音速ライン
『from shoegaze to nowhere』(フロム・シューゲイズ・トゥ・ノーウェア)インタビュー
INTERVIEW[2013.10.05]
■M.08 東京
藤井:東京の、渋谷とか歩いてる人ってさ、純粋な東京人ってそんなにいないんじゃないかなって。
大久保:あー、半分以上そうだね。
●確かに、2/3はそうでしょうね。
藤井:ね。それでみんな、夢を持って東京に来てるわけだから。
大久保:でもまさか藤井さんが『東京』ってタイトルを付ける日がくるとは。
藤井:うん。東京に明日の夢を見させてくれよって、俺が書くことじゃないよね(笑)。
●わはは(笑)。でも、今回はあえて書いているってところで。
藤井:俺の気持ち的にもあったんだけど、今まで東京嫌いだって言ってたけど、地元がいろんな事あったりして、そんな悪いところでもないんじゃないかなって思い始めた自分も居たりしたときに、ワンフレーズが出来て。ただ、俺の気持ちを100%書くっていうよりは、東京に夢持って出てきて、どういう気持ちで東京で頑張ってんのか、どういう人が居るのかって処を書いてみようかなと思って。何かさぁ、優しい人ってさ、優しすぎると時々見えなくならない?
●あー。喜怒哀楽が見えないと人としての印象が薄れるのかも。
藤井:あんまり優しすぎると。毒が無さ過ぎてさ。
大久保:うーん。
藤井:何て言うの?この、答えをいつも探して歩いててさ、東京って凄く流されやすくて忘れやすい街じゃない?そういう中で色々迷って時間だけ過ぎちゃって。両親とかに「お前帰って来い」とか、絶対なると思うんだけど、本気だったら本気な程、何にも言えなくなると思うんだよね。適当な言葉言えないじゃん。こういう人いっぱい居るんじゃないかなって。でも、何にも言えなくなったくらい本気なんだから大丈夫だよって事を言いたかったんだよね。
●なるほど。良い歌詞ですね。ちなみに何で東京イコール渋谷になってるんですか?
藤井:それは歌詞が浮かんできた時に渋谷AXに居たから(笑)。メロディ自体とかは地元で書いてるんだけど。曲のアイデア自体は渋谷のど真ん中(渋谷AX)でね。
●はい(笑)。あと、13ていいう数字はどこから?
大久保:去年の『Alternative』のツアーの、13本目が渋谷AXだったんです。
藤井:一番最後の13ヶ所目で。これ即興でやった曲が元なんだよね。だから「渋谷」なんです。
●音が凄くキラキラしてるし。
藤井:そうだね。これもトオルさんにエレピ弾いてもらって。すげーいい。

