ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #4ゲスト:竹内道宏(a.k.a. たけうちんぐ)【後編】
SPECIAL[2014.09.19]
ロックンロール・レーベル「DECKREC」主催のネモト・ド・ショボーレ氏が、交友のある音楽、映画、漫画、演劇…様々な場で活躍する多種多様な人たちを迎えて送る、ジャンルレストークセッション「TALKIN' REC TAPES」。
第4回目のゲストはライター、イラストレーター、ライブ映像作家と様々な顔を持ち、10月には監督を務めた『世界の終わりのいずこねこ』の公開が控えた竹内道宏さん。約4時間に亘った熱い対談を2回に分けてお届けします!
前編はこちら
ネモト:そもそも『新しい戦争を始めよう』は何で撮ることになったの?
たけうちんぐ:直井さんに「映画を作らないですか?」って話をもらって。映画学校に半年通ってたとは言え、日本映画学校って半年間映像に触れないんですよ。ドキュメンタリー実習っていう音声だけでドキュメンタリーを作るっていう課題があって、その経験しかないんで不安はあったんですけど、「やりますやります」って言っちゃって。
ネモト:キャスティングはどうしたの?
たけうちんぐ:佐津川愛美さんは直井さんに紹介してもらって、他の出演者は全部僕が決めました。笹口くんに寄り添ったものにしたいと思っていて。笹口さんが出してきたのがかなりスケールのでかい3部作で、僕もいけるかなと思ったんですけど、直井さんが現実的に難しいって言って。そこでフェイクドキュメンタリーって形で脚本も変えてやってみたところ、直井さんに凄い受けが良くて。僕もやりたいことが明確に分かって。その勢いで作りましたね。
ネモト:あの頃って震災以降で、震災を取り扱った映画みたいのが多かったけど、何か自分の中でモヤモヤする内容で、でも『新しい戦争を始めよう』は素直に受け入れられた。
たけうちんぐ:僕はっきりと意見のない人間なんですね。原発とかそういうことを普段から口にはしてなくて。
ネモト:一人で頭の中で考えたりはしてもね。
たけうちんぐ:そうなんですよね。それを口に出したいとかなくて。ツイッターも人によってはそういう情報をリツイートしたりする人もいたけど、僕は本当に正しいものが何かやっぱりわかんなかったんですよね。全部「情報」って形をしていて、判断ができなかった。その悔しさもありましたね。だからそれを固有名詞として反映するよりは、元々SFが好きだったりするので置き換えて作りたいなと。僕は世界の終わりっていうのは幻想だと思っていて、世界の終わりは隕石が降ってきたり病気で死滅することじゃなく、自分が死ぬことだと思っているので、あの映画もそうで。
ネモト:でも自分が死んだ後も物語は続くよね?
たけうちんぐ:そうですね。あれは自分の中で一つテーマがあって、夢の話なんですよね。映画監督になりたかったっていう設定にしてるんですけど、最終的に妹が僕の撮った映画と自分の撮った映画を繋げて、映画を完成させましたっていう感じにしたかった。
ネモト:ちんぐはめちゃくちゃロマンチストだなと思った。
たけうちんぐ:(照れ笑い)…そうですかね。
ネモト:(笑)。そこが自分とも似てる気がして、破滅的なものは好きだけど、それだけじゃ嫌で、少し希望とかあって欲しいんだよね。
たけうちんぐ:絶望を絶望だけにしたくないですよね。それが笹口くんの作る曲で。もちろん曲によって色々あるんだけど。僕は『RAINBOW TOKYO』っていう曲が好きで、東京って何かやりたいことがある人が集まる場所でもあるじゃないですか。僕もやっぱり東京に対して希望があったんですよね。東京の夢の話、将来の夢みたいなものを描きたかった。だから僕が死んで遺作が出来るっていう。あの時消えてなくなりたい願望があって、少し気分的に病んでたんですよね。自分が一番暗い人間だって自信があったんですよ(笑)。だからあの役に一番合っているのは僕だって思って。
ネモト:他の人が演じたら意味も変わってきちゃうしね。
