所しか使ってなかったんですよ。「かわいち」の3まわし目のリフの時くらいで。
●あっ、『皮一枚でつながって』って「かわいち」って言うんですね(笑)。
小川:そう(笑)。あそこだけしか使ってなくて。あれ?俺こんな奇麗な人間やったかな?って。
●(笑)。
小川:単純にアレンジでやってったらそうなったんだけど、全部出来上がってツアー廻ったりして改めてCD聞いた時に、ん?って…。好きなんだけどなぁって。
全員:(笑)
小川:なので、今回は多めに入れようかなと。
藤本:でもそこ大事で。宏実君とファズっていう関連を僕は前から推したいところではあったんで。やっぱファズがね、かっこいいんですよ。
小川:『ターミネーター』を最後にやろうってなった時に「任せるわ」ってなって。間奏は元々あったんですけど、じゃあファズ入れよっかなって(笑)。入る瞬間めっちゃ気持ちいい。ライブとかも凄い楽しいもん、踏んだ瞬間。
山本:踏んだ瞬間、床抜けるようにしときたいわ。
全員:(笑)
小川:その楽しいっていうのがCDに入ったと思うんですよね。エンジニアの人がリバーブかけてくれたんが、またいいんですよ。
●それは聴きどころですね。山本さんはいかがですか?
山本:曲を何を入れるかっていうのが一番考えたところですね。振り幅もあるし、今までやれなかったようなことも出来たので。どのポイントで興味を持ってくれるか分からないですけど、それをいい感じに散りばめられたので良かったなと。
●曲順はどうされたんですか?
山本:みんなでアイデア出して考えましたね。
藤本:でもこれを全面に出したいっていうのは、今回は聡君のイメージが反映されてるんっすよ。
山本:『イチカ&バチカ』を考えた時に、最初にエディットしたみたいなパートがあってバンドでガッと入るところに、アルバムの冒頭で毎回イントロダクション入れてるのから繋げて面白くしたいっていうのはアイデアだけ。こういうのやりたいねんって言って、やってもらうんですけど。
全員:(笑)
山本:いくつかあったアイデアの中の一つがそれで、最終的にこれでいこうってなって藤本君が作ってくれたのがかっこよかったんで、イメージ通りに出来た。
●あの繋ぎは凄くかっこいいですよね。
藤本:その次3曲目に『リュックサック』を持ってきたいって言ったのも聡君で。僕らはわりと後半に思っていて、いきなりそれいくんやって思ってたんですけど、そこはPが推してたんで。
山本:そこは推させてもらいましたね。
全員:(笑)
山本:こういう音でこういう感じでっていうのを、凄く見てもらいたかったんですよ。変化球のように見せるんじゃなくて、これなんだって見せたかったんで。
●頭の部分でちゃんとわかるように。
山本:そうですね。クーピーズらしいって言葉、特に自分で言うのは凄く嫌いなんですけど、でもそういうのをみんなが持ってたとしても「なんか新しい」とか「でもかっこいい」とか、そういうのをしっかり見せられる曲だと思ってたんで、最初にしたかったんです。
●アルバムごとにイントロやオープニングの曲があるのはこだわりですか?
藤本:そういうのが好きで、2ndが掛け合いだったんでどうしようかなって思ってて、そこで『イチカ&バチカ』に繋ぐってアイデアをもらったんで、それに合わせて作りましたね。目次的なトラックを作ろうって感じの思いはあって、曲名とかを散りばめたりとか、自分らのテーマとか決まり文句にしてるような言葉を。それは多分恐れ多くもZAZEN BOYSの影響があって、どのアルバムにも同じフレーズが出てくる感じが好きで。結果的にそんなことにはならなかったっすけど。こっそり曲名言ってるんです。
●わかりましたよ。
藤本:タイトルが決まった時に“背負って行こう”っていうのがフレージングとしていいなと思ったので、あんな感じになりましたね。生ドラムじゃないCDならではの切り貼りしたようなのも作ってみたいなと思って。
●はい。山本さんはベースに関しては?
