a flood of circle 『ベストライド』佐々木亮介ロングインタビュー
INTERVIEW[2015.06.17]
●あと、良いなと思ったのが、私は佐々木君の弾き語りを結構見てる方だと思うけども、4,5年前は「フラッドの佐々木」じゃなくて「佐々木亮介個人」みたいな印象だったんですよ。そのうち弾き語りでも「フラッドの佐々木」感が強く出てて、でも今回はどっちも越えて佐々木亮介個人でもありフラッドの佐々木でもある、芯の部分に戻ったと言うか。
佐々木:うんうん。凄い仰る通りで、前は分けてた部分もあったし、ある意味分裂してた所もあると思うんだけど、本当最近、毎日a flood of circleで、毎日佐々木亮介だから(笑)、今そこが多分繋がって来てるんだと思います。前だったら「君が好きで」なんて恥ずかしくて唄えなかったかも知んないけど、まあ、好きなんだから良いじゃん、って(笑)。これも俺の一部だし、これもa flood of circleなんだからちゃんと聴かせるっていうか。スゲー良い曲だと思ってるんですけど、俺。
●スゲー良い曲だよ!
佐々木:(笑)。

『心臓』
佐々木:これは佐々木家的なルーツが結構あります。甥っ子が生まれた時に感じた事がかなり入ってるんです。「抱きしめればわかる 胸を伝わる鼓動」とか。甥っ子が生まれた時に…じいちゃんは死んでるんだけど、何かじいちゃんに似てたんですよね。で、横にばあちゃん居て、死んだじいちゃんの顔を思い出しながら、産んだ妹が居て、母ちゃん父ちゃん居て、俺が居て、っていう。俺の中で佐々木家の前後が全部繋がった日で。
●おー。
佐々木:で、この曲を家族の歌として作りたかったわけじゃなくて、その時は「家族」って事じゃなくて「生きてるって事が実感出来るってスゲェな」って。それは恋人同士が抱き合うとかでも同じだと思うんですけど、それがライブにも還って来て、生きてるっていう事を伝えるって極端な話、左胸にマイク立てて聞かせてるようなモンかなって。で、その時ナベちゃんと話してたのが、今まで100曲ぐらい作ってきたから、新しいリズムパターンて何だろうねって。今までやってないのもそうだし、皆がやってないっていうのもそうだし色々探してたんですけど、そういうガムシャラな新しさっていうのをもっと表現したいリズムを考えた方が良いんじゃないかってナベちゃんが言って、この曲のアレンジ、やりたいビートがあるんだよって持って来て。昔やろうとしてやれなかったビートらしいんですけど。Bメロのロールの感じとか、キックで心臓の音を表現するとか。姐さんにも心臓っぽいベースを弾いて下さいって言って。しかも同時に大きいステージで鳴らすべきバラード、『ベストライド』と同じ発想で、六畳間のバラードじゃなくて、デカイとこで鳴っても後ろまで包み込めるような大きいバラードにしたいなって。最初は曲と詞が分離してたんで、大きい世界観の曲って思って作り始めてたんで、途中で心臓のアイデアに歌詞をちゃんと嵌めて、音も身近に感じるサウンドの暖かさを持ってるんだけど、レコーディングMIXとしてはスケール感とか、それが同時にハマった気がして。大きい所で聴く曲で感動するところって、壮大な事やってんな~って時ってふわふわした感じじゃないですか。
●ああ、確かに。
佐々木:大きい所でも、世界観は大きいんだけど、身近に感じる言葉とかがあるとちゃんと感動するって言うか。それが両立出来た曲かなと思って。だからこの曲は早く大きい所で演りたいですね。
●歌詞の「あなたはいつでも 始まり続けてる」ってフレーズが良いですね。
佐々木:これはちょっと願望も入ってると言うか。フラッドはいろんな事が終わりながら始まってきた歴史でもあったし、だけど、此処から先誰も知らない一秒が積み重なっていくじゃないですか?まだやってないことがある、音楽の話に繋がっていくんですけど、まだ知らない事があるって凄いワクワクするし。何かもう色々出尽くしてるとか、政治の事とか考えると日本終わってるなと思うときもあるんですけど、だけどやっぱり「始まり続けてる」って思えるかどうかが凄く大事で。後退的でも明るいっていうのがここでも出てきてる。「The END」って言葉を使おうっていうのは去年から考えてて、めっちゃ暗いじゃないですか?これ。終わってるし。ちょっと悲観的な所があるんだけど。2番で逆転できたのはデカかったなと思って。…俺「あくび」って言葉が今まで書けなかったんですよね。身体で体験してる言葉っていうのを、書けたのは良かったなって思って。具体的な「心臓」っていうキーワードとも繋がって。これは誰でも分かる事を書けてるっていうのが良いなと思って、だから難しい漢字は一個も使ってないつもりだし。
●はい2番の3行が凄く良いですね。皆実体験としては知ってるけど、言葉にされて初めて気付くみたいな。
佐々木:俺も気に入ってます。さっきのSNSじゃないですけど、情報が速すぎて大事な事を忘れちゃうって言うか。生きてることって感動することだと思うんですけど、それがぼやけちゃうとね。一番良い曲書きたいし、どんな仕事してても、今日やってる仕事が今まで出一番良い仕事って思いたいハズだなと思って。それもせわしないと流れて行っちゃうっていうか。目の前の仕事ばっかやっちゃうとね。そういう大事な事を気付かせるパワーみたいな。
●ギターのフレーズも良いですね。好きです。
佐々木:ギターも頑張って入れてます、このアルバムは、本当に。ギターソロも、今回自分頑張って弾いたんで。それも超楽しかったですけどね。今回アンプを…ちょっと前にBat Catっていうアンプを買って、それでレコーディングするのも楽しかったですね。

