a flood of circle 『ベストライド』佐々木亮介ロングインタビュー
INTERVIEW[2015.06.17]
「俺のベストはいつも 今なんだよ」
『ベストライド』は今まで積み上げて来たものの到達した一番新しいものだけど、
作品としては来年の10周年とか一つの目標の一万人ライブとか、もっと未来を見据えた一歩目。

「フラッドの歴史って、出会いと別れだし、愛と悔しさだなって思う」
そう話す佐々木亮介は完全に「先」を見ていて、何度も嬉しそうに
「今、音楽が楽しくて仕方がない」と言いながら笑っていた。
彼は真の音楽馬鹿なんだと思った。こういうヤツは絶対に音楽を裏切らない。
フラッドの新しい一歩を謳う『ベストライド』へのストーリー、全曲解説つき!
●よろしくお願いします!新譜リリースおめでとうございます!
佐々木亮介:ありがとうございます。
●で、その話を聞く前に、色々聞かなきゃいけない事があるなと。
佐々木:また色々ストーリーがね(苦笑)。音楽の話以外の事をしなきゃいけなくて。
●色んな所で聞かれたり話したりはしてると思いますが、電撃結婚・スピード離婚みたいな事が。
佐々木:まさにそうですね。仰るとおり。経緯的には去年11月に『GOLDEN TIME』というアルバムを出しました。で、それを作ってる途中にDuran(デュラン)が入ってきたんです。それで、今年の1月ぐらいから、彼がもう一個やってるバンドで「Made in Asia」ってあるんですけど、そこの事務所と「Made in Asia」の間でシッカリ売り出して行こうって話があったらしくて。それは凄い良い話だと思うんですけど…例えばひなっちさんとかKenKenさんとか、デカイバンドを色々やりくり出来る人もいるから、全然出来るなと思ってたんですけど。結構スケジュールをガッチリ取られてしまうかもって、何ヶ月も。
●あー、それは無理ですね。
佐々木:そうなんですよ。それを、「a flood of circleが待てるかどうか」って話になっちゃて。で、その考え方が駄目だなと思ったのが、バンドメンバーって待つとか待たねえとかじゃないなって。でもDuranが一方的に自分のバンドをとって辞めたんじゃなくて、俺としても何ヶ月も動かないa flood of circleはフラッドじゃない!って自分で判断を下したんですよね、お互い痛み分けじゃないですけど。だからケンカして別れたわけじゃないです。1月にその話が始まって、3月のツアーファイナル六本木EXシアター2デイズやって…で、打上げで改めてDuranをもう一回、口説き直したんですけど、実は。そこでも駄目だなってなっちゃって。それで3月末には脱退を発表して、3人新体制の発表をしたっていう、感じですね、経緯としては。
●お互いのスピード感とか、上手く回せないならしょうがないですし。
佐々木:ライブ出来ないとか、曲作り出来ないとかなら意味無いなと思ったし、Duranは結構色んなバンドを転々としてきた渡り鳥タイプのバンドマンだったんで。逆に俺ってなんでこんなにa flood of circleにこだわってるんだろうって、誰が抜けても止めて来なかったので何で辞めないんだろうって周りが思うっていう(笑)。俺は思ってないんですけど(笑)。
●(笑)。
佐々木:本当にこだわってやって来たし、この看板のまま、武道館に行こうと本気で思ってるんで。ていう、俺の「のめり込み方」をDuranが見てた時に、「俺このままじゃダメかも」って思ったらしい。自分もリーダーバンドを持ってたから、何か一つにかけてガッとやんなきゃ駄目なんじゃないかと、言ってて。俺は結構それがしっくりきたんですよ。ナベちゃん(Drs.渡邊一丘)みたいに俺がガーンってやってるからそれを支えてくれる所にくるのか、器用にやりくりしてやっていくのかって。それは意味が違うし、だからMade in Asiaにかけようと思ったんじゃないかなって。
●佐々木君の本気がDuranさんの本気に火を着けちゃったと。
佐々木:かなりカッコ良く言えばそういう事です。それは結構男らしい判断だなと思ったんですよね。彼もリーダーだから、彼の気持ちも分かってしまったと言うか。そういう意味で、ナベちゃんも姐さん(B.HISAYO)も「しょうがないね」っていうのもあるし、3人はこのまま行くっしょ!っていうのがスグ決まったんで。2人の堂々としてる感じを見て、あ、大丈夫だなって俺も思って。
●じゃあHISAYOさんもナベちゃんもそれを受け入れて。
佐々木:どうにかなるでしょっていう楽天的な感じよりも…今マネージャーが変わったりとか、色々環境が変わってるのもあって、俺自身が、自分でどうにかするしかないってモードになってきてて。それを楽しんでる所もあるし、今まで甘えてきたなっていう気持ちもあるので。
●甘えてきた?
