ライブハウス特集 下北沢CLUB Que 二位徳裕インタビュー
SPECIAL[2013.07.17]
●これからQueに出たい人は二位さんと話をしにくるとかの方がいいですかね?
二位:というよりみんな真面目になっちゃって方法論が一つになっちゃってるんだよね。会社の面接みたいに、ちゃんと音源を作ってプロフィールを作って、ちゃんと挨拶をしてって。でも自分自身の若い頃のことを思い出すと、そんな何十本もある中で聞いてもらえる分けないと思ったんですよ。だから何したかっていうと、終わり際のライブハウスに行って店の人にホウキを借りてずっと掃除してたの。声かけられるまで。
●すごいですね。
二位:でも店からしたら怪しい奴だから。
●有り難いとかよりも変な奴がいるってなりますよね(笑)。
二位:そう(笑)。それで「お前何してるんだ?」って聞かれて、「実は出たいと思ってデモテープ持ってきたんです」って言って。
●アプローチからパフォーマンスなんですね。
二位:そう。そこに面白味があると絶対真剣に聞かれるし、ちょっと上げ気味にブッキングしてくれたりするんですよ。そういうめんどくさい人に出会いたいですね。
●(笑)。
二位:昔THE BACK HORNの松田君が来て、「俺ら福島から来たんですけど、どうやったら人気者になるかなぁと思って来たんです」って言うから「チラシ撒けばいいじゃん」って言ったら、そっから毎日チラシ撒いてて、それで出てもらうようになった。そこで音楽聞いて「かっこいいじゃん!」って。
●そこで初めて知ったんですね(笑)。最近はそういうアプローチしてくる人はいないですか?
二位:なくはないけど、やっぱり下手かなって思う。ライブハウスもバンドもめんどくさいことしなくなっちゃったんだよね。言うこと聞いてくれるバンドがいいし、怒られないライブハウスがいいしっていう傾向で、全体はさらってなってるんじゃないかなって。あと場所を転々としがちでしょ? Queでもやるし他の所でもやるしって。そうするとそのバンドはそのハコの小さい力しか使えないんですよね。ガチで来てる奴にはこっちも釜の底さらってでも燃料使ったりするじゃない?
●確かに。ここのライブハウス出身みたいなバンドも減りましたよね。
二位:そうだね。でもそれはバンドが悪いんじゃなくて、ハコの運営と簡単に囲ってしまう大人が良くないなって思うけどね。子供に罪はないよ。

●Queの中で知る人ぞ知るサービスはありますか?
二位:年間フリーパスとかかな。
●何の時に出してますか?
二位:おとそライブの時とか下北沢音楽祭の時とか、前にやったのはパンフの中でイラストを募集して一等賞の人にもあげたりとかしてますね。なので、スケジュールとかHPとかチェックして頂けると。
●Queはオリジナルカクテルも多いですよね。
二位:レギュラーオリジナルドリンクと特別イベントの時だけ出してるのがあります。レギュラーは山中サワー(the pillowsの山中さわおさん)、ラモーンスカッシュ、ビールと酢でTHE BEALTSとか(笑)。これ案外旨いですよ。
●その辺りはいつでも注文すれば飲めるカクテルなんですね。オリジナルドリンクは出演者からの提案なのですか?
二位:それもね「俺らのオリジナルドリンク作って下さいよー」とか言ってくれればいいなって思う。
●それくらいの意気込みで来てくれと。
二位:そういうのが深く付き合うことでしか生まれないものだと思うの。予算がなくても出来るお客さんの楽しませ方だと思うんだよね。やっぱり人がステージに立って人を感動させるためには、人に会って人と接して、その自分が言ったこと、した顔、しぐさで人がどう反応するかを、知って歌うのと知らないで歌うのと全然違うから。
●その人がそのまま音楽に出るから、人間力は大事ですよね。
二位:そういう力が世の中になかったら、ハイスタはああはならないですね。出会った時は若すぎてチューニングさえ出来なかったけどチラシだけはすっごい撒いてた。
●(笑)
二位:だから今とは言うことが全然違くて、屋根裏の頃は「もうチラシ撒きはいいから練習してこいよ」っていう台詞が多かったけど、今は「練習いいからチラシ撒いたり人と出会ったりしようよ」って言うことが多い。
●昔から人としてっていう付き合い方ですね。
二位:ライブハウスよりもっと大きいショービジネスになったら違うかもしれないけど、でもそれはそれでどういうデザイナーを選ぶかとか、どういうマネージメントと付き合うかとかは人を選ぶ判断力がないと失敗しがちじゃない? だからこそ、こういう場でうごうごしてる合間に人間観察力をつけてほしい。

