ジョセフ・アルフ・ポルカ『ジョセフ・アルフ・ポルカ』インタビュー
INTERVIEW[2013.10.12]
(収録曲)
●なるほど、録音はそういう感じだったんですね。アルバム収録曲の選曲はどうですか?
て:前に出した『空からやってきた緑の三本指』はCDRだったけど、気持ち的にはあれがファーストアルバムっていう意識もあったので、あんまり、あれをちゃんと録音した盤にはしたくなかった。同じ曲も入ってるんですけど、アレンジが大分変わった曲しか入れてないんで。
西:そうだね。
て:前の音源に入ってる、よくライブでやってる曲が、今回入らないのはどうかとも思ったんですけど、今ライブでやってる感じを出したかったので、アレンジが前に録音してから変わってないのは入れないでおこうと思って。わりと、今やってる感じがそのまま音源になったかなと思ってます。
●名刺替わり的な、今のジョセフがわかるような、ということですね。
て:そうですね。やたら短い曲ばっかりになっちゃったけど。
●ちゃんとした音で録音されたものを聴くのが初めてなので、衝撃というか、嬉しかったですね。なかなか頻繁にはライブも観れるわけでもないですし。アルバム買った人も、ライブ観たことない人が多いでしょうね。名前だけ伝わってる部分が多いのかな、って。このアルバムを聴けば、バンドの実態が伝わるんじゃないかなと思います。
て:そうですね。そういう意味では、わりと、出して恥ずかしくない感じにはなったかな、って思います。
●そう思います。では、アルバム収録の各曲コメントをお願いします。

■街の灯
木:ベースはずっと同じことしてるだけなので、特に何もないです(笑)
原:何かで、野性的なドラム、って書かれてて。面白かったです(笑)
て:書いてあった!
原:『街の灯』は、最初てんしんが作った時から、歌詞がすごく好きで。一回目に聴いた時から、すぐ頭に入る感じで、いいなと思ってた。叩いてる時も、単純だけど、楽しいです。
西:レコーディングの時のアイディアで、アウトロでギターが二本になってるんですけど、ライブの時に、どっちつかずのフレーズを弾くようになった、っていう弊害が…。
●どっちのフレーズを弾くんだ?って。
西:で、聴き直しても、重なってるからよくわかんない(笑)
て:この曲は、元々はインストで作った曲が別にあって、それをカラオケみたいにして、歌を強引につけたのをソロ音源に入れたりしてました。新曲ができなくて色々試してたんですけど、この曲いけるんじゃないかな、って試しに弾き語りしてみたら、一日でほぼ完成形みたいになって。出来ない時は全然曲できないんですけど、これはすっきりできました。
●でも、曲作るペースすごく早いですよね。
て:今日も二曲くらい作ってきたんです。作るペースは早いんですけど、どんどん捨ててます。残る曲が少ない。ライブでやってみて、これはダメだな、と思ったら没にして。
西:そうやってふるいにかけてるんだな。