『リヴェンジソング』
佐々木:そのまんまですね(笑)。
●ですね(笑)。この曲に込めた気持ちとかは。
佐々木:そうですね…フラッドの歴史って、出会いと別れだし、愛と悔しさだなって思うんですけど、一番大事なことが…やっぱり音楽を作り続けてきた事に一番自信を持ってるので、何か…「リヴェンジ」の意味も、逆境に対して答えるじゃなくて、今までこんだけ良い曲書いてきたのにこんだけしか売れてないのかよ、みたいな。悔しさ、そっちかな(苦笑)。うん。それで、さっき言ったように「大きいステージに行くぞ」っていう気合いを、逆境の中から物語が出てきたんじゃなくて、フラットに「良い曲が出来ました」っていう風にしたい。もっと、大事に作ってきた曲達を広い所で、皆に伝わるように演奏するぞって。それはまだ全然足りてないと思うから。『心臓』で終わっちゃうと壮大すぎるのもあったんで、また明るい曲で終われたのが良かったなって。『ベストライド』と一緒に出来た曲なんで、このアルバムの柱っちゃあ柱だし。
●最後に宣言しとくって感じで。
佐々木:正にそうですね。誓うっていう行為ですからね、リヴェンジ。
●この「借りは返す」ってのが良いですね。
佐々木:(笑)。これ自分的には裏の意味もあって、本当に才能ないなって思うんですよ。
●ん?
佐々木:音楽について、天才ではないなって思うんで。でも、自分の、才能の器が空っぽな所に、好きな音楽とか絵とか小説とか映画とか落語とか、何でもかんでも詰め込みまくって、他の人から見たら割り算できないぐらいギッシリ色んな物が詰まったのが俺だなと思ってるんで。だから今色んな物を借りっぱなしだと思ってて。それ俺、色んな物が好きで良かったなって思うし、自分が好きな物とか好きなアーティストに凄く感謝してるんで、その借りを返す時が来てるって思ってて。a flood of circleがa flood of circleしか出来ない音楽や物語を今作り始めてると思うから。そういう意味のリヴェンジもあります。感謝の。本当にだから借り物の言葉で歌いたくないっていうのがあって。…たまに励まされるんですよ、「フラッド、めっちゃ売れては無いけど、まぁまぁ良いじゃん」みたいな事言われると、めっちゃムカついて。その人から見たら「頑張ってるじゃん」って事かも知んないんだけど、自分では負けてるって思ってる状態で、安心しちゃったり、こんなモンでいっか、みたいなのって絶対思いたくなくて。今を認めるっていうのは、嫌だったんです。やり続けることに意味があるって、ちょっと違うなって。
●色んな物を覆していくための言い切り、宣言みたいな。
佐々木:そうですねぇ、まあ、悔しいって事です(笑)。本当に一枚でも多く売りたいし聴いて欲しいし、1曲でも多く知って欲しいし。リード曲だけYOU TUBEで見ても良いんだけど、俺が知ってる音楽の世界ってもっと豊かって言うか奥行きがあるから。音楽の聴き方は自由だから押し付けたくはないけど、もっとあるよっていう提案は出来るじゃないですか?そういう意味でまだまだ足りないな、悔しいって思うところです。色んな意味がリヴェンジには込められてます。