佐々木:前のマネージャーとかね。それは本当にあるんで。だから新しいモードに向かってたし、それを2人が理解してくれてたんで。サポートギター探しが超大変だったんですけど(苦笑)。3人の気持ちとしてはスグ固まりましたね。
●雨降って地固まる的な?
佐々木:まあそうですね(笑)。かなり固まったと思います。雨降り過ぎて土砂降りっていう感じだったんですけど(笑)。
●その中を走っていくと(笑)。
佐々木:あはは(笑)。
●その、周りの反応とかはどうでした?
佐々木:あー、でも、一番嬉しかったのは発表したその日に大さん(Wash?)から「お前らなら大丈夫でしょ」ってメールが来たのと、ソネさん(曽根巧)から、半分ボケなんですけど「よう、アンラッキーボーイ」ってメールが来て(笑)。
●わはははは(笑)。
佐々木:まあソネさんはその後「どうせやるっきゃないんやろ」みたいな応援の言葉をくれて。そういうメールが来た時に、今まで関わってくれてた人達って、「関わってくれてたんだな」って感謝の気持ちばっかり持ってたのが、自分の作ってる音楽とかライブの力とかで皆が「ついてきてくれてたんだ」って、改めて思えて。2人のギタリストの言葉が此処までの道は正しかったんだって言ってくれてる気がして、それで凄い励まされましたね。自分の決意として、このまま行くぞっていうのはあったんですけど、周りの反応で一番嬉しかったのはその2人の言葉ですね。もう、アニキ達ですから。
●じゃあ、今のバンド内の状態と言うか、コンディションは悪くないって事だ。
佐々木:めちゃくちゃ良いと思いますよ、むしろ。それこそフラッドを割と長く見てくれてる人達は「フラッドは行くでしょ」って思ってくれてるような気がして。実際そういう言葉を貰う事もあったし。だからこそ一刻も早くこれ(新譜)を出したかった。新曲を出したかったっていうのがあったんです。
●はい、その気持ちでリリースが決まったのか、それとも元々このタイミングでリリース予定があったのかとか。
佐々木:ああ、元々ありました。6月にリリースするのは去年決めてて。まあ、意味が全然違ったんですけど(笑)。Duranは『GOLDEN TIME』の途中から入ってきてたんで、ツアーやりながら曲作って6月に出そうかみたいなストーリーを考えてたんです。ただ3月に辞めるってなっちゃったんで。実際1月から辞めるかもって話があったから、あんまり、曲作りに対するモチベーションも出なくて。ライブは、『GOLDEN TIME』は良いアルバムだし絶対に良いライブになるから、なにがあってもガツンとやろう、と。その気合はライブで見せられたと思ってるんですけど、曲を作るっていうのは、未来の事を考えて作るじゃないですか?だから、やっぱりツアーの最中には作れなくて。断片的に作ったりはしてたんですけど。で、3月に脱退が決まっちゃったんで、6月のリリースどうしよう?って、レーベル側は考え直しても良いよって言ってくれてたんですけど、「出すでしょ!」って(笑)。
●強い(笑)。それスゲー良いと思う!
佐々木:3月31日に3人で行きますっていうのを出して、写真は信頼するカメラマンの新保さんに撮ってもらって。それを出した時点で新曲を発表したいっていう気持ちがウズウズしてて。何かその、写真も文章もファンの人に向けた物でもあるから、勿論丁寧に考えて作ったけど、一番伝わるのは曲だと思ってるから。当たり前なんですけど。だから6月のタイミングは生かして、曲は頑張って作れば良いんじゃないかって。そっから曲作ったっていう。
●おー。その、アーティストとしての当然の欲として「出したい」だったのか、状況を打破する為にも「出したい」だったのか、どっちが強かったのかなと。
佐々木:ああ、どっちもあったと思いますけど、そうだな…でも、バンドのメンバーの気持ちっていう物があって、此処で良い曲を作れるかどうかがこのバンドの今後にかかってるなみたいなものもあったし。何ていうか、この3人はもう長いわけですよ。2011年からやってるし、オリジナルメンバーよりも長くなりそうなんで。
●あ、そうか!