■ステップを踏んで
●曲を作る時って、どんな感じなんですか?てんしんさんが大体作ってきて、バンドで練るとか?
て:僕が詞と曲と作って、キーボードとかで弾き語りしてる感じのものを持っていって、大雑把に構成決めてバンドであわせてから、細かいところをアイディア出しあってつめていく感じです。
●なるほど。
て:二年前くらいによく作ってた曲は、ブロックにきっちり分かれてる、どんどん展開していく曲が多くて、一曲目から三曲目はその時期の曲です。最近はストレートに、あまり展開しない曲が多いです。この曲は、一番極端に展開がある曲ですね。途中のコーラスのパートは、思いっきりコーラスだけでやろうって決めてやりました。皆でコーラスだけ練習する日があったりとか。
●ジョセフ・アルフ・ポルカの曲の構成について評価している意見、前に何人かから見聞きしたことありますよ。
て:それは…嬉しいですね。
西:あと、これはバイオリンが入って華やかになりましたね。
て:そう、カントリーっぽい感じ。
木:普通の展開になりかけるのを、嫌がってたよね、てんしんは。ギターロックぽくなるのとか。そういうのに対する照れみたいのが強いんだろうね。
西:そうだね、かたくなにね。
て:始めた時からずっとそうなんですけど、僕らなんかが、普通のバンドをやるっていうのが…普通のエイトビートに、2コード3コードくらいで音楽をやるってことへの違和感がめちゃくちゃあって。なんというか、自然じゃないというか。でも、逆に最近はそういうのが楽しくて(笑)そういう曲もやれるようになってきました。
●そういうのって、ジョセフを聴いた事のある人からすれば、ストレートな曲をやるジョセフに違和感だったり、新鮮さを感じたりするんですよね。バンド側も新鮮なことやれるのは良いことだと思うし、聴いてる方も、それが普通か普通でないか、よりもそのバンドにとっての普通か普通でないかを感じてると思うんです。ふれ幅は大きい方が、演者観客、どっちも楽しいなあと思います。
西:なるほど、確かに。
木:かといって、ただシンプルな曲で、間奏を引き伸ばして、ソロを弾く、とかそういうのは出来ないですね。アウトロを長めにとって、ジャムセッション的な感じでやってみようか、って練習でたまにやるけど、それはできない。
て:できない。すっきり終わらせたいっていうのもあるし。なんか間がもたない。
西:なんでだろうね。俺が俺が、みたいにならないからかな。
て:このバンドでしか音楽やったことがなくて、どうしたらいいかわかんない。わかんないなりに、やっている、っていうのが、音楽性に繋がっていってるので。普通のエイトビートの曲もやっとわかってきてやれるようになったから。アレンジとかも、その都度わかるようになって、変えていく感じなので、最初の頃から大分変わってるね。

■海岸線
●この曲の繋ぎ、いいですよね。
て:これは歌詞が対になってて。『ステップを踏んで』は海に向かう曲で、『海岸線』は海から人がくる曲で。二曲セットなんです。
西:へえー。
●舟に乗り込んだ人たちが、海岸線を跨いでやってきた遠くの人なんですね。
原:おおー。
木:歌詞の内容は、移民問題とか?
て:『海岸線』は黒船だね。
西:ええー!
原:てんしん、昔環境問題とかの歌も作ってたよね。政治に関してのテーマで作品作ることが多かった。何かしら入り込んでる感じ。
て:最初の頃はすごく考えて歌詞書いてて。
西:面白い。
原:この曲はドラム叩いてて一番楽しいです。一番叩いてる!って感じする。ちゃんとドラムの役割してる感じ(笑)
西:へえー。これもズンドコしてるしね、途中。
て:この曲が、アルバムに入ってる曲の中で一番僕らっぽい感じがしてます。なんなのかわからない感じというか。のれるのかのれないのかわかんない感じというか。やっててもよくわからなくて。
●ポップだし、構成がそんなに複雑なわけでもないんだけど、全体としてみると、よくわからないというか、つかめない感じ、ですかね。
西:ああー。
●でも、どの曲もそんな感じします。なんというか、どうとでもとれるというか…。
西:(笑)これ、どういう時に聴くんだろう。音楽携帯するようになって、あ、今この曲聴こう、って聴いたりできるけど、今『海岸線』だな!っていつだろう。女の子を助手席にのせて、海に向かう時にかかったら、え、これなに?ってなるよね。
て:サマーアンセムだ(笑)
木:なんで?って聞かれるね。
西:後日、聞かれるね。ケンカになった時に、あの時だってさあ、私が車に乗った時に変な曲かけたでしょ!って言われる。別れの原因になるね。
て:つらい…。
全員:(笑)
木:なんで黒船なの?歌詞についてメンバー間で特に意味合いを聞くことってなかったね。
て:これを作った時は、常に社会的テーマを考えてて。黒船は、現代においても、海外からの文化の入り方が気になってた時期だったから、テーマにした。
西:ふんふん。
て:別に時代背景は昔じゃなくて、今だけど、昔と同じように海外の文化を色眼鏡で見てる人達を、この時はテーマにしたかったんじゃないかな。
●なるほど。そういえば、色んな曲で、キーワードというか、テーマが共通してる感じがしました。どこか知らないところに行く曲が殆どだな、と思ったんですが。
て:ああ、そうですね。
●登場人物がいるとしたら、皆結構ポジティブに、どこか行こう、って行動してる気がして。でも、その行く先は全く見えてない感じがします。それが、不安さも感じさせるけどすごく面白いなあと。
西:そうですね。
木:俺の分析だと、よく世の中の事がわかってない子供目線の歌詞で、でも書いてる本人はそういう事はわかってて書いてて。子供の視点から描くことで、直接的な社会批判にならないようにオブラートに包んで、かつ、ちょっとファンタジックな雰囲気も出る、みたいなところを狙ってるのかな、と分析をして見てたんですけど。
て:なるほど。そう考えるとそうかもしれない…(笑)
木:今初めて本人に言いました(笑)
て:ちょうど次の曲が、そういう感じです。

