ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #4ゲスト:竹内道宏(a.k.a. たけうちんぐ)【前編】

SPECIAL[2014.09.09]
たけうちんぐ:好きって気持ちって何でも出来るから凄いですよね。最近はBABYMETALにヤバいくらい入れ込んでまして。
●他のアイドルを好きだったりとかはなく、急にはまったんですか?
たけうちんぐ:元々はYouTubeの動画を見て軽く興味があるくらいだったんですよ。あぁ面白そうだなって。それで知り合いのある雑誌の編集の方が「招待出来るので見ませんか?」って誘ってくれて、軽い気持ちでZeppTokyoのワンマンを2階席で見てたら、「下に降りたい!」ってなって。そこからもちろん、全部チケットを買ってモッシュに巻き込まれています。
全員:(笑)
ネモト:ヘヴィメタルが好きだったわけでもないんだよね?
たけうちんぐ:はい、全く。ただギターのズカズカズカーって激しい重低音は好きで、でもジャンルとして好きだったわけでもなく、本人を見る前も特別可愛いとかいう思い入れもなかったんですけど、実際に見たらそのパフォーマンス、BABYMETALっていう表現に衝撃を受けて、後から可愛いって思い始めました(笑)。
ネモト:ゴスっぽい、暗黒な感じも良かったんじゃない?
たけうちんぐ:そうですね。ストーリーを紙芝居で見せるんですけど、世界観が楽しいってものじゃなくて終末的で、そこに現れたヒロインがBABYMETALっていう設定で一つのフィクションになってるんですよね。MCは一切なく、最後に「We are BABYMETAL!See You!」だけで帰っていくところとか完全に世界観を徹底しているところにも惹かれて。
ネモト:俺は安易な感じで前向きに頑張っていこうみたいのが苦手で。
たけうちんぐ:わかります。今のアイドルシーンを批判するとかじゃないんですけど、明るく未来を元気に楽しくって歌が自分の中ではまんないんですよね。メロディーいい曲だなとかはあっても、凄い抵抗感があるんですよね。これを好きになったら駄目だっていうのがある。今は多種多様なアイドルがいるけど、やっぱり鬱屈してる個人の世界が出てるものが好きなんだなって。変化球を投げるものが好きっていうわけじゃないんですけど。
ネモト:希望に満ちあふれてるものが素直に入ってこないんだよね。多分中学時代とかが引きこもりだったからだと思うんだけど。
たけうちんぐ:中学時代はほとんど学校行ってないんでしたよね?
ネモト:うん、行ってない。その当時引きこもりって言葉はなかったけど、完璧にそうだったね。幼稚園の頃からそういう気質はあって、どうしたら行かないで済むんだろうって思ってた。子供社会が嫌いだったんだと思う。同調圧力的な雰囲気とか一人でいちゃいけない的な雰囲気が。常に一人だったから。中学校入って、あるタイミングで学校行かなくていいってことに気づいちゃって(笑)。家でずっと漫画の模写してたよ。
全員:(笑)
ネモト:大学ノートにサンデーとかコロコロコミックとかの画をその通り描くってことをひたすらしてたよ。
たけうちんぐ:僕も漫画描いてました。小学生の時ってグラウンドでみんなドッチボールするんですよね。
ネモト:うわー嫌いだった!
たけうちんぐ:人にボールを当てるなんてひどすぎるって思ってて。
全員:(笑)
たけうちんぐ:最後に残ったらリンチじゃないですか。でもボールを受ける勇気がないんで、最後の一人になることが多くて。みんなが「竹内当てろ!竹内こっちだ」みたいなのがいじめられてる感覚で本当に嫌で、一人で教室で漫画描いてたんですよね。それがアイコンとか名刺にも使っているチュンちゃんっていう小学生の時に書いてたキャラクターなんですよね。
ネモト:へぇー。
たけうちんぐ:小学生の時に飼ってた黄色いセキセイインコがチュンちゃんって名前で、彼がうちの母親が洗濯物を干すためにベランダを開けた瞬間にバババーって逃げてしまって。
●ほぼ同じ経験がありますけど、あれは相当なショックですよね。
たけうちんぐ:そうなんですよ。で、やっぱり母親を憎んでしまいまして(笑)。「何でベランダ開けたん!?(泣き怒り)」って。それで鳥かごを持って近所を「チュンちゃーん、チュンちゃーん」って探すんですけど、かなりトラウマで。どうしたらこの悲しみから抜け出せるだろうって思ったら、まだ生きてるって思えばいいって。得体の知れない世界に飛び出したことが一番可哀相っていうか、悲しかったんですよ。だからチュンちゃんを自分の世界に戻すために、チュンちゃんが主人公の漫画を描き始めて。学園モノなんですよ(笑)。
全員:(笑)
たけうちんぐ:全4巻レポート用紙に描いて。「VWだーぶ?」ってバード・ワールド・ダーブなんですけど、まぁVじゃないですよね。そもそもダーブって何やねんって。
全員:(笑)
たけうちんぐ:小学生なんで間違ってるんですけど(笑)。中学生位になるとあの頃の悲しみが薄れていってどんどん描かなくなって、最後のページが「次号予告!」ってちゅんちゃんが中学生になったって、それは僕が中学生になるからなんですけど。
ネモト:チュンちゃん同じ歳なんだ。
全員:(笑)
たけうちんぐ:そう(笑)、僕と同学年で。チュンちゃん基本は髪の毛が丸いですけど、ちょっと髪の毛いきった感じでオシャレしてて若干成長して、夕暮れの帰り道を歩いてるっていう画に、「次号お楽しみに!」って僕しか読まないですけど描いて。
全員:(笑)
たけうちんぐ:その最後のコマで僕の子供の世界が終わったって、そういうことを感じてましたね。
ネモト:ちんぐの世界観って子供っぽいっていうか、そこにシンパシー感じてて。可愛いもの好きな感じとか。
たけうちんぐ:そうですね。女の子の好きな可愛いものでもない、子供が好きな可愛いものが好きで。可愛い女の子とかでも、男性としてみたいな性的欲求とは関係ないところで可愛いと思う癖があって。
ネモト:俺もかっこいいものより可愛いものが好きなんだなと思う。可愛いものには得体の知れない怖さもあるよね。ねこぢるっていう漫画が好きなんだけど、可愛い絵で真理をついたような、子供的で無邪気な残酷さとか。
たけうちんぐ:可愛いと怖いが共存しているものは好きですね。サウスパークとかドラえもんとか。ドラえもんの中でドラえもんが壊れるっていう回があって、それはテレビのアニメだったんですけど、ドラえもんの壊れるイメージ映像みたいのがあって、その映像がトラウマで未だに怖くて、でも魅力的だったんです。藤子不二雄ってちゃんと闇を描くじゃないですか。
ネモト:そうだね。
たけうちんぐ:だからバンドもかっこいいとか怖いとか可愛いとか共存してるのが好きですね。
ネモト:かっこよくても可愛げを感じられるっていうか。ギターウルフ見ててもセイジさん可愛いと思うし、キングブラザーズ見ててもマーヤ超可愛いと思うし。
たけうちんぐ:僕の中ではそれはピュアかもしれないですね。ピュアっていうのはかっこいいも可愛いも全部詰まってる。
ネモト:そう考えてるとリリースしてるバンドって、ただかっこいいだけじゃなく、可愛かったり笑えたりするものかもしれない。漫画みたいなっていうか。
たけうちんぐ:ネモトさんの根本にあるのは模写してた頃の…。
ネモト:本当にそうかもしれない。好きな漫画があって、その世界を自分でもう一回描いてるだけっていう。いや本当ロックとかパンクがなかったらどうなってたか考えるのも怖くて嫌(笑)。
●ネモトさんは中学の時に引きこもっていて、そこからどうやって抜け出したんですか?人と話すのも難しいような状態ですよね?
ネモト:中2位の時に初めてエレキギターを持って、ほぼ同時期にロックとかパンクとか知ったんだけど、クラスで一人だけ同じようにギターやってる奴がいて、そいつが学校から帰ってくると、そいつのうちでギター弾いたりビートルズとか音楽の話したりっていうのはあって。でも拠り所にはしてなくて、得た知識を発散出来る場所みたいな感じだった。地元が栃木県なんだけど、中学を出てからは宇都宮のレコード屋とかライブハウスに通い始めて、そこで出会ったのが初めての友達かもしれない。俺が東京に出てくるきっかけになった奴もいるし。
たけうちんぐ:そういう所に来る人には心を許せたんですね。
ネモト:おかしい奴らが多くて。年齢も中学3年生位から23歳位までごちゃ混ぜになってて、宝島とかDollとか読んでいるような人達が集まってた。
たけうちんぐ:当時はインターネットとかもないですから、連絡もとりにくいし、そこに行かないと会えないですし、そこは全然違いますよね、
ネモト:それからパンクバンド始めて、宇都宮大学のバンドサークルで音楽やっているような奴らともライブハウスで知り合いになって。家帰らないでほとんどそういう奴らと遊んでたな。
たけうちんぐ:「学校であることが全てじゃない」って言うじゃないですか。僕は小中高大と普通に学校行ってましたけど、そこまで重要だったとは思ってなくて。そこで出会った人とその友達に教えてもらったものでここにいるって感じなので、あんまり先生から凄い何かを教わったとかはないんですよね。でもその場所は必要だったと思っていて、ネモトさんにとってはレコード屋とかライブハウスがそういう場所だったってことですよね。今になって分かることって沢山あるじゃないですか。そういう授業があればいいのにっていうか、道から外れた人が教える学校っていうかが(笑)あったらいいなと思いますね。

