a flood of circle 『ベストライド』佐々木亮介ロングインタビュー
INTERVIEW[2015.06.17]
●『ベストライド』をライブで初聴きした時の突き抜け感、最高でした。
佐々木:ありがとうございます、嬉しいです。今、ライブでも歌をもっと聴かせたいっていう欲望が強くあって、勿論PAさんも最高の音を返してくれてるから伝わるって信じてるけど、デカイ会場になればなるほど、やっぱりボヤっとした音像になったりするじゃないですか?そん中でも絶対に歌詞が聴こえる様に唄いたいと思っていて。「俺のベストはいつも 今なんだよ」ってフレーズが一番聴こえる唄い方、一番聴こえるアレンジ、一番聴こえるコード、一番聴こえるリズム、本当に細部にこだわって作ったので。うん。本当に狙いとやりたい事とがズバッとハマった曲です。今までで一番ハマってます。
●はい。確かに今までって、目標的なことって唄われて無かったですよね。それでも進むみたいな。進んでいく事が大事だったけど、それに今は目標が出来ていて、だから強いんだなと。
佐々木:そうですね。暗闇の中をガムシャラに(笑)行ってる曲ばっかりだったのが、目標…自分の中ではもがいてた闇の中に、ちょっと遠めに光が見えてる感じなんです。で、そこに行けば良いわけだから。でもまだ光は小っちゃいんで。迷いながら行ってるけど、確かにそこに進んでるっていうのは強さになってるかも知れないですね。

『One Shot Kill』
佐々木:これはナベちゃん、めっちゃ成長したなって思いました。この曲は最後に出来たんですよ。ちょっとナベちゃん的には苦手なフレーズもあったと思うんですけど、レコーディングは疲れも溜まってたし短い時間で作ってたから、ナベちゃんに対しては頑張れよって思ってたんですけど、バッチリ応えてくれました。本当に少ないテイクで良いの出してくれたんで。ナベちゃんも自分で感じてるんじゃないかな。彼の良さが発揮されてると思います。ドカドカ感とか(笑)。
●この曲のテーマは?
佐々木:これは正に『One Shot Kill』、一撃必殺っていう、ライブの時にいつも思ってた事なんです。今日が最後かも知れないから、今日で仕留めて帰るみたいなのはあります。
●わはは(笑)。見てくれるお客さんと最初で最後かも知れないから確実に落とすと(笑)。
佐々木:それはやっぱバンドマンとして普通の気合いだと思うんですけど。また次来てねってライブの告知はするけど、でも今日ブッ刺して帰るっていうのは絶対あるじゃないですか。で、その後の歌詞はライブで言いたい事かな。最初「君を生き返らせる」が無くて、でもポジティビティに繋がる、前に向いてる『ベストライド』の感じが出来てたから、『One Shot Kill』もただの殺意だけで動くんじゃなくて、じゃあライブの時に何思ってるかなって考えて。やっぱり「ああ生きてるなぁ」っていう喜びが自分にもあるし、俺、人のライブ観て良いなって思う時はそれがあるんですよ。「生きてて良かった~」みたいな。この瞬間に立ち会えるなんて、みたいな。
●ああ、ありますね!
佐々木:そう思ったときに、このAメロの、普段結構頑張って生きてる・無理して生きてるとしたら、ライブでやっと生きてるって感じれるのかなって。ライブに来て俺達の曲を聴いた限りは生き返らせちゃいますよって(笑)。これ説明し過ぎかも知れないけど(笑)。
●いや、良く分かりました。なるほど。1回死んで生き返るんだなと思ってたけど、ライブで生き返るんだ。
佐々木:そうですね。だから俺っぽいなと思うのは『ベストライド』でも「一瞬で背景になる 儚き一生です」って書かなきゃポジティブなのにちょっと陰が出ちゃうっていう(笑)。『One Shot Kill』も「あと何度だろう」って気にしちゃってる(笑)そこが俺等っぽいかな。
●はい(笑)。ライブがテーマ的な。
佐々木:勿論ライブで出来ない…レコーディングだから出来るアレンジとか、ライブでは再現できない部分が実はあったりしてて、それはもう気にしてないっていうか。音源でベストな形とライブで一番良い形は別で良いと思ってるので。歌のニュアンスとか歌の聞こえ方とかはライブを意識してますけど、この曲はレコーディングの最後に出来たスピード感だからこそ出来た曲かな。アレンジほんっとに決まってなくて、ココで録りますよっていうギリギリの処まで姐さんとかナベちゃんとかエンジニアのオサムさん(杉山オサム)に口出ししてて。やりながら決まってったところもありますね。
●本当にギリギリだったんですね。
