つばき『真夜中の僕、フクロウと嘘』インタビュー
INTERVIEW[2014.09.09]
●歌詞は今回苦労したそうですが、それはその休止から復活までの事を書くことについて、だったんですか。
一色:うーん、やっぱり自分が病気をして、入院して、活動休止をして、復帰して、新しいアルバムを出すんだったら、自分もそうだけど周りの皆もどんな曲書くんだろう?とか思うじゃないですか。そこでイキナリふざけた曲は書けないじゃないですか(笑)。それと、それに関して全然触れないっていうのも違うし。
●ああ、ワザとらしくなりますよね。
一色:そうそう。バカみたいな曲書いても良いかもしんないけど、まあ別に俺らそういうバンドでもないし。ちゃんとそのことについて書かなきゃいけない、ミュージシャンだから歌詞で触れなきゃって。だからそこでの迷いとか葛藤はありましたね。どういう風な言葉でいこうか、直接書いたほうが良いのか、オブラートに包んだ方が良いのか、表現の仕方もどうしようかなって。『日々の扉』で、結局俺はそういう書き方しか出来ないんだなって思ってからは、ちょっとずつ曲が書けるようになって。これでいいか、って。…休止してた期間の事も表現したいなと思ったし、待っててくれた人達に聴いて欲しいなって思うし。でないと納得しないよな、自分も、って。そこで言葉を見つけ出すのは大変だったけど。だから色々書いてはボツにして、今の感じが一番良いなって。
●その『日々の扉』はいつくらいに出来たんですか。
一色:…一番最初からあったんじゃないかな。今作は過去の曲もあるんで出来た順番とかだとあれだけど、アルバムを象徴する曲って事ではこれが最初に出来たかな。これを作ってから、色んな曲を、新しい曲を作り始めたっていう感じですね。
小川:つばきフレンズに向けて曲を書いてた時くらいから原型はあったと思う。2012年?11年?今の形とは違うけど、核になる部分は。
●今回の曲作りについて、曲を形にしていく作業はどんな変化がありましたか。
一色:俺はギターが弾けなくなったから、今まで弾き語りで作ってたのが出来なくなって、家でパソコン使って作るようになったのが一番変わった事で。昔はスタジオに入って、弾き語りの段階で聴かして皆でセッションしながらアレンジして決めていくっていうやり方だったんだけど、今は弾きながら歌って聴かすっていう事は出来ないから、パソコンで打ち込んである程度のアレンジまで決めて。例えばこういうキメをしたいとか、大まかなアレンジまで決めてメンバーに聴かせて、各々でまたアレンジしてもらうっていう感じですかね。
●はい。曲の出来方なんですけど、メロがあってそれに伴って歌詞や世界観を作っていくとか、書きたい事があってそれに向かって歌詞の全体とメロディを書いていくのかとか、どんな風にしてますか。
一色:うーん、でもまあ、大体は曲を作って…大体俺は毎回そうだけど、メロディが出来て、それに何か一行書いて、そっから書いていく、どんどん膨らましていく感じだから。勿論曲によって違う時もあるけど。基本は、こんな曲書きたいなと思ってメロディとかアレンジとかやっていく。だから書き方とかは変わってないよ。技術的なところは変わったけど、メロディがあって歌詞を付けていく作業は変わってないし。書き出して、そこから自分の気持ちを言葉にしてる感じ。
●では今回新しく挑戦したことはありますか。
一色:さっきのもう一回言って良いですか?(笑)
小川・おかもと:あはは(笑)。
一色:新しい挑戦は、まず「俺はこういう感じにしたい」っていう大まかなアレンジを決めて持っていけることは今までとは全然違うことで。『フクロウ』みたいな曲を作ったとしても、この曲はキメが結構多いけど、昔だったら3人で話し合いながら作ってたと思うんですね。でも今回はこういうキメありきで作っていって、2人に聴かせて、出来上がっていく感じが新しいかな。大元の部分がシッカリ作れるのは良かったかな。昔だったら、なんとなく作って何となく合わせてしまう事もあったけど、今は、自分である程度アレンジを作り込んでから曲を聴かせられるようになった事かな。
●おかもとさんはどうですか?
