ネモト・ド・ショボーレ対談連載
TALKIN' REC TAPES #2ゲスト:本秀康
SPECIAL[2014.05.24]
本:漫画と音楽の話で言うと、ストーリーが詞で絵がメロディーだとして、その組み合わせで色々音楽的なことが出来ないかなって考えることがあるんです。
ネモト:本やんの漫画読んでて、テーマとか大げさに言うと思想とか、そういうものはマニアックなものじゃないと思った。普通の人の共感出来るものだと思ったな。
本:20代の頃書いてた漫画はモテてた人に怒りを感じてる漫画なので(笑)内容ひどいけど、最近はわりとソフトかな。
ネモト:わかるなー。90年代渋谷系が全盛で、渋谷系の人も60年代に影響受けてアートワークとかもそういう感じでお洒落で。何で同じものを好きなのにあっちはチヤホヤされてって思ってた(笑)。
本:俺もビートルズとかから影響受けて漫画描いてて、渋谷系もあの辺サンプリングしてるのに、何で俺はモテないで向こうはモテてるんだろうって思ってたね。
●渋谷系に同じ思いを(笑)。
本:今さ、ユニオンのバッグ持ってるのがお洒落ってことになってるんですよ。
ネモト:お洒落じゃなかったの?
本:昔はユニオンのレコ袋は恥ずかしいからCISCOとかの袋に入れて持ってなかった?
ネモト:俺はユニオンで売ってる袋がかっこいいと思ってたもん。
本:そうなんだ。10年位前にディズニーランド行ったら、若いカップルの男の子がユニオンのバッグを持ってたんですよ。あの固い何にも入らないやつ。
全員:(笑)
本:ディズニーランドにこれを持ってくるってことはお洒落アイテムになったんだなって思った。あれは昔はお洒落ではなかったですよ。
ネモト:そっかぁ。レコード袋がかっこいいって刷り込みは『ストップ!!ひばりくん!』なの。タワレコの袋を持ってひばりくんが歩いてて佐野元春がかかってるっていうシーンがあって、子供心に「かっこいい!」って思ってたから、レコードの袋はかっこいい、お洒落って思ってた。
本:レコードをお洒落って感覚にしたのは江口(寿史)さんだよね。あと鴨川つばめさんからも音楽を感じた。
ネモト:鴨川つばめは俺も凄い好き。
本:鴨川先生大好きで。当時『マカロニほうれん荘』に出てくるものって大人っぽくて分からなかったじゃないですか。
ネモト:ルミちゃんがトシちゃんを誘惑する回があるでしょ。海に行って。
本:9巻の扇子を足につけて海老フライ食べてっていうやつだよね。
ネモト:あれ見て「エロい!」って思って。
本:思ったね。でもあれは子供心にわかることで。わからなかったロック的なこと、ミリタリー的なことが、後々になって分かってくる度に俺も大人になったなって思った。
ネモト:大人になって色んな文化を知ると発見があるよね。
本:そうそう。だから奇妙な話なのかなって思ってたんだけど、今は出てくるアイテムがきちんとわかるから、わりと整合性のある話なんだよね。
ネモト:あと凄い好きだったのは『らんぽう』。
本:あぁ。『らんぽう』、『べにまろ』、『マカロニ~』とかだよね、俺らの世代は。チャンピオンからジャンプに移っていく感じですか?
ネモト:ジャンプは熱心に読んだ記憶がなくて。
本:そう。『ドカベン』の連載が終わってチャンピオンからジャンプに移りました。やっぱり目当ては『Dr.スランプ』で。
ネモト:あぁ俺も『Dr.スランプ』は読んでたな。
本:漫画で一番好きなのが、『ワイルドセブン』なんだけど、その次が『リングにかけろ』なんですよ。だからあの頃のジャンプは読みまくりました。
ネモト:音楽を聴き始めたのは?
本:結構遅くて高校生とかかな。ネモトさんはもっと早いでしょ?
ネモト:ビートルズ聴き始めたのが中学生かな。小学生の頃は歌謡曲ばっかりレコード買ってて。
本:それは俺も一緒。初めて買ったのは『青い珊瑚礁』と『哀愁でいと』だった。
ネモト:俺は『スニーカーぶる~す』。でも『哀愁でいと』も買った。
本:B面『君に贈る言葉(アフター・スクール)』でしょ。
ネモト:あれ最高だよね!
(しばし二人で歌い合う)
全員:(笑)
本:根は一緒なんだね(笑)。俺はその2枚を一緒に買ってきて、親としてはどちらもくだらないと思ったはずなんですけど、「どっちが歌上手い?」って聞いたら「聖子ちゃん」って言ったから、それからは聖子ちゃんを高尚ないい音楽として集めるようになって。でも音楽ファンとしてって感じではないかな。
ネモト:ちょっとませてた子はYMOとか聞いたりしてたよね。
本:いま一緒に仕事している仲間に最初に買ったレコードを聞くと、幼稚園の時に親にバッドフィンガーを買ってもらったとか、まぁそれは黒沢健一さんなんだけど。それを聞いたら俺はもう敵わないなって思う。
ネモト:その時点で負けてる感じするよね(笑)。
本:だからスタート地点の遅れ方は結構近いかもね。
ネモト:中学生位で親が持ってるレコードなんだろうって思って、見たらビートルズとかストーンズがあって。でもそのときはストーンズはピンと来なくて、ビートルズの青盤を無茶苦茶聞いてて。CMとかで聞き馴染みもあったしね。ビートルズのシネクラブとか入ってたもん。
本:へぇ!そうなんだ。それはオタクだね。
ネモト:でも会報読んでると、あれってアニメオタクとほぼ同じノリで(笑)。
本:読者のイラストページがアニメオタクと同じテイストの絵だよね(笑)。
ネモト:初めて自分の意志で買った輸入盤はポール・マッカートニーの『Tug Of War』。レコードとか興味持ち始めた時期に、新聞広告でデパートのレコード市みたいのが載っていて、そこで買ったんだよね。
●本さんは?
本:僕はちょっと時代はずれるんですけど、金田一耕助が好きになって横溝の小説を読んでいて、ビデオで『悪霊島』を見たら『LET IT BE』が流れていて、あぁ僕の友達が部室でいつもやってるビートルズの曲だと思って、彼を連れて神保町に行って、レコード屋さんで「一番お勧めのやつを選んで。買うから」って。アメリカ編集盤の『Hey Jude』を彼が選んでくれて買いました。
ネモト:神保町にレコード買いにいくっていうのがもう憧れるわ。俺は栃木だったから。
本:そっか。でも俺も高校は九州で、一時間位かけて高校に通ってたんですよ。デザイン科で遠くにしかなかったから。その行き来の時間を持て余してた時に推理小説、金田一にハマって、その後に東京に出てきてって感じなので。俺も田舎育ちですよ。
ネモト:『悪霊島』で『LET IT BE』っていうのは俺らの世代は避けて通れないよね。CMでガンガンかかってたから。だから怖いイメージあるよね。
本:あの頃って映画のチラシを集めるのが流行ってて。だから当時は観てないんだけど、最高のチラシの映画ってイメージだったんだよね。
全員:(笑)