山本:前作を作った時はコーラスをしっかり見せるとか声の重なりとかを見せたいっていうのがありきで歌いながら作ったので、凄くシンプルだったんですよね。今回は曲に向かって考えたのがほとんどだったんで、やりたいアイデアもどんどん入れられた。でも作ってからコーラスを考えたりしたんで、これから練習しないといけない(笑)。
●(笑)。凄く動きのあるベースですしね。
山本:動くものってあんまりやってきてなかったんで、それが出来たのも良かったし、考えるのが好きなんですよね。さっきアー写とかデザインとかコンセプトっぽいって言ってくれましたけど、藤本君が作ってきたものに、あたかもストーリーがあったかのように作るのが好きで。『イチカ&バチカ』も実は前があったっていうのも。そういうのが色んなところで出来たと思うし、みんなが一緒に考えてくれて出来たので楽しかったです。
●夏音さんは?
夏音:とにかく自分に課したハードルが高かったんです。『ラストチャンス』とかもそうですけど、特にリズム隊で見せるみたいなのが多くて、凄く意識して録りました。出来たか出来てへんかはおいといて、自分が考えてきたフレーズをただ録るっていうだけのレコーディングではなくて、考えてきたものも踏まえて、影響出来てるかどうかまで考えてレコーディングをしたので大変でした。今までで一番楽しくもあったんですけど。アイデアもここはこんだけ自分で叩いて、あとは重ねるとかも考えたことなくて、例えばタンバリンとか入れようかっていうのも、元々デモに入っててそれを生かすっていう風なのが多かったんですけど、そういうところまでちょっとずつですけど考えながらやったんで。
●また一歩進んだような。
夏音:はい、進んだ気がしました。今までもそこに参加したかったんですけど出来なかったんです。まず浮かばなかったから。「それ面白いですねー、やりましょっか」みたいなのを、する側だったのを言える側に向いた一枚。
●何かきっかけがあったんですか?
夏音:バンドマンのドラマーじゃなくて、ドラマーとしてバンドに参加したいと思って。クーピーズの中でリズムだったりドラムに関してはトップにいるっていうことが出来てなかったので、でもバンドにおいてドラムは私しかいないから、ちゃんとトップを張るぞって思いはずっとあって。ただインパクトを与えるだけのドラマーやったらいっぱいいるし、特に最近女の子でも増えてきてるから、そんな人いっぱいおるしなで終わってしまったらクーピーズが勿体ないと思って。クーピーズってバンドが日の目を見るために私はどうしたらいいかって考えた時に、もっとちゃんとドラマーとしてやれば、もっと面白いアイデアがみんなが浮かぶし、私も出していけるし、そうなったらもっとクーピーズが面白くなっていけるなって思った。
●1ドラマーとして認めてもらった上でってことですね。
夏音:はい。どやっていうのをドラマーに思わしたいっていう裏テーマで。ライブで見てかっこいいけど、音源聞いてもドラムとして魅力ないなっていうのは嫌やなと思って。
山本:ハットがちゃいますよね。
夏音:そう!ハットに関して厳しいから。
藤本:気になるんですよね。
山本:太鼓はチューニング出来るんですけど、金物は出来ないんで如実に出ると聞きました。
全員:(笑)
●藤本さんは歌に関してはどうですか?
藤本:頑張って歌おうって感じですね。僕は自分の声があんまり好きやないんで、1本調子だって思ってたんですけど、歌い方のニュアンスは前よりはちょっと上手くなったかな…。
●とっても控えめな(笑)。
藤本:でもレコーディングのNGテイクが減ってきましたね。
山本:上手くなったし、今回は細かく言わなかったですね。僕は歌に関してはカチカチにするのが好きなんで、ピッチとリズムは奇麗にしたいんですけど、でも今回は曲によってラフな方がいいなっていうのはそのまま残した。
●アルバム全体として凄く強さとか覚悟を感じて。これまで藤本さんが闘ってきたところ、から少し脱出したというか、進んだ気がするのですが、いかがですか?