■後編は2014年9月16日公開予定です。
(文・小山裕美)
[PROFILE]
竹内道宏(a.k.a. たけうちんぐ)
1983年兵庫県生まれ。神奈川県在住。
映画系・音楽系・体験系ライターとして、ボブっ娘を描くイラストレーターとして、ライブ映像作家として、黄色い鳥が羽ばたくように活動中。
神聖かまってちゃん、うみのて、チッツ等のライブ映像を撮影し、500本以上の動画をYouTubeにアップロードしている。初監督映画『新しい戦争を始めよう』は現在DVD発売中。大阪のアイドル・いずこねこ主演の新作『世界の終わりのいずこねこ』は10月にPARCO主催「シブカル祭」で上映が決定。
現在はBABYMETALで頭がいっぱい。彼女たちの事、主にYUIMETALの事を書いた『BABYMETALのメタル・レジスタンスを追う~私は如何にして心配するのを止めてYUIMETALを愛するようになったか~』を「おたぽる」サイト内で情熱的に連載中。BABYMETALの文章で世界を変えてやる。
https://twitter.com/takeuching

[PROFILE]
ネモト・ド・ショボーレ
POLYSICS、SCOOBIE DO、KING BROTHERS、THE NEATBEATS、毛皮のマリーズ、黒猫チェルシー、住所不定無職、うみのてetcなどを輩出したロックンロール・レーベル「DECKREC」主催。ギタリスト として、チロリアンテープ・チャプター4、THE NERDS、The Mighty Mogulsなどのグループに参加。フリーの音楽プロデューサーとしても活動中。
https://twitter.com/DECKREC