■M.09 ゆうれい
藤井:これも、さっき言ったけど、避難しなきゃいけなくて、元居た場所にも戻れなくて、何年先になるのかなって、行き場所が無いじゃない?新しい場所でもそうだし。拠り所の無い感じ。それって「ゆうれい」っぽいなって。成仏出来ない幽霊といっしょだなって思った時に、「幽霊か…」って悲観するんじゃなくて、じゃあ幽霊の良い所って何処だろうって、発想の転換をして。幽霊って足が無い変わりに飛べるしな、で、何処でも行けるじゃん、テレポーテーションも出来るじゃんって(笑)。
大久保:テレポーテーション(笑)。
藤井:幽霊もまんざら悪くないなって、ところで。
大久保:逆転の発想ね。
藤井:そう。ただ、幽霊になるって決めたら、それは腹を括って幽霊にならないといけないから、そういう時は迷わないで行こうよって。そうしないと、ゴーストにはなれないよって。
●ん?
大久保:なんで英語になっちゃったの?(笑)。
藤井:ん?(笑)。ほんと、迷うこと無いよって。迷って決めたことはしょうがないし。避難した先で、発想の転換してさ、もうそれを楽しんでいく方法にしていかないと…中々難しいけど、プラスの方向に持っていかないとやられちゃうからね。
●そうですね。これ、始めは僕らはゆうれいって言ってて、最後にはそこから離脱していくじゃないですか?
藤井:離脱ね(笑)わかる。だから一皮剥けて、ゆうれいじゃないものになってるんだよね。
■M.10 Bye Bye Blackbird
藤井:これは、アコースティックツアー用に作った曲で、俺よりも大久保が反応してて。
大久保:アコースティックのリハーサルをやってたときに、藤井さんが何となく弾き語ってたんですよ(笑)。完全に釣られましたね。
藤井:一本釣り(笑)。
大久保:アコースティックでやってたのとは全然違うんですけどね。最初東京で、それ以降の2ヶ所目から、もっと落ち着いたアレンジにしてたんですよ。
藤井:確かに変わったね。
大久保:そう。最初は結構アッパーでやってたんですけど、何にもリズムも無くして。
●じゃあツアーに参加してた人も聞いてビックリするかも?
藤井:うん。驚くんじゃねぇかな。
●音的にはこれも90年代っぽいですね。
藤井:そう、渋谷系の。あの時代の音を入れたかったんで。
ホーンとかも含めてね。シンバルズとかフリッパーズギターとかね。あのへん。やっぱり良い時代だったし。
大久保:確かに。
藤井:今の若い子にも、こういう音の世界観もあったんだよって聴いて欲しいし。引き継ぎたかった。
大久保:ホーンの感じとかそうだもんね。
藤井:パパパってね。
●当時はパパパーの文化がありましたよね。渋谷系とかアノラックとか。
藤井:今は誰もやってないよね。カジ君(カジヒデキさん)くらいかも。
この間会った時、むちゃくちゃ良い人だったんだよ。
●おー。はい。歌詞的にはやっぱり切ないですよね。
藤井:うん、これは合宿所のオーナーが一押しだったね(笑)。
大久保:一押しだった(笑)。アレ良かったよ、藤井君、って。
■M.11 Beer can
●では、11曲目…(笑)。
大久保:やっぱり笑っちゃいますよね、これ(笑)。
藤井:ビールカンね(笑)。これ、「can」は缶と感の他に「Can」(出来る)で、ビールが出来ることも入ってるの(笑)。
●おー(笑)。これは何で入れることに?
藤井:俺らさ、普段こうやって話してるとさ、こーいう人達じゃん?
●はい、そうですね(笑)。
藤井:そういうのを分かって欲しかったって言うか。で、プラス、今回のコンセプトとして、ライブに来てもらって楽しく帰れるっていうのにしたかったから、皆で分かりやすく乗れる曲入れちゃおう!って。で、最初のプシュっていうのを、録ったら、あまりにも良い音過ぎて俺笑っちゃったの(笑)。
●わははは(笑)。
藤井:それをオサムさんがそのまま入れて。
大久保:ははは(笑)。まあ、あれ笑っちゃうよね。
藤井:誘い笑いになれば良いかなって。全部バカらしくなっちゃうくらい笑ってもらえたら。
●笑いって伝わりますからね。先日のLoftのライブで披露してましたけど、皆普通に歌えてましたよね。飲めば飲むほど強くなる(笑)。
大久保:わははは!
藤井:あんなね、聴いた事もない曲をね、皆唄えるんだから凄いよね(笑)。
大久保:2回もやったし(笑)。
●途中で語りも入ってますよね。
藤井:そう、それをね、ツアーはお客さんにマイク預けてやってもらおうかと思ってて。言いたい事を言い終わるまで俺等ちゃんと尺を伸ばすから、長い事喋っても良いし、何人かにマイク回しても良いし。
●楽しそう。これ、最後にビールもう一本開けてますよね?
藤井:そう、一本じゃ終わんない。
大久保:そう、一本じゃ終わらない(笑)。最後リズムにくって入る感じもいいんですよ(笑)。


■M.12 彼女といえば
●そして、最後がこの曲ですね。
藤井:これ、音の世界観が凄く好きで。あんな音のギター入れたのは初だよね。
大久保:ファズね。これはタイトル通りですよね。
藤井:意味合い的には、気付かないけど、いつも隣に居たな、あの人、とか。そういうのを思って…見えにくくなるからさ、当たり前に居るとね。そういえば要所要所であの人が居たな、とかね。ちゃんと分かって生きてたいなって。これで一番深いのは、一度サヨナラしてさ、ずっと手を繋いだまんまだと、抱きしめられない、じゃん。
●おお、そうですね。
藤井:手を繋いだままだと出来ないからね。
大久保:出来ないね。
藤井:だから一回手を放さないと、ガッツリ、がばっていけないかなって。でもそういうのって、ちゃんと考えないと分からないし。だから再確認っていうか。そばに居る人が突然居なくなったりするとさ、「ああ、この人こういう存在感があったんだ」とかさ、やっぱ分かるわけで。
●ああ、自分の中の何処にはまっていたのかとか。
藤井:そうそう、パーツがね。だから、そういうのも考えて、周りの見方もそうだし。気付いたら居てくれてたよなってところだね。
●じゃあ、自分の周りの人の事をもう一回、見直してみた方が良いよと。
藤井:うん、そうだね。だから…普通って、普通じゃないんだよって事を。震災が起きた直後ってさ、そういう事すげー考えてたの、皆ね。戻らない、かけがえの無い日常というのが。分かってたけど、2年半経ってみんな忘れてるんじゃないかなって。日常生活の愛しさとか、毎日の大事なもの。この人が居る事が大事だったのに、それが当たり前じゃなかった、っていうところをちゃんと分かっておきたいなって。うん。
●それをもう一回、形にしておきたかった?
藤井:そうだね。だから自分に対してもそうだし、考えてないと忘れちゃうから。
●はい。ファンの人もそうだとは思うんですが、やっぱり皆、藤井さんが福島在住で、それにまつわる事も知っているから、リンクして考えると思うんですが、そこを離れて考えても前向きになれると言うか、応援されてる感覚があって、聴き手によって色んな解釈に広がる、前に進める作品になってると思いました。
藤井:やっぱり根底にあるんだろうね、応援したいっていうのが。うん。それがちゃんと伝わってるんだったらそうとう良いんだけどね。作ってよかった。
●はい。だからこの先も、もっと楽しみです。
藤井:…さりげなくプレッシャーをかけると(笑)。いや、好きな歌を作っていくのみなんだけどね(笑)。

