ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #6ゲスト:松田“CHABE”岳二【後編】
SPECIAL[2016.09.21]
CHABE:いやぁ、でも音楽で食うなんて、ずーっと思ってなかったから。20代とか。
ネモト:思ってないよ、俺も(笑)。
CHABE:ね、何だろうね。
ネモト:でも、結局DECKRECも18年目になって、俺ほとんどまともに働いたことないから。10代の頃はバンドとか始めて、これで生活できたらいいな とかぼんやり夢浮かべるじゃない?そういう子達には、音楽で生活する方法は他にもあるよとは思う。目指したわけじゃなくて成り行きだけどね。
CHABE:成り行きですよね。
ネモト:レーベルをやりたいと思ったことなんかなかったし、下北のQueでバイトしててきっかけはPOLYSICSと出会って、POLYSICSと何かやりたいと思っただけだったから。いろんなタイミングが良かったのと、バンドが良かったのがあって、すごい売れたから、会社に好きなことしていいよって言われて今に至る。出会いだよね。
CHABE:根本さんは絶対にそういう引きの力がある人だと思いますよ。ちゃんと足を運んでいるっていうのも大事なんだけど、素直に見れるから引きがあるんだと思いますよね。どうしても分析しちゃうじゃない、大人になると。最近俺、分析しなくなったと思ったんですよね。LEARNERS始めてから。前だったら、ちょっとプロデューサー目線っていうか、ここがこうなったら面白いんじゃないかなとか、ついつい思ったり、口にしたりしてたんですけど、なくなったんですよね。
ネモト:あぁー、俺も45歳過ぎてくらいからなくなったかも。
CHABE:かっこいいバンドは単純にかっこいいって思うし、いいバンドが増えましたよね、最近。下北っぽいバンドが上の段階に行って、すっぽり抜けてたけど、ここ1、2年で面白いなぁと思うバンドが増えてきた。
ネモト:若い子が面白いなって思うようになってきたね。だから、その子達に経験値で何かを言いたくないなって。
CHABE:聞かれたら言うけど、俺が言う必要なさそうだなって。もうちょっと放っておいた方が面白そうだなって。
ネモト:結局、経験で「こうやるとこうなっちゃうよ」とか言っても、そうならないこともあるなって。
CHABE:でも、ネモトさんがLEARNERSに何か言ってくれるのは俺は超嬉しいです。見えなくなってるから、外から見た同じような目線の人に言って欲しいなって。
ネモト:結局、自分の好みに当てはめるだけじゃなくて、俺はいつもお客さんからの目線を意識した言い方になっちゃうっていうか、自分がお客さんだったらどう思うか、になっちゃう。イベントをやるにしても、主催してやるときは何かしらスペシャルなことが欲しいっていつも思ってて。近いところで言うとこの間、THE NEATBEATSとLEARNERSとSoulcrapと俺らでイベントやったときは、紗羅ちゃんが前に他のバンドでSam Cooke歌ってる映像を見てて、この曲THE NEATBEATSもやってたよなと思って、紗羅ちゃんがTHE NEATBEATSで歌ったらかっこいいなと思ったから、各自に声かけて、それが次にも繋がってって。THE NEATBEATSのイベントに紗羅ちゃんが参加したりね。LEARNERSは色んな見せ方があるけど、でもロックンロールだったらここっていうのもあって。THE NEATBEATSはバンドもお客さんも閉鎖的じゃないし、この要素のお客さんにも見せておきたいって思った。あと、あの日楽しかったのは、ど平日に20時スタートでやってもお客さん満員だったから、組み合わせとか楽しい雰囲気になれば、お客さんは来てくれるんだなって。それはLEARNERSが平日イベントやって140人くらい来たのに影響受けたんだけど。
CHABE:僕らは平日しかできなかったんですよね。みんな他にバンドやってるのもあって。あとリスクがないじゃない?平日だと。週末だと、これだけライブハウスあると、友達のバンドと被るしね。地方の人には申し訳ないですけど。
ネモト:でも地方からも来てたよ。それくらいパワーを持てればいいなと。自分の中である程度思い入れを持って、周りが見えなくなってるような雰囲気でやりたい。
●根本さんはお話を聞いていると素直なというか、常にロック好きの10代の少年のような初心を忘れてない感じがありますよね。
CHABE:そのまま大人になったような人ですよね。
ネモト:自分じゃわからないけどね。どっかにはあるよね。でも「いつまでもピーターパンでいいよね」みたいなこと言われるとカチンとくる(笑)。
CHABE:(笑)。その気持ちを持ち続けることがどんだけ大変か、裏のことたくさんありますよね。大人の席もあるし、予算の話とかもするし。でもコアの部分がそうなだけで。「チャーベさんみたいになりたいです」とか言われるけど「いや、めちゃくちゃ大変だよ?!」って(笑)。
ネモト:そう騙せてるなら良いけどね。あと自分のケースが特殊だと思ってるから、人にアドバイスができない。自分のやり方が正しかったのか分からないし、時代が良かったのもあるし、たまたまだからアドバイスできなくて。
CHABE:そうなんですよね。ただ、憧れてもらえたりするのは、うまく騙せてるんだなって。水の中で凄いバタ足してるけど、みんなには見えてないだけっていう。
ネモト:あとCHABEくんと俺がラッキーだったのは、この歳でまた新人になれたことかな。お互いキャリアもあって、それなりに色々やってきたけど、これまでとは全く違うメンバーとバンドを始めたから、見え方が新人なんだよね。若いメンバーがいることに目を向けてくれるから。キャリアがあるバンドは、キャリアがあるバンド同士でずっとやってっちゃうから、それはそれで別にいいけど、自分は違うなと思ってたから、若いバンドとやる機会があるのは嬉しいな。若いメンバーは若いメンバーの人脈を持ってるから、自分では絶対できないことができたりするし。その逆もあるけど。
●キャリアを積んだ上で、新しいことを楽しめてるというのは素敵ですよね。
ネモト:結構大変だけどね(笑)。
CHABE:でももう大御所になるか、このやり方になるか、どっちかじゃないですか。ニール&イライザは、堀江くんが大御所の方で、斉藤和義さんとMANNISH BOYSとかやったり、武道館クラスをいっつもやるみたいな感じだから、バランスが僕の中ではいい。
ネモト:俺もレーベルを始めてから、リリースしてきたバンドを今でも全部抱えてたら今頃億万長者だよって言われるけどね(笑)。苦労したりいやらしいこともして、ちゃんと抱えられてたらね。そのタイミング、タイミングで次に頭がいっちゃうんだよね。
CHABE:(笑)
ネモト:こうやってCHABEくんとみたいに、お互い違う経緯できて繋がるのは面白いね。それも意識的じゃなく。意識的じゃなく繋がったものって、自分の手の内にあるもの以外のものだから、未知数のものを感じる。どうなるかわかんないもんね。LEARNERSの広がりとかも。
CHABE:あんまり欲張ってないんで、次出したらどうなるんだろうなぁって感じ。ライブもイベンターとかもかましてないんで、自分がその時思ったようにしたいなって。ホットドッグ出したり、DJ呼んだり。
●ライブをただやるだけというよりは、場所を作るというか、そういう感じですかね?
CHABE:うん。LEARNERSはプロムパーティーのバンドみたいな感覚でいたいんですよね。ああいう場作りをできたらいいなって。
ネモト:あとまたオリジナル曲を書いて欲しいな。
CHABE:ゆっくりやります(笑)。
ネモト:短期戦で終わる予定が当てが外れたからね(笑)。
CHABE:そう、だからもうちょっと慎重にね。
ネモト:まずは10月19日に、LEARNERSとCHIDISH TONESでスプリット7inchも出るので聞いて欲しいね。
●楽しみにしてます!ありがとうございました。

