ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #5ゲスト:フミヤマウチ【後編】
SPECIAL[2015.04.22]
ヤマウチ:やっぱり僕らは中心人物ではなくて、ウォッチャーみたいなところがあるよね。
ネモト:完全にそっちですね。Twitterとかでもあきらかに変な人は興味があってもあんまフォローしないで、お気に入りとかリストに入れてチェックしたりしてる(笑)。ヤマウチさんもTwitter面白いから、ヤマウチさんのこと知らないけど、変なことつぶやく人って思ってる人もいますよね。
ヤマウチ:面白いかどうかはまあ別として、さだコラ以降、フォローしてくれる人が増えたかも。
ネモト:あれ最高でしょ!
ヤマウチ:昔っから「さだまさしのパンク時代」とかロックヒストリーにからめて空想するのが好きでさ(笑)。それが進んで実際のロックフォトにさだまさしをコラージュするのを始めたら、いつの間にかちょっとしたムーブメントになっちゃって。
ネモト:歴史的なロックレジェンドの有名な写真、そこにさだまさしがコラージュされて、現場にいたっていう設定をツイートするっていう。
ヤマウチ:「マルコム・マクラーレンのブティック“SEX”に集う若者たちとさだまさし」とかそういうことしてたら、色んな人が面白がってくれて、一斉に作り出した。そういう意味では自分がパイオニアだとは思うんだけど、もう俺がどうこうじゃなくなってるから(笑)。
ネモト:ヤマウチさんのコラ系だと殿様キングスのも最高に面白かった。
ヤマウチ:殿様キングスをキンクスのロゴに変えたりとか、クールファイブなのにMC5とか、ぴんから兄弟にB’zとか、そういうの大好きでさ。それでTシャツ作ろうと思って、そのまんまだとさすがにやばいかな?と思ってわざわざ「We Are Not B'z」ってしてんのに、実際にオーダーしたら肖像権の問題かなんかでどこも刷ってくれなかったっていう。まあそりゃそうだんだけど。Tシャツ屋が正解。
全員:(笑)
ネモト:ビックリハウス的なね。そういうセンスは大事ですよね。笑えるものはかっこいいから。
ヤマウチ:俺がかっこいいかどうかはまた別だけど(笑)。まあ80年代に思春期を迎えた結果って気は確かにする。音楽的にいろいろ広がったのは90年代だけどね。
ネモト:このまま行くとね、俺らが過ごした90年代って、一部は完全になかったことにされそうなんだよね。いわゆるメジャー的に分かりやすく出てる90年代史に、影響を与えてたもの、アンダーグラウンドって言っちゃうと…。
ヤマウチ:もっとアンダーグラウンドの人たちに失礼だから、なかなか言えないですけどね。
ネモト:けど、俺はそう思ってるんで。地上に出る前の重要な濃い時代を知って欲しい。
ヤマウチ:レコーディングソフトって意味で、90年代って基本、全部CDなのね。で、この先、そのCDを発掘して大勢の人たちに聴かせたり踊らせたりする機会が、果たしてあるか?っていうと、ないと思うんだよね。実際にDJのなかでも「アナログオンリーこそが至高」みたいなのがあるから、そういう意味でも90年代の多くの音楽が存在しなかったことになる気がしていて。個人的に今いちばんやりたいのは、CDオンリーの90年代の音源をアナログ盤で復刻して、次の世代に残すっていうこと。
ネモト:それをヤマウチさんがやるとして、いちばん最初に出したいものは?
ヤマウチ:ザ・ヘア。順番にね。
ネモト:ザ・ヘアの1stってアナログ盤ってないものね。
ヤマウチ:そうなの。
ネモト:みんながいちばん衝撃を受けた時のザ・ヘアがアナログになってないんだね。
ヤマウチ:さとうさんにダメって言われる可能性もなくはないんだけど、でも出したいよ。あと、新品のアナログレコードが妙に高価になっているのが本当にイヤで。プレスティッジやファンタジーの90年代再発盤みたいなペラペラのものでもいいから、安価で入手しやすいアナログ復刻レーベルにしたい。だからね、ネモト大先輩に「レーベルとは何ぞや!?」っていう教えを請いたいのですよ。
ネモト:仮にそれをやることがあるなら、ものすごい協力したいです。
ヤマウチ:ありがとうございます!あとはピチカート・ファイヴを僕はどうにかしたい……っていうと偉そうだけど、ロックンロールバンドオンリーのピチカート・ファイヴのトリビュート盤を作りたい。ハードコアなモッズや60'sのパーティーで当時のリズム&ブルースのシングルと立て続けにかけてもなんの違和感もないトラックがぎっしり詰まったヤツを。
●それは聴きたいですね!
ヤマウチ:最近、ピチカート・ファイヴのエモさにすっごいやられていてさ。このエモーショナルな部分を生のロックンロールサウンドで聴かせたい。このふたつが最大の目標かな。
ネモト:それ聴いてみたいな。
ヤマウチ:また相談させて。だからネモトくんとはこれからの方がより濃い付き合いになるかもしれない(笑)。
ネモト:2015年が楽しみですね。

(文・小山裕美)
前編はこちら
[PROFILE]
フミヤマウチ
1969年北海道函館市生まれ。90年代初期にDJ BAR INKSTICKやOrgan Barのスタッフとして働くかたわら、和モノDJとして活動を開始。「自由に歩いて愛して」(DJ BAR INKSTICK)、「スネイク☆ナイト」(旧レッドクロス)、「Oh!Gentle Life」(次郎長バー)、「VIVA!YOUNG」(Club Que)といったイベントのレギュラーDJを務めた。90年代中期以降はタワーレコードのフリーマガジン「bounce」や「BARFOUT!」編集部に在籍しながらライターとしても活動。現在は市井の給与生活者。
https://twitter.com/fooming69

[PROFILE]
ネモト・ド・ショボーレ
POLYSICS、SCOOBIE DO、KING BROTHERS、THE NEATBEATS、毛皮のマリーズ、黒猫チェルシー、住所不定無職、うみのてetcなどを輩出したロックンロール・レーベル「DECKREC」主催。ギタリスト として、チロリアンテープ・チャプター4、THE NERDS、The Mighty Mogulsなどのグループに参加。フリーの音楽プロデューサーとしても活動中。
https://twitter.com/DECKREC