佐々木:そう。でも姐さんとかは他のバンドとかではそれが普通らしくて。「そうじゃないと出来ない事って絶対あるから、ええんちゃう?」って。つえー!みたいな(笑)。それがあったから出来たって感じですね。確かにココで悩んだり考えすぎたりするとどんどん複雑になったり、凝ってるけど何か分かんない曲になる危険性もあったんで。それは姐さんのおかげだなって。またそこで出してくる姐さんのフレーズがめっちゃ良いんですよね。俺が欲しがってるベースのツボを抑えるのがどんどん早くなって来てて。前はちょっと違ったらそこはもっとブルー・ノート入れて弾いて欲しいとか、ブルースっぽいフィーリングを挟んで欲しいとか言ってたんですけど、それがもう最初から入ってるっていう。だからスグ録れるっていうのもあって。その辺の信頼関係はどんどん高まってると思います。お互い反射神経が良くなってる。
●はい。あと、この「君」は何を指してるのかなと。
佐々木:ああ、誰の事をって?うーん、そうだな…やっぱりライブの事を書いてるから聴いてくれてる人の事は意識にあったかな。前まで、「君」って書いてても自分に宛ててる事とかあったんですけど、最近そういうのが無くて。自分の事書く時は俺とかになってきてるし、あんまり自分に語りかけてる曲って無いんですよね。そういう意味では外に向かってるかなって気はします。

『YES』
佐々木:これは歌詞が呼びかけ系かな。
●音の位置がリアルに感じるのが良いですね。
佐々木:ああ、そうですね。これもオサムさんと長らくやってきたから進化したのかなって。前までこれ系のミックスってLRをもっと寄せて、それで音を前に出して突破力を高めるって言うか圧をグッと来るような音像を作りがちだったんですけど、それじゃデカイ処には行けないんじゃないかなって。それこそガムシャラに突っ走ってる感は出るんですけど、光が無いんですよね。って思った時にめっちゃ音を開いて、ちょっと大きめの音にしました。広いめの音と言うか。そうすると音もハッキリ分離して聴こえるから、何やってるかもハッキリ分かるし、多分そういう意味で音が近く感じるんだと思うんですけど。空間があるような音像にして。それはかなり意識しました。そうすることによって歌詞が聴こえてくるし。
●タイトな時間での制作だったのに色んな事してるんですね。
佐々木:かなり色々やってます。さっき言ったみたいに、今音楽的に楽しいんで、やりたい事いっぱいあるんですよ(笑)。
●すんごい良い笑顔だね(笑)。
佐々木:あはは(笑)。やった事ない事がまだまだあるって何て幸せなんだろうって(笑)。音楽を作る上でチャレンジしてない事がこんなにあるなんてめっちゃ楽しいなと思って。勿論ロックンロールバンドってルーツが結構ハッキリしてるから、似たような事やりがちだし、そっから結構戦いがあるんですけど、でも何か、それも今は楽しめてて…イメージを再現するには試行錯誤しなきゃいけないから大変ではあるんですけど、でもエンジニアさんが結構長く一緒にやっているだけに、分かってくれるんですよね。『YES』はコードもメロディもフラッド節でストレートな曲だと思うんですけど、音全体とか聞こえ方は凄い新しいチャレンジは出来ました。
●はい。歌詞的には?
佐々木:歌詞は、最初、2番までの歌詞しかなくて、「答えてくれ」で終わってたんですよね。呼びかけは。3番もそうですけどその前に「場所がある」、「夢がある」って断定をどうしてもしたくて。メロディ的にはすべきじゃないんですけど(笑)、ここでちょっと無理して唄ってるんですよ。メロ的には「辿り着ける場所」までだったんだけど「場所がある」まで唄ってるんで。今までだったらメロディ優先する所を、歌詞を言い切っちゃおうと思って。ここで断定を書けたのがこの曲の良い所ですね。「答えてくれ」って言うのは呼びかけなんですけど、「ある」って自分で言えるかどうかが凄く重要だと思ってて。ここに自分の意思が入ってますね。人任せにしないっていう(笑)。
●あとこれは「フラッドの歌」だと思いました。ギターのフレーズも、歌詞にも所々今までの色んなフラッドが連想できるアイテムが散りばめられてて。
佐々木:ああ、なるほどね。でもそれはジャストで。Aメロは前の曲達の登場人物なんですよ、道化師とか、『オーロラソング』のとか。ここまでを自分で肯定したかったのは凄いありますよね。そいつらに「YES」って言ってくれよっていう。
●そう、全部引き受けてこの曲があるんだなって。