おかもと:今までとはアレンジの仕方が変わってるんで、初めそれに慣れなくて。その感覚を掴むのに初めは必死で、よく分かんないな、掴めないなって思うことが多かったんですけど……今までよりも更に歌を聴くようになったかなっていうのはありますね。メロディを初めにデモで貰ってるから、歌のラインが凄くハッキリ分かるんで、歌にもっと寄り添うように挑戦しました。更に寄り添えるように。
●小川さんはどうですか?
小川:そうですね、新しいかは分かんないですけど、ギターが2人いた上でアレンジしていくっていうのがまあ、今まではやってこなかったんで。曽根さんがサポートで入ってた時期もあったんですけど、あくまでもサポートで、リズムギターは一色が弾いてっていうアレンジの仕方だったんで。なんか、今回はギタリストが2人居るみたいな。
一色:確かにそうだね。今まではライブも3人で演ってたから、俺も3人で演れるようにギターアレンジしてたし。今回はギタリストが2人居る前提でアレンジしてるからそこも違うかもね。パソコンで打ち込む段階から2人いるイメージして。
小川:だから今までのつばきの歴史の中でも、挑戦したアルバムなのかなって。
一色:あとは、俺がアレンジで挑戦したのは、ギターが弾けなくなって一番自由に使えるのは自分の声だから、コーラスワークで何か出来ないかなって。『夜を泳いで』とかはギターで弾くような処なんだけど、声でリフみたいにしたり。それとか挑戦したところかな。
●では今回のレコーディングで楽しかった事は?
一色:俺は、凄い久しぶりにレコーディングしたから、普通に楽しかったですけどね、やってるだけで。あと「久々にこの空間でレコーディングしてるなあ」っていう実感もあったし、そういうのは楽しかった。
小川:楽しかった事…レコーディングで始めにドラムとベースから録って、後からギターとか重ねるんですけど、今回2日間で11曲録ったんですよ、ドラムとベースは。
●え?本当に? た、大変でしたね。
一色:(笑)
小川:始めは出来んのかな?とか、別に後ろに漏れても良い日程でやってたんですけど、なんか、途中からコレ行けんじゃね?っていう感覚のペースで進んで行って。なんか(笑)それが達成できた時は結構楽しかった(笑)。
おかもと:(笑)たぶん一番、早かったですね。今までのレコーディングでは。
小川:そうだね。
おかもと:ドラムもテックさんに入って貰ったんですけど、サウンドも一緒に遊んで作ったりとかして。音色も挑戦してみたりして、それによって、自分の叩き方もちょっと変わったりするんですけど。それが何か面白かったですね、私は。凄いドラム個人的な所から言えば(笑)。サウンドの変化が凄いいっぱいあって。(※テック:各楽器専門の技術者)
●じゃあ2日間で大変だったけど、達成感も楽しみも詰まったレコーディングで。
おかもと:楽しかったですね。フフフ(笑)。
小川:(笑)。

●ではアルバムタイトル『真夜中の僕、フクロウと嘘』に込めた意味を教えてください。
一色:真夜中っていうのは、やっぱりその、俺の感覚では自分が一番素直になれる時間だと思ってるんで。皆寝静まって、静かになって、自分に向き合える時間帯。そこで自分は曲を書くことが多くて。これは自分と向き合って書いた曲達だしね。フクロウっていうのは夜行性の鳥だし、自分と重ね合わせて。嘘は…やっぱり世の中は嘘が多いし、原発にしたってそうかも知れないし社会の中は嘘に溢れてるし、でも、それと同じように自分に対して色んな嘘をついてると思うんですよ。「俺は大丈夫だ」って何回も言い聞かせてきたし、そういう、自分を奮い立たせる嘘もあるだろうし、ヘタしたら今まで書いた来た曲も全部奇麗事で嘘って言ったら嘘になるかも知れないじゃないですか。でもそれは自分に対してはポジティブな事を書いてるし。そういう意味では若干の作り事を混ぜながら書いている。嘘も単純に悪い物だけじゃないし、誰かのためにつく嘘もあるだろうし。そういう気持ちを込めてタイトルにしました。
●はい。音源を聴くまでは全曲解説をお願いするつもりだったんですけど、このアルバムはもう聴けば分かる、伝わるなと思ったので、全曲コメントではなく、お一人ずつ、特に思い入れのある3曲を上げてもらって、コメントをお願いします。
小川:え(笑)。
●勿論、全部に思い入れはあると思いますが!あえての3曲を。どんな切り口で選んでいただいてもかまいません。選ぶ曲がかぶっても良いので。では小川さんから。
小川:そうすね…思い入れ? 『日々の扉』と…『肝心要』、この『肝心要』って結構古い曲で、もう何年前だろ?