●ライブ後は普通に飲みに来れるように解放してますし、ふらっと遊びにきていいんですよね?
二位:もちろん。でもそういうの初めてって怖いと思うんですよ。俺も怖かったもんライブハウス行くの。それを怖いと思って行かなかったり逃げたりするか、遊びに来てあの人と喋れたって喜びを見つけるか、だと思うんだよね。今年面白かった出来事はTHE TON-UP MOTORSがワンマンやるって言って150枚位チケット売れてて、そしたらボーカルの人が北海道にいて雪で帰って来れなかったのね。
●えっ?!
二位:普通にいったら中止で払い戻しでしょ? でも当日の夕方だもん、今から発表したって全員には行き渡らないから、その少なからず来るであろう人達には何かしてあげようよって。当然最初はボーカルいないんじゃ怖くてできないと。でも、演奏じゃなくても晩酌でもいいしカウンター入ったりして振る舞ったらいいんじゃない?って。「他に何か出来ないかな?」「誰々がいるから何曲かは出来るかもしれません。」「じゃあそれやろう。フリサトの水本も観に来るっていってたからあいつにも何曲か歌わせようか?」って、なんやかんやタイムテーブル組み直したら2時間位出来たの。結果、百何十人来て、そういうのってより以上に感動するんですよ。それで悲しい出来事がいいウワサに変わって2ヵ月後の振替のワンマンはソールドアウトして。
●おぉー!
二位:で、その話を北海道出身のバンドだから、さわお君(the pillows)にこんなバンドがいてこんなことあったんだよって話をしてたら、横でフラワーカンパニーズのグレートマエカワが聞いてたの。「いいね!今度の2マンそのバンドとやろう」って7月の夏ノ陣の対バンが決まったの。
●いい話ですね。
二位:中止にしてたら何も起きない。一回転んで3個くらい拾ったって話。でもこれも判断力がいって、出来る人出来ないバンドいるから。出来ない人に無理にやらせちゃうと酷いハコなんだよね。でも出来るだろうって人達が躊躇してるんだったら後押ししてあげようって。ドラム10台並べるDQSとかもそうなんだけど、やや出来なさそうなことをやろうとすると一生懸命考えるから。一つのバンドのことをよってたかって考えていることがニュースになるんですよ。こっちも人に伝えやすいし、ラジオの人も来て下さいってなるし。
●面白いことやるのは大事ですね。
二位:うん。でもそういうと最近勘違いされて、楽しいこと=楽なことってなっちゃうから。そうじゃなくて、めんどくさいことを楽しむってことなんだよね。ライブハウスのインタビューだからバンドを中心に語るけど、一般生活も同じことだと思うんだよね。彼氏が出来ましたとか子供が出来ましたとか、楽しいけどめんどくさいじゃん。子供はめんどくさいけど、可愛いから楽しいにすり替わっていくんだよね。でもそれが可愛くなかったら、好きなだけ泣き叫び糞尿垂れ流しって一番のアナーキストだから。
●(笑)
二位:でもそういうのがいいものに変わる瞬間があって。ちょっとした努力や工夫とかしながら勉強しながらやっていくじゃない? それを乗り越えようとするところに喜びがあるんだったら、凄くそれはいいもので。それは普通に仕事をしても普通の人間関係でもバンドでも同じじゃないかなって思う。3人以上の人間が集まったら絶対めんどくさいよ。
●バンドとか凄いなって思いますよね。個性的な人間が何人も集まって一つのものを作ったり、行動を共にするって。
二位:それが真剣になればなるほど大事なものになればなるほど、めんどくさい。それを楽しめる力だよね。ツアー行くっていったって、30分の演奏するために何時間も同じ車に乗ってさ。
●大変なことですよね。
二位:それを楽しめるかだよね。めんどくさい人に会いたいですね。
●CLUB Queはめんどくさい人を募集してますと(笑)。
二位:めんどくさい人、バンド、スタッフに会いたいですね。向上心のあるめんどくさい人は大募集。排他的なめんどくさいはちょっとですけどね(笑)。それと出来合いのバンドに大枚はたいて呼ぶだけって仕事はやだな。凄いバンドを呼ぶなら金だけじゃなくて、こっちもメンドクサイ位のエネルギーを持ってやってきたいです。清志郎さんに教えられたかもね。意味とか愛のあるめんどさって。
(文・小山裕美)

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下北沢Club Que http://www.ukproject.com/que/住所 東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンビルB2F
■電話番号 03-3412-9979
■収容人数 250人
■道順 ファーストキッチンのあるビルの地下2階(地下1階はサイゼリヤ)