藤本:今回実はみんな気づいてるかわからないんですけど、愛って言葉がいっぱい出てるんですよ。1枚目は徹底的にそれを避けてて、2枚目は意識してなくて、もちろん今回も意識してなかったんですけど、めっちゃ入ってて…(笑)
全員:(笑)
藤本:恥ずかしいですけど、そういうことに挑もうとしてるんやろなって。間違いない感は前より出てきてると思うんです。
●もっと大きなところになってきてるのかもしれませんね。自分との闘いを少し終えてきてないですか?
藤本:常にあるんですけど、それが人に何かを与えれるぞっていうのは思えるようになったかもしれないです。自分について書いていることが、周りにとっての言えることやっていう。そういうのは意識してライブやってるっすかね。
●『ターミネーター』が正にそういう曲ですよね。
藤本:そうです。この感覚にハッとする人間、何かマイナス要素を抱えてる人間は絶対にいるぞって確信を年月を経て思ったんで。そういう人を動かしたいですね。
●自分と聴いてくれる人、これから出会う人の曲ですよね。だからこそ”理由がないとダメらしいぞ 意味がないとダメらしいぞ お金がないとダメらしいぞ 悔しいな、くだらないな“っていうところが凄く苦しいんですけど。
全員:(笑)
●でもここを歌った上で、最後にちゃんと出会うことを信じられているから、アルバムとの最後の曲としても凄く美しい終わり方だなと思いました。
藤本:ありがとうございます。この前も『グレートアドベンチャー』がそうですけど、上手いこと終着出来る曲があったなぁって。
●前も信じれてるんだけど、より確信になってきてる感じがしますよね。
藤本:最近は疑いは一切ないですね。どうやって広めるかってとこだけで。
●このアルバムが届くといいですね。出来上がってみてはいかがですか?
夏音:前回と違ったのは、次早く作りたいってなりました。前の『newbalance』は完成した時の満足度が高くて、完成したー!嬉しいー!聴いて下さいー!みたいな、もちろん今もあるんですけど、でも早く新しいのを作りたくてたまらなくなったんは初めてです。今ならもっとやれる気がする感が増してるっていうか。
●可能性を感じるアルバムですよね。
夏音:あぁそうです、可能性が広がった。だからもっとやりたくて仕方ない。
小川:無事出来上がって良かったなが一番ですけど、やっぱりあそこもっとこうしておけば良かったなっていうのは、どうしてもあるから、それは次に繋げればいいかな。そういう意味で次作りたいもある。でも今はこのアルバムを聴いてもらいたいので、頭はそこをどうしていこうかってところですかね。
山本:今までで一番作ってる時のことをあんまり覚えてないんですよ。一生懸命やってたんですけど。作ってる時のことを覚えてないといえば、スピッツの名盤2枚目の『名前をつけてやる』を作った時、彼らは覚えてないらしくて、とうとう来たかと。
全員:(笑)
藤本:一番真っ当というか、僕こうしたかったんですよっていうのが曲調としても出せてる、且つ一番自分の手元から離れたアルバムやと思ってるんです。僕が曲を作ってますけど、出来たものとしては手放してる感覚というか、3人が作った要素が前よりもでっかくなってて。それはさっきの話じゃないですけど、バンドだからいいと思うんです。3人が見つけ出してくれて、それをコントロールしてくれてるっていうのはいいと思うし、これが今までの中で一番そうなってるなぁと。一番任せましたね。
●そうに出来るようになったってことですかね。
藤本:そうかもしれませんね。判断を委ねるっていうのは大変じゃないですか。今回は楽でしたね。作る方に専念出来た。