■フライングマンの歌
て:これは、TVゲームのMOTHERに出てくるフライングマンっていうキャラをモチーフにして作った曲で、別にMOTHERの世界の話ではないんです。でも、フライングマンの目線で世の中に対する想いを書いた曲です。
●やっぱり、何かの目線を借りる感じなんですね。
西:うんうん。
て:あと、この時は基本的に、文明が終わったけど、意外に平和、みたいな感じの文明の終わった世界を書きたくて、。あんまり人間が出てこなかったりして。途中から、もうちょっと自分よりの曲を書くようになったんですけど。
●なるほど。
西:途中のキーボードとかギターが早く弾く部分は前から変わってないよね。
て:うん。
西:そこを最初に練習してた時は、本当に大変でした。
て:そう、一番難しい曲で、こないだ練習でやったけど、うまくいかなかった。一番長いことやってる曲なのに、なんかしっくりこなくて。レコ発でやるか迷ってる。この曲がネックです。
●やりましょうよ(笑)
木:イントロが難しいかな。
て:ブロックごとに分かれてるから、一曲通した感というか、アレンジの着地点が見えなくて。
西:これからも、アレンジとか動く曲かもしれない。
原:まだいじれそうな感じがする。
て:悩みの種だね。結局最初がよかった、ってなりそう(笑)

■ダンスフロア
て:僕らが大橋裕之さんのマンガ「シティライツ」にキャラクターとして載った時に、そのお返し的な曲を作ろうと思って。あんまりそれを前面に出すのも恥ずかしかったので、こっそり作ろうと思って、結局誰にもそういう事は言ってなくて。「シティライツ」を読んで感じた事も、曲に繋がってます。ちょっとロマンチックな感じだけど、ちょっと寂しい感じというか。そういうテーマがありました。
木:この曲を作ったあたりから、かなりポップなメロディが出てくるようになった。
西:うん。一時期頭の中離れなかった。
て:このあたり、バラードばっかり作っちゃって(笑)あんまりバンド向きの曲ができなくて、新曲がない時期が長くて、久しぶりに出来たのが、一曲目の『街の灯』だったような。
●そうなんですね。ライブで、この曲の時にミラーボール回ってほしいですね。
西:是非、ですよね。
て:今までファンタジーというか、架空の世界について歌ってたけど、ダンスフロアも、クラブとか行ったことないから完全に自分の妄想の世界でしかなくて。
原:聴いてても、ダンスフロア自体の描写がないというか、絵が頭に浮かばないというか。いわゆるクラブとかそういうのじゃなくて、全然違うイメージ。
西:頭の中でクラブ寄りの絵に持っていこうとするけど、てんしんが歌ってるから、ステージにてんしんがいて、そうなると、どこここ?ってなる。何のお店なの?って。
原:ソファーみたいのがあるイメージ。
●はっきりしたものが思い浮かばない方が、皆色々勝手に考えるというか、妄想が捗るから楽しいですね。皆がそれぞれ違うイメージを持ってて、アルバムのアートワークで色んな人が色んな絵を出してきたのにも、繋がってる感じがしますね。
原:そうですね。私、最後の、昨日ひらめいて作ったタイムマシンに乗って、ってところがすごく好き。
て:ああ、それは完全に「シティライツ」からとったところ。
木:てんしんがひらめくんだよね。
原:あ、そっか!
木:『街の灯』も、「シティライツ」とタイトルがかぶってるね。
て:でも『街の灯』が出来た時は、まだシティライツ知らなくて。後で気がついた。
西:なるほど。