●このアルバムを作り上げて、どんな気持ちですか。
大久保:いやー、凄いですよね、これは。今までと流れが違うというか。オープニング曲って今まであったけど、今回はそういうのなしに一曲目からガッツリと。まあ『Alternative』の時もそうだったんですけど、それ以上に、頭から聴かせるっていうか。
藤井:攻めてるよな(笑)。
大久保:うん。攻めてる感が半端ないですね。今まで聴いてきた音楽の影響も全開で、凄く振り幅が広くなったというか。色々ごちゃごちゃ考えながらじゃなくて、楽しみながらやるのが結局一番なのかなって。そういう風に作っていくのが。細かいこと考えるよりも。自分的にも、そういう人間じゃないのに、そういう風に思えたっていうのが大きくて。そういう感覚が詰まったアルバムかなって。綺麗に録れたからOK、じゃなくて、聴いてどう気持ち良いかっていう所でOK出してきたんで、今回は。
●じゃあ、本当に変わりましたよね。
大久保:そうですね(笑)。余裕が出来てきたんでしょうね、ある程度。そういう意味では本当にバンドっぽいアルバムが出来たなって思います。
●では藤井さん。
藤井:やっぱり、この…30代ではない、40代に突入して、人生で考えたら、昔だったらもうすぐ死んじゃうとか。
●あー、人生50年ってありましたね。
藤井:そうそう。
大久保:すげー、昔じゃん(笑)。
藤井:(笑)それ考えたら、やっぱりね、攻めていかないとダメでしょ、って事で。それが一曲一曲にも出てるじゃん。言いたい事にも、歌詞にも出てるでしょ。今っていうものをちゃんと刻んでいかないとだめだって事を、アルバム全体でやってるっていうか。人生なんか、長いと思ったら大間違いなんだから、今回攻めモードだったんだろうなぁ。それが伝われば良いな。ツアーとかさ、年に一回くらいしかないじゃない?そう考えたら、年に一回のライブを見逃さないでよって事だよね。だから、ツアーに来なかったら、ブッ殺す!
●ぎゃははは(笑)。
藤井:くらいの、ね(笑)。プレッシャーをかけたい。本当に。今回のツアー見逃しちゃったらまた来年っていう所もあるわけだしさ。
●はい。今回のツアーが『TOUR K-ROCK 2013』と。これ、「K-ROCK」って?
藤井:一応、意味はあるんだけど、KING OF ROCKって事にしておいて(笑)。本当の意味はツアーに来た人に教えてあげる。本当にね、ライブが見えるアルバムだから、皆に見て欲しい。今回はより強く言いたい。
大久保:音源も良くなってるし、聴いて貰いたいっていうのが強いんですけど、聴いたら絶対ライブに来て欲しいですね。
藤井:っていうか、聴いたらライブに行きたくなると思うよ。
大久保:うん、もっと、凄いの聴けるから。
藤井:ライブじゃないと聴けないドライヴ感とか。
大久保:デジタルの物に納められてるものだけで満足しないで欲しいっすね。戦ってんのはライブだぞと。
●はい、わかりました(笑)。本当の理由の発表も楽しみにしています。
(TEXT&PHOTO(P3):朝倉文江)


『from shoegaze to nowhere』
(フロム・シューゲイズ・トゥ・ノーウェア)
01. G.B.V
02. ありがとね
03. Paint[]
04. 変身の術
05. Lost
06. under the sun
07. 傘になってよ
08. 東京
09. ゆうれい
10. Bye Bye Blackbird
11. Beer can
12. 彼女といえば
YRCN-95219/2,800円(税込)
2013.10.09発売

TOUR K-ROCK 2013
大阪公演:2013.10.19(土) umeda AKASO
名古屋公演:2013.10.24(木) 名古屋CLUB QUATTRO
福島公演:2013.10.26(土) 郡山Hip Shot Japan
東京公演:2013.11.2(土) 新木場STUDIO COAST
★チケット発売中、詳しくは公式HPへ。

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