●PVの裏話も聞けたらなと。撮影はどんな感じだったんですか。
佐々木:川崎競馬場で撮りました。最初、青空の下でが良いって言ってて、ジャケットも車の他に馬案があったから競馬場とかどうですかね?って言ったら、のってきてくれて。競馬場で何をやるかは決まってなかったんですけど、馬に乗るのもな~って。大変だし(笑)。結局出てきたアイデアは俺が走るっていう。自分で走りたいとは言ってないんですけど(笑)。ただ俺は青空の下の突き抜けた画が欲しかった。芝生でも良かったんですけど、まさかダートを走る事になるとは。めっちゃキツかったです。前日ライブだったんですけど、朝6時からダッシュしてて。あんなに走ったの中学のサッカー部以来だなって。ダートをブーツ・革ジャンで走るっていう、マジで体調崩しました。
●あらら。大変でしたね。
佐々木:撮影の後プロモーションも入ってたんで、熱出しましたね。ランニングは良いんですけど、ダッシュをね、あの本数やるって、朝練かよ!って感じでしたね。でもPVは良い出来になったんで。
●ちなみにナベちゃんと姐さんは?
佐々木:そこが見所なのが、演技シーンがあって。ナベちゃんが、俺が馬代りに載ってるスポーツ新聞を見ながら「え?」っていう演技があるんですよ。意外と良い演技してますよ(笑)。姐さんはビール呑んでます(笑)。2人はVIP席にいたんですけど、ふと見上げると優雅に手を振ってて。こっちは走って息切らしてんのに。繰り返しながらコノヤローって思ってましたね(笑)。
●わはは(笑)。
佐々木:あと、競馬場のビジョンに「AFOC」って映し出してくれて。それがめっちゃカッコよかったんですよ。
●はい、リリースツアーもありますね。
佐々木:今回のは、リリースツアーでもありますけど、来年の10周年と更にその先に向けての原点回帰ライブなんで、『What's Going On』っていう、インディーズの頃からやってるイベントで、それを久々にやろうと思ってます。クアトロツアーも久々だし、対バンも今までやった事無い、でも俺が好きな人達を呼んで。新鮮な感じになると思います。
●はい。じゃあミニアルバムとこのツアーがこれから先に向けての第一歩と。
佐々木:そうですね。土台作りの中の一歩目だと思ってます。30までの悪あがき(笑)。これに関してはメンバーがガッツリ皆を連れて行くぞって決めちゃってるし、最高のライブを見せるし、ライブ観ながら「フラッド今後どうなっちゃうんだろう」なんて不安な気持ちにはさせません!っていう。
●じゃあ最後にアルバムについてのコメントをお願いします。
佐々木:『ベストライド』は、a flood of circleの今までの中でベストな作品です。いつかベストアルバムを出す時が来るまではこれがベストだと思ってて。このアルバムの曲達をデカイステージで演ってあげたいし、お客さんにしろスタッフ周りにしろ、どうしても良い景色見せたいって、自分の使命だって勝手に思ってるから、そこまで皆さんを引っ張り上げていく気なんで、その意思表示のアルバムです。
●ありがとうございました!

(文・朝倉文江)

MV撮影協力:川崎競馬場

『ベストライド』
01. ベストライド
02. One Shot Kill
03. YES
04. Trash Blues
05. 心臓
06. リヴェンジソング

CD
Imperial Records
TECI-1460 / 1,600円(税別)
2015.6.17発売
LIVE SCHEDULE

・AFOC presents What's Going On Tour 2015 "BRAND-NEW RIDERS"
6/25 梅田CLUB QUATTRO w/tricot
6/26 名古屋CLUB QUATTRO w/tricot
7/3  渋谷CLUB QUATTRO w/GLIM SPANKY
7/4  渋谷CLUB QUATTRO w/the band apart

・AFOC presents VS tour “ BATTLE ROYAL 2015”
11/20 なんばHatch 
11/22 名古屋ダイヤモンドホール
11/27 東京 ZEPP DIVERCITY TOKYO
【total info:VINTAGE ROCK tel.03-3770-6900】
※全公演対バンあり
※9月12日(土)よりチケット一般発売

★詳しい情報はこちらへ。
■公式HP http://www.afloodofcircle.com/