■タイムマシン
て:これは、完全に僕の宅録で、今までに作ったデモと同じやり方で、キーボードとパソコンに向かって作りました。それを全部データを島田くんに送って、ちゃんとミックスしてもらって。『ダンスフロア』と『ボロの靴』の間にワンクッション欲しいと思って、最初は『ダンスフロア』のアウトロを長くして、『ボロの靴』に繋がるように考えてたんですけど、やってたらだんだん違う曲になっちゃって、そこからトラック分けして。時間がなくて、僕の完全なソロみたいになっちゃったんですけど。
●『ダンスフロア』の最後に出てきたタイムマシンから繋がってると。
て:そうです。

■ボロの靴
て:この中で一番古い曲で、一番最初のCDRにも入ってて、そこからアレンジも変わりに変わりました。最初の頃はめちゃくちゃテンポ遅かったんですけど、パンクっぽい早いビートでやってみたら、意外としっくりきて。結構、未だにやってて楽しい曲で。
西:うん。ヘッドフォンでしっかり聴いてほしいんですけど、聴きどころは、間奏に木曽くんのシャウトが入ってます。
て:曲調がくらーくなるところで、レコーディングの時に、ここでシャウト的なものが入ったら面白いんじゃないか、ってなって。
木:後から録って重ねたんだよね。
て:何かのケースをかぶって、それにマイク入れて。
西:スネアのケースかな、内側がボアになってる。
木:島田くんの家は普通にマンションだったから、騒音を気にして。
西:騒音問題もあるから、てんしんが、叫んでる風でいいんじゃない?って提案したら、木曽くんが、やるからにはちゃんと…中途半端には叫べない、って真顔で言って。
木:(笑)
西:だから、ケースをかぶせたんです。
て:めちゃくちゃ叫んでたね。結構長い間。
木:途中で息切れして。
西:よく聴かないとわからないので、是非。
木:あと、間奏のギターにディレイがしょわわーってかかってるんだけど、それはスタジオで録音したときに、西村くんが弾いてるところで俺が足元でディレイをいじってました。
西:共同作業ですね。僕はヘッドフォンしながら弾いてて、終わるタイミング、木曽くんはわからなくて。
木:ちょっと早く終わらせちゃって、急いで戻してて。よく聴かないとわからないけど。
西:いいのが録れました。
て:この曲が、一番録音楽しかったかも。
西:確かに。
て:この曲もバイオリンが入ってて。亀谷希恵ちゃんは同級生で仲良くて、同級生の中では、貴重なライブに来てくれる人でした(笑)本当に普通に好きで来てくれてて。一時期東京の大学の大学院に行ってたから、東京のライブにも来てくれてました。シャムキャッツとか、東京のバンドもすごい好きで。それでバイオリンお願いしようってなりました。
●そうなんですね。
木:この曲の歌詞はちょっとテイストが違うよね。私小説的っていうか。四畳半の香りがする。。
て:最初の頃のほうが詞が渋かったんだよね。
木:結構個人的な、青春を感じるというか、学生時代の情景…住んでたボロいアパートとか、アパートの近くの本屋さんの飼ってる犬が、通る度に吠えてきたりとか。遊びに行く度に吠えられる。それだよね。
て:もう忘れてたし(笑)
木:本当ににボロボロの靴履いてたし。貧乏学生の匂いがある歌詞だよね。時代を感じる。
原:ほんと靴ボロボロだったよね。
て:靴も買えなくて。最近はちょっとマシな靴です。