たけうちんぐ:そうなんですよ。あと演じてもらう=こっちが指示しなきゃいけないし、それが出来るかも分からなかったから自分でやった方がいいなって。でも編集する時に後悔して。普段関西弁っていうのもあってイントネーションもおかしかったし、演技も気になるし辛かったですね。自分で監督、出演ってところで周りの人の演技も確認しなきゃならない、プラス自分の台詞とかも確認しなきゃならない、プラス映像も見なきゃいけないっていうのが思った以上に大変で。3つの脳を働かせなきゃいけないって感じだったんで。だから次の映画の『世界の終わりのいずこねこ』は監督に徹したいですね。

ネモト:前に撮ったドキュメンタリーも凄い好きだったんだよね。
たけうちんぐ:『始めようといってもすでに始まってた』ですね。あれは去年のMOOSIC LABの枠が空いたんですね(笑)。それで元々「これを流さない?」って言われてたものがちょっとなと思ったので、「じゃあライブ映像を集めたものを作ってみます」って言って、そうしたら物語の中で筋を通さないといけないって思って、結局また僕の話になっちゃったんですよ(笑)。
●ご自分のドキュメンタリーなんですね。
たけうちんぐ:そうですね。セルフドキュメンタリーですが、映っているのはライブ映像っていう風にして。撮ることって何なんだろうとか、そういう。
ネモト:あれってちんぐは撮ることについて言っているけど、何にでも置き換えられるよね。
たけうちんぐ:そのつもりで作りました。それは『新しい戦争を始めよう』に近くて。そもそも上京して何がやりたかったんだろうっていうことを自問自答して、でも実際映っている映像がライブ映像っていうことで、自分だけの話にはしたくなかったんですよ。
ネモト:あれが凄い良かったのは、一人の人間が色んなものと出会って、化学変化を起こして色々変わっていく物語でもあったと思うんだよね。
たけうちんぐ:そうですね。
ネモト:だから自分に置き換えて見ることの出来る映画で。しかもタイトルが素晴らしかったよね。
たけうちんぐ:『新しい戦争を始めよう』を同時上映してくれるってことだったんで、『新しい戦争を始めよう』『始めようといってもすでに始まってた』っていう並びにしたらいいかなってつけてたんですけど、そういうことだよなって。だってさっき話してたこと全てそうじゃないですか。好きで始めたら、いつの間にかそうなってたっていう。
ネモト:そうだね。ちんぐが映画を撮らざるを得ないところに来てたように、俺もレーベルを始めざるを得ないところに来てたのかもしれない。
たけうちんぐ:もしかしたら小学校、中学校から始まってたのかもしれないですよね。僕あんまり客観的すぎるものに惹かれないんです。結局客観的なものでも主観じゃないですか。だったら主観に徹した方がいいと思ってて。
ネモト:俺も何万人に届くものよりも、1クラスの中で2、3人に届くものを作ろうと思ってて。100人に1人くらいかもしれないけど、それは自分だと思ってて。自分を反映させたものをただ自分に向けてるだけかもしれない。自分だったら好きだろうなってことなんで。
たけうちんぐ:自分が見たいものを作りたいですよね。
ネモト:大多数の人が共感するものを作ろうと思ったら、もっと違うやり方だろうけどそれは分からないし、そういうものを自分がいいとも思わないし。
たけうちんぐ:僕は自分が薦めるものにはやたらと希望を持っちゃうんですよ。これはみんな好きだろう、好きになるべきだって。かまってちゃんのスレで僕のことたまに馬鹿にされるんですけど、BABYMETALのことばっかり語っていたら知人がスレを見てたみたいで、「竹内、最近ちっちゃい女の子のこと薦めててキモいって書かれてた」って教えてくれて。いや、実際ロリコンなのかもしれないけど、BABYMETALはロリコンのものじゃなくて、僕がロリコンって言われることでBABYMETAL自体がそういう風に言われることがめちゃくちゃ悔しくて。だからブログに長文のライブレポを書いて、これはマジで凄いんだぞって。今BABYMETALのライブレポを書くことの狂気は凄いと思うんですよ。ウオーッ!って凄い顔して書いてる感じっていうか。日本武道館の2デイズのレポは10時間位かけて書いて。今までの僕のお仕事で書いた文章の何と比べても一番気合いを入れて書いた文章。今年作ったもので一番自信があります。
●それはご自身のブログに載せているんですね?
たけうちんぐ:はい。ただのブログの投稿なんですけど、「伝説が幕を開ける」っていうタイトルで。
全員:(笑)