佐々木:そう、だから、何て言うか…3人の気持ちは結構固まってたから、メンバーが脱退したからっていう状況もありましたけど、それ以上に、この3人でやってきて成長した部分を出したいって考えてたから。そこは結構音楽的に考えてたかも知れないです。
●でも、まあ、何と言うか…打たれ強い?
佐々木:んー、俺、単純に音楽が好きでやりたいだけなんですよ。よく皆に言われるんですよね、「逆境バンドだね」って。確かにそれに対して「負けねぇぞ」っていうのもあるんですけど…今までって1000人、2000人のキャパでしか演ってないっていうのがあるので、一万人のワンマン演った時しか書けない曲が絶対あると思うんですよ、自分で。どうしてもそれを聴きたくて、俺。それがあるから、反骨パワーだけでやってるわけじゃないんです。作りたい曲とか、見たい景色とか、聴きたい曲があるから。そこは純粋な欲望と言うか。ま、確かに逆境だし(笑)別れもたくさんあるんですけど、その分、毎回良い曲書いてる自負はあるんで。だから昔から見てくれてる人は一緒に連れて行くって思ってるし、それは最近自信だと思ってますね。単純に自分がやりたいからやってるっていう。これがメンバーの為とかになってきてたら、出来ないかもなって。メンバーの為だなと思う事も結局自分の為になってるから。
●逆境ではあるけど、「それがあるからコレが出来た」じゃなくて、「それに負けないからコレが出来た」みたいな。
佐々木:正にそうですね。積み上げて来た物でしかないんで、ここでリセットボタンを押したから『ベストライド』じゃなくて、積み重ねてきた物の一番ベストな形がこの曲だったっていう感じなんです。
●はい。3月からって事はかなりタイトなスケジュールで作ったんですね。
佐々木:断片は3月にあったのもあるかな。でも4月に6曲作ってアレンジしてレコーディングしてって感じです。
●今回どんな物を作ろうと考えてましたか?
佐々木:最初に出来たのが『ベストライド』と『リヴェンジソング』だったんですよ。
●なるほど(笑)。
佐々木:もう、明るい曲だったんですよ。それって、明るさをテーマにしよう、とも言ってなかったんですけど、自分の中から自然に出てきちゃったんですよね。「土砂降りの中を走ってゆけ 記録を塗り替えるんだ 今日こそ」って歌詞がまずあって、それが出来た時に「あ、コレいけるな」って。で、ナベちゃんと2人で最初セッションしたんですけど、ギターとドラムだけで。その時に自然と明るいキーで曲を作り始めて。それは『Golden Time』って曲の反動も多少はあったと思うんですけど、『Golden Time』がストイックな感じの曲だったんで。今まではマイナーキーの曲多かったし、ここらでスカッと明るい曲欲しいなっていうのと、今思うとDuranが脱退したっていうネガティブなニュースに対する答えだったかも知れないし、どっちもあったのかな。『ベストライド』と『リヴェンジソング』が出来た時に、コレいけるなっていう感じがしたんですよ。
●じゃあその2曲を軸にして6曲を作っていったと。
佐々木:そうですね。基本的にあんまりコンセプチュアルなアルバムにしようっていうのは無かったんで。単純にこの3人で出来る、ベストなシングルみたいな曲を6曲入れる。6曲ともめちゃくちゃ良い曲が入ってる。あんまり似てる曲をやりたくなくて、全部キャラ立ちしてて、幅がちゃんとあるって言うか。フラッドの幅全部見せます、くらいの事をやりたかった。だから強いて言えばそれがコンセプトかな。
●今のフラッドの幅を見せる、と。
佐々木:そう、幅、全部見せ。あとあんまり重くしたくなかったっていうのもありました。もっと更に、ギトギトに濃い6曲も出来たとは思うんですけど、例えば『Trash Blues』をバンドアレンジにしたりとか、もっとエグイ泣かせ方しようとか(笑)も、あったかも知れないんですけど、そうじゃなくて…この写真もPVも青空の下なんですけど、そういうスコーンと抜けてる感じ?軽快な感じって言うか、“今楽しいんですよ、俺達”っていう(笑)アルバムを皆さんに渡したかったっていうのはあります。『ベストライド』が出来た時に、明るい曲は自分の中で新鮮だったし気持ち良かったんで。「軽さ」は結構テーマにしてましたね。