COLUMN[2015.09.17]
Bad Kitty Nap
Vol.6 2015/9/17
第七章

今回第七章の話は結末から先に書いてしまうと、
1年ぶりにたまたま実家に帰ったその日、ロックちゃんは死んでしまいました。

その様子を事細かく書いた訳ではありませんが、愛するペットの死についてですから書いていても読まれる方にも悲しい出来事でしかありません。
なので最初にその事をお断りをして話を始めたいと思います。

毎日暑い日が続く夏、 1年ぶりに会ったロックちゃんは家にもすっかり馴染み元気であった。 どうしてその日、ぼくは実家へ帰ったのか、まるで思い出す事が出来ないのだけど、 とにかく実家へ帰った。取り立てて大きな用事があった訳でもなかったと思う。 着いた時には両親はまだ外出中で、何をするでもなく帰りを待ちながら時間をつぶした。 猛暑が続いてはいたが、家の中は窓を開けていれば風も通り、さほど暑くはない。 お昼過ぎになり、台所の換気扇の下でタバコを吸っていると離れた部屋から 突然ロックちゃんの鳴き声が聞こえた。 なんだ? その声は大きく、鳴き止むことがない。 驚いてロックちゃんに駆け寄るとロックちゃんは震えてただただ声を出し鳴き続けている。 「どうした! ロック? ロックちゃん??!!! おい!!」 非常事態だ。 すぐに電話帳を調べて動物病院へ電話をかけまくる。 「猫が変なんです ずっと泣き続けています 死んじゃいそうです」 繰り返し同じことを伝えるが 電話に対応はしてくれるものの、お昼の休憩時間であったため、電話口の向こうにいる先生からは 「うーん よくわかりませんので 休診時間が終わったら来てください」 「いや、死んじゃいそうなんです! どうしたらいいですか!」 「うーん 見てみないと何とも、、、」 仕方のない事かもしれないが、そんな返答ばかりが返ってくる。

どうしたらいいのか分からないぼくは、ただただロックちゃんに声をかける 「大丈夫かロックちゃん がんばれ」 かけ続ける事何軒目かで、少し遠いけれど その時間に診察をしている病院がひとつだけ見つかったので すぐに向かうことを告げた。  ロックちゃんはずっと苦しそうにしている。 暑いのかもしれない。 猫が一匹はいれるような大きな、たらいに水を張りそばに置いてみたが 口にしたり、入る様子はない。 実家には車が1台あったが、両親が乗って出てしまっているため、 誰かに借りなくてはならない。 何人かの知人の家に電話をかけるが、平日の昼間でなかなか家にいる人も見つからない。 やっと貸してもらえる車が見つかり、車のキーを借り、 急いでロックちゃんを車に載せようと家に戻ったのは 最初の大きな鳴き声を聞いてから30分は過ぎてしまっていたと思う。 玄関を開けて家に入ったぼくの目の前で ロックちゃんは最後の声を振り絞るかのように ウァーオ と発声すると 前2本足だけを使い、後ろ足をズルズルと引きずるような恰好で押し入れに潜り込んでいった。 「ロックちゃん!」 押し入れにぼくも頭を突っ込むが、ロックちゃんは全く動かない。 そしてそのままロックちゃんは息途絶えてしまった。 「ロックちゃん、、」 「ロックごめん 助けてあげれなくてごめん」  懸命に最後の力をふりしぼり潜り込んで行ったからか、お尻からうんちが出ていた。 がんばって最後まで生きてくれたのだと思う。 しばらくしてから帰宅した両親に玄関口で 「ねこが死んじゃったよ。。」 と言うと母が「え?」っと言った。 それからのことはあまり覚えていない。 ぼくは近所のスーパーに行ってロックちゃんのベッドになるような段ボール箱をもらってきた。 スーパーへ歩く途中地元の中学の友だちに偶然会ったのだが、あまりに呆然としていたのだろう 「あれ、、なんか大丈夫?」 「あ、ああ うん じゃまた。。」 というような会話があった 記憶にあるのはそれだけだ。 しばらく後になって母から「あの時タクシーを呼べればよかったのかもね」 と言われたのだけど、確かにその通りで、 でも、ロックちゃんのそんな突然の状況にパニックになっていたこともあって、そんな簡単なことにも気づけないまま ロックちゃんを死なせてしまった。 ぼくはその時、自分のショックばかりで両親の置かれた状況など考えも出来ず、 大学生になった大人のくせに随分子供だったと思う。 二人の状況はもっとつらいものだったはずだ。 あの日の夜、もっと3人でロックちゃんの話をすればよかった。 翌日母と二人でロックちゃんを連れて調布市にある深大寺のペット葬儀場へ向かった。 ひとりで火葬してもらうこと、たくさんのペットと一緒に火葬してもらうこと、 どちらも選べたのだけど、たくさんの動物と一緒のほうがいいよねという母の言葉に、後者を選ぶことにした。 父はロックちゃんのために詩を読んだ。

その後もしばらくは、後悔ばかりがずっとずっと残った。 ぼくが帰ってタバコなんか吸ったからいけなかったんじゃないだろうか、 助けてあげられなかった自分の責任を今でも時々考えるし ぼくが帰る日を選んで死んだのかもしれないな と考えればまだましだ。 あまりにも突然の事で、原因は分からなかったけど、あとになってその年には熱中症でたくさんのペット、動物が死んだということを 知り合いの獣医さんから聞いた。 「熱中症になるとね、自分で体温をコントロールできなくなってどんどん上がってしまうんだよ。だからそんな時は水をザバーっとかけてやればいいんだ。」 という事らしい。 しかしロックちゃんが死んでしまったその日は、そこまでの暑さではなかったように思う。 ただ熱中症で死んでしまった動物が多かったのも事実ではあるようだ。 また他の獣医からは 「猫の熱中症っていうのはなかなか無いんです。暑さには強いですから猫は滅多にならないんです」とも聞いた。 この獣医は以前通っていた病院の医者だ。いろいろあって今は信用できず通うのをやめたが、その言葉は分からないではない。 その後、自分で猫の面倒をみるようになってから 本を読んだりして猫を知るにつれ、あの時の状況などから熱中症ではなく心臓の病気、心筋症だったのかな と思うようになった。 血栓が飛ぶ という猫の中ではまだまだ原因不明だという突然の病気です。 突然消えてしまったさっちんが置いていったロックちゃん。 あまりにもあっけないさよならと、偶然なのか、呼ばれたのか、分からないがそのタイミングには 何か不思議な力を感じぜずにはいられなかった。 その後、実家に帰ることは更になくなっていったが、しばらくして母から「あいちゃん」という新しい猫が来たと聞いた。 「近所の○○さんが連れてきたのよ ロックちゃんいなくてかわいそうだって言ってさ」 何度か会ったがかわいいキジトラの小柄な猫だ。どこかのノラ猫だったらしい。 このロックちゃんシリーズも次回で最終話となります。 以降は当初の予定通り猫まめ知識や手作りのごはんなどについてお送りする予定です。 では今回もありがとうございました。 文と絵 おおくぼcatひでたか
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おおくぼひでたか
東京都在住 74年生まれ AB型
ぬいぐるみ作者、tobaccojuiceのギタリスト
古着や帆布、フェルトを主に使ったカラフルなどうぶつぬいぐるみを制作。
ワークショップを各地で多数開催し新宿伊勢丹、銀座三越など大手百貨店での販売も好評を得る。
著作
『どうぶつぬいぐるみ
~ちょっと不思議なかわいい世界~』文化出版局
ネコを溺愛し、手作りフードで飼育中、ときに悩む。

・http://monacos.info/

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