(文・小山裕美)
前編はこちら
[PROFILE]
松田“CHABE”岳二(まつだ“ちゃーべ”がくじ)
 1970年、広島県生まれ。ソロ・プロジェクトのCUBISMO GRAFICO、バンド・スタイルのCUBISMO GRAFICO FIVE、キーボーディスト・堀江博久とのユニット、ニール&イライザ、DJ、リミキサーとして活躍中。また、FRONTIER BACKYARD、LOW IQ 01のライブバンドMASTERLOW, BACK DROP BOMB等のサポートも務める。2001年には、映画『ウォーターボーイズ』の音楽を手掛け、第25回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。昼間は原宿で kit galleryを主宰。夜は渋谷Organ Ban、三宿WebなどCLUBでのDJで現場を大切にした活動を展開。
 2015年の夏からは紗羅マリーとのバンドLEARNERSで活発に活動中。

https://twitter.com/cubitter

[PROFILE]
ネモト・ド・ショボーレ
POLYSICS、SCOOBIE DO、KING BROTHERS、THE NEATBEATS、毛皮のマリーズ、黒猫チェルシー、住所不定無職、うみのてetcなどを輩出したロックンロール・レーベル「DECKREC」主催。 ギタリスト として、チロリアンテープ・チャプター4、THE NERDS、The Mighty Mogulsなどのグループに参加。 2015年秋に、すべてTOY楽器を使ってロックンロールを演奏する「CHILDISH TONES」を結成。
 フリーの音楽プロデューサーとしても活動中。

https://twitter.com/DECKREC