ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #4ゲスト:竹内道宏(a.k.a. たけうちんぐ)【前編】
SPECIAL[2014.09.09]
ロックンロール・レーベル「DECKREC」主催のネモト・ド・ショボーレ氏が、交友のある音楽、映画、漫画、演劇…様々な場で活躍する多種多様な人たちを迎えて送る、ジャンルレストークセッション「TALKIN' REC TAPES」。
第4回目のゲストはライター、イラストレーター、ライブ映像作家と様々な顔を持ち、10月には監督を務めた『世界の終わりのいずこねこ』の公開が控えた竹内道宏さん。約4時間に亘った熱い対談を2回に分けてお届けします!
ネモト:知り合ってどれくらいだっけ?そんなに長くないよね?
たけうちんぐ:2012年の7月に公開された『新しい戦争を始めよう』を観て頂いたのが最初ですよね。
ネモト:きちんと会ったのは12年の後半かな。
たけうちんぐ:短いけど濃密な時間を過ごしてますよね。うみのての伊豆のレコーディングにも同行して。同じ部屋でしたもんね(笑)。
ネモト:そうそう(笑)。メンバーと振り分けていったら何故か同じ部屋になって。あのレコーディングも修学旅行みたいで楽しかったね。
たけうちんぐ:いい思い出ですね。元々はSPOTTED PRODUCTIONSの直井さんがネモトさんと知り合いで。
ネモト:直井さんのブログにちんぐが撮ったうみのての動画があがってて、それ見て直感でリリースしよう!って思った。ちんぐの動画はいつも歌詞が字幕で出るんだけど、それが大きかったかも。
たけうちんぐ:ライブ動画を上げる人って増えたんですけど、歌詞をつける人ってあんまりいなくて。僕は音楽ももちろん大事ですけど、歌詞から入るというか、そこから世界観がはっきりと目に見えてわかるっていうのがあるので。あとメンバーとかファンの人は歌詞分かってますけど、僕はあんまりファンの人に見てもらうって気持ちはそんなになくて、知らない人に見てもらうのが重要だと思っていて。それだったらミュージックステーションとかの音楽番組みたいに歌詞をつけて分かり易く伝えるっていうことをやりたかったので、正にピンポイントで見て欲しい人に伝わったんですね(笑)。
ネモト:ちんぐの思うつぼにハマったんだね(笑)。
たけうちんぐ:嬉しかったですよ。昔からNUMBER GIRLが好きってどころじゃないくらい好きだったんで、POLYSICSの曲をNUMBER GIRLの向井さんとアヒトさんが一緒にやった音源あったじゃないですか。
ネモト:あぁー、POLYSICSのリミックス盤を作った時、向井君にお願いしたんだよね。東京出てきたばっかりの時にCLUB Queでバイトしてて、その頃よくNUMBER GIRLがQueに出てて、憲ちゃんとかと仲良くなって遊び仲間だったし。
たけうちんぐ:だから「凄い!うみのてが…おぉー!」ってなって。
ネモト:元々ライブハウスによく来てる女の子がツイッターで「今、N’夙川BOYSに対抗出来るのはうみのてだと思う」みたいなことを書いていて気になってて。それでMOOSIC LABの中で『新しい戦争を始めよう』を観て面白いバンドだなと思って。でもリリースしたいと思ったのは、ちんぐの動画を見た瞬間だった。
●うみのてに出会ったのは竹内さんの方が先なんですね。
たけうちんぐ:2011年の夏に初めて撮影したので。うみのての笹口君とは太平洋不知火楽団からの繋がりもあって、うみのても凄いかっこよくて。太平洋も良かったんですけど、うみのての世界観は無視できなくて。それでかなり熱を持って、毎回のように撮影に行きましたね。
ネモト:うみのては自分の好きな藤子不二雄で言えば、F先生の短編SF漫画みたいな要素や、A先生のブラックユーモアに近い要素を、笹口君の歌詞の世界観に感じて凄く惹かれたんだよね。筒井康隆的だったり。だから歌詞の字幕がなかったら、どうなってたかわからないかも。