一色:何年前だろうね。7年ぐらい前じゃない?
小川:もっと前じゃないかな。
一色:7、8年前か。
小川:うん。曲出しをして、ほぼ今の形になってた状態だったんですよ。
一色:今回ちょっと変えたけどね。
小川:ちょっとファニーな感じの曲で、中々出すタイミングも無かった、思い出すこともなかった感じ(笑)なんですけど、その(笑)、覚えやすいというか、一度聴いたら忘れられない感じはあるんで。一度聴けば思い出す。そういう意味では長年の積み重ねと言うか、古い曲なんで思い入れはありますね。あとは『フクロウ』ですかね。思い入れ…思い入れっていう言い方が難しいですね(笑)。新しい曲が多いし。
●あーすみません。「思い入れ」が枷になるなら、ストレートに「3曲選ぶとしたら」で。3曲目は『フクロウ』で良いですか?
小川:そうですね、やっぱり。今までのつばきの曲っぽくもあるし、でも新しい感じがあって。なんか、活動休止して、復帰後の新しい「かたち」みたいな物が見せれたのかなって。そういう意味でも『フクロウ』で。あとさっき言った『日々の扉』は、一色が退院してから作った曲だから、初めての曲に近い、思い入れがある曲ですね。感慨深い。
一色:感慨深いね。(←満面の笑顔)
●めっちゃ笑顔ですね(笑)。では次はおかもとさんお願いします。
おかもと:私は『夜を泳いで』で(笑)。これは、つばきが復活してから、SE(ライブで登場する時の音楽)を一色が作って…昔も自分でSEとかを作ったりしてたので、SE作ってって言ったらこれが出来てきたんです。出来た時に何か凄く一色っぽいなと思って、それをちゃんとレコーディングして曲として形になった物がアルバムに入ってるんですけど。コーラスもSCARLETの林束紗ちゃんに入れてもらったりして。それも凄い新鮮だったし、後半激しくなる所が私自分で気に入ってて、凄い好きです。これ聴いててあがるなと思って(笑)。あとは、『肝心要』が、何年も前に出来た物と基本的なアレンジとかは変わってないんですけど、私がコーラスでサビでずっと歌ってて、それも凄い、レコーディングしながら楽しいなって思ってて。こういう感じのコーラスあんまりしたことなかったんで、歌ってて楽しかったですね。結構…私このアルバムの中でこの曲が一番好きかも知れないです(笑)。
小川:そうなんだ(笑)。
おかもと:ヘンな曲なんですけど(笑)。
小川:後半、4/4が12/8になるリズムとか、あそこは昔はそうじゃなくて。今回アルバムに入れるときにアレンジし直してそうなったんで。確かにああいう感じはつばきはやってこなかったし。
おかもと:自分も凄い聴いてるんで、全曲。スッゴイ聴いてるのに、聴いてるからこそなのかも知れないですけど(笑)、ちょっと変化球を求めてる気分なのかも(笑)。あと一曲は、これもかぶっちゃうんですけど…『フクロウ』で。やっぱなんか、潔くて好きですね。ドラムのアレンジもプレイも結構、自分で気に入ってるんで。なかなかこう、一番この曲がアルバムの中で攻めてる曲だと私は思ってて。ロックと言うか、かなり攻めてる。
●確かに。この曲がアルバムの一曲目にある事がまた攻めてると思います。
一色:(笑)。