佐々木:そうですね。だから前より強くなってるんだと思います。本当に今、いろんな事に「NO」って良い易い時代だとは思ってて、俺SNSはやってないんですけど、何かをライトにディスるのはし易い時代だなとか(笑)。色んな評価の機能があるのは良いと思うんですけど。俺もやっぱ10年目になると年下のバンドとか増えて来たし、ファンの人もそうだし、歳が近い人でもそうなんだけど「フラッド聴いて勇気付けられてます」とか、「色々大変だけどフラッド聴いて頑張ってます」とか、「フラッドのライブ行くのが夢なんです」って手紙貰ったりして、グッと来ちゃって嬉しかったから、だから「答えてくれ」って投げっぱなしにするんじゃなくて、「ある」って言いたかったんです。それを引き受けて書けたのが強くなったなとは思ってますね。気に入ってます、凄く。

『Trash Blues』
佐々木:全く似合わない夏ソングを作ってみたっていう(笑)。完全にフラれソングですけどね。
●この弾き語り、深読みされそうですけど(笑)。
佐々木:そうですね(笑)。最初、Duran辞める頃のライブでthe pillowsの『エネルギヤ』をカバーしたんですけど、あれもDuranに対してじゃないのかって凄い勘ぐられて(笑)。別にそういうつもりじゃなかったのに、これもそう取られたら嫌だなって思ってて(笑)。メンバーに対してじゃあ無いです。過去の辞めてったメンバーとか、事務所レーベル色々変わってきたけど、そういう人たちに語りかけてるわけじゃないです(笑)。
●それはちゃんと言っておかないと(笑)。
佐々木:そう、もうちょっと色っぽい感じで聴いて欲しいです。そういうドライな感じじゃなくて(笑)。3月にDuranが辞めるって決まった日と、父親が癌になったんで仕事を辞めるって言われた日と、他にも色々あって。
●いや、その、お父さん大丈夫ですか?
佐々木:あ、大丈夫です。抗癌治療がうまくいったんでどうにか。まあ、その一日に色んな「別れ」が重なったんですよ。別れが一気に来た時があって。「I'm a trash」ってちょっと言い過ぎかなとは思ったんですけど(笑)。
●こんなに色っぽく自分は屑だと(笑)。
佐々木:あはは(笑)。ま、やっぱバンドマンなんて、って根っこはあるんですよね。本当にね、電車とかでたまにギター持ってエフェクターボード持って乗ると、「すいません僕みたいなもんが」みたいなのがやっぱあるんですよ。
●わははは(笑)。いや、そこは堂々と行こうよ!
佐々木:座席とか座りにくいなって。ガラガラだったら座りますけど。ま、そこは冗談ですけど。…そうですね、ちょっと、その、何だろう…例えば『ベストライド』にしろ、『YES』にしろ、『リヴェンジソング』にしろ、全部気に入ってるし、自分の中でただガムシャラだけじゃなくて、一歩先に言った曲を書けたと思ってるんですけど、なんかそればっかりになるのもちょっと嫌で。ニュアンスの違うもうちょっとパーソナルな曲にしたいなって作りました。
●凄く詩的な歌詞だなと思って。このまま「詩」としても成立する。
佐々木:ありがとうございます。自分的に唄にもこだわって録ってて。でもワンテイクなんですけど。2回、3回唄って良いヤツをまるっと採用して。だからかなり裸な唄ですね、これは。唄のニュアンスとか、いわゆるドレミファソラシドのブルー・ノート、ミのフラットした音とかラのフラットしたやつ…分かりやすく言うと黒鍵ですね。
●ああ、なるほど。
佐々木:黒鍵と白鍵の更に間の音をブルー・ノートって言うんですけど、ブルースでよく使う音で。ピアノって一個ずつしか音出ないですけど、ギターとかはチョーキングとかあるから自分で音程が選べるじゃないですか?自分が気持ち良い所。唄もそうで、ドレミファソラシドと黒鍵合わせて12平均律って言って12個しか音が無いんですけど、その間には無限に音があるんですよ。その微妙な感じの中に自分が好きな音があって、レとミの間のミのフラットの更に間の音とか。そういうのは意識して唄ったんで。俺の凄い好きな、良い意味でいい加減なところ、が、凄い出てて。だから凄く気に入ってますね。
●佐々木亮介の好きな音色の歌が入っていると。
佐々木:そうですね。ロバータ・フラックとか色々俺の好きな音程感の人がいるんですけど、俺の好きな歌のニュアンスが込められてるんです。
●今こういう形の物を入れられるのも凄いなと。バンドだけど弾き語りとか。
佐々木:俺もそれ嬉しかったんですよ。弾き語りを入れることに、最初ナベちゃんと姐さんはどう思うかなって思ってて。弾き語り用の曲でも良いのかなってソロライブ用の。って思ったんですけど、結局ソロもバンドの為にやってるから、そんな曲存在しないなと思って2人に聴かせたら、「これはこのアレンジがベストでしょ」って言ってくれて。だから3人の意志としてこの曲を出してるからここに入ってるっていう感じなんです。ピアノとの感じも含めて。セクシーなピアノ弾いて下さいって言って。健太さんのエロい所が出てると思います。