たけうちんぐ:やっぱり自分の一番大事なところは歌詞を載せるところなんですけど、あれ時間がかかって結構めんどくさいんです。
ネモト:タイミングも合わせなきゃいけないもんね。
たけうちんぐ:そうなんですよ。結構集中してやらないと歌詞も間違えちゃいけないから何回も見直すし、タイミングも同じリズムで歌わないんで。でもやった甲斐があったなと思ってます。ただ、たまにボーカルが歌詞を間違える時があって、そういう時はどうしようかなと思いますね(笑)。
ネモト:あぁー、間違った通りにするべきか、ちゃんとするか。
たけうちんぐ:そうなんですよ。この間うみのての新しい曲の歌詞を笹口君からメールでもらって、それと照らし合わせて動画で見たら、歌ってる内容が違ってたんですね。それで笹口君に「こう歌ってるけどどうする?」って聞いたら、「元々の歌詞で」って言われて。でも出ている歌詞と歌っている歌詞が違うと違和感あるんですよね。笹口君はあんまり間違えない人なんですけど、神聖かまってちゃんのの子さんはいきなり2番から始まることとか全然あるので(笑)。ロックバンドだからそれでいいと思ってるんですけど、バンドの生々しいテンションっていうものを歌詞を出すことで損なう部分はあるなって、たまーに感じてますけどね。でもそこはもう多少は犠牲にしてもいいかなって。
ネモト:ちんぐが気にしてる程、損なわれてないと思うよ。ちんぐのライブ映像で衝撃を受けたことがあって。ワンカメなのに3台位カメラがあるように見えたんだよね。
たけうちんぐ:そう言ってもらえるのは嬉しいです。
ネモト:最前でワンカメで追ってるから、その曲をきちんと分かってなきゃいけないよね。色んな動画見たけど、ちんぐのは見たい所をきちんと映しててくれてた。お客さんの目線に近いというか。普通のライブ動画って「こっちで今これやってるのにな」ってストレスに感じる時もあって。だけどちんぐの動画はそこでライブを見てるみたいな気持ちになる。
たけうちんぐ:結局、映像って複数台で撮ったとしてもワンアングルでしか映らないから、1台でもそんなに変わりはないんです。どうせ映すならバンドにとって都合のいい所しか映さないっていうか。だからたまにメンバーが間違えたりとか弾いたのに音でなかったりした場合は直ぐ反らすっていう(笑)。
ネモト:その判断力が凄いんだよ。
たけうちんぐ:一度うみのてのギターの高野君にカメラを振った時にギターのエフェクターか何かをいじってて、しゃがんでいたので映らなかった時があって。それから僕も反省して、そこにメンバーがちゃんといるか見てからカメラを振ってますね。ただ、見て「立ってるな」って確認して振った瞬間にしゃがむっていう奇跡のタイミングとかもあったりするんですけど(笑)。ワンカメでやる場合は完璧に撮らなければならないって思っていて。メンバーが完璧なのに僕がミスってたらまずいので、なるべくメンバーがかっこよくというか、ちゃんと映っているものを撮りたい。そこは作家性とか物を作るっていうことじゃなくて、CDRを作る感じですね。中高生の時に好きな音楽を入れてテープを友達に渡すみたいな感じで、それを不特定多数にネットで渡しているっていう感覚だったんですよね。あと僕撮影するのより編集する方が好きで。家の仕事が好きっていうか基本インドアな人間なので(笑)、ライブハウスとかでも撮影したら直ぐ帰るんです。最近ようやくちょっとだけ人と話すのが好きになってきましたけど、東京来て何年か後に一番自閉的になっちゃって。まともに人の目が見れなかったですね。常に薄く寄り目して、目のフォーカスを甘くして過ごしていました。特に『新しい戦争を始めよう』を作った頃は。直井さんも言ってたんですけど、当時は「凄い陰鬱だった」って(笑)。
ネモト:あの時は時代もあるよね。
たけうちんぐ:そうですよね、2011年でしたし。その頃は直井さんの目を見た覚えがないくらい(笑)。人と普通にコミュニケーション出来ないから、カメラでコミュニケーションを取るっていう感じだったんですよね。