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■2015.12.06 三重・カリー河
佐々木健太郎 下岡晃 (Analogfish)
“真夜中の発明品ツアー ~虹のない人生なんて~三重編~”
REPORT[2016.01.18]

「知り合って30年、一緒にバンドをやって16年。人生で初めて組んだバンドがAnalogfishだった」

そう語る2人が初めて一緒に弾き語りでツアーを回る。ファンにとってはちょっとした事件だろう。幼馴染で同じバンドのツインボーカルなのだから、今までやっていないのが不思議といえば不思議ではあるが。

佐々木は随分前から「真夜中の発明品」と銘打ったソロ弾き語りライブをおこなっている。今回のツアーで回る都市は、岩国、広島、京都、四日市、京都、江の島、富士吉田。すべて佐々木が「今までに行って良かったところ、やりたいと思ったところ」という基準で選んだ町、選んだ会場だそうだ。その選りすぐりの場所に下岡を誘って行く。そんな訳でファンの期待は否応なく高まり、即日完売になった会場もあった。そんな会場のひとつ、四日市のカリー河は、佐々木が過去に8回もライブをおこなっているおなじみの場所だ。

先攻は下岡。まず『夢を見るのさ』からスタート。これは、ジャズの名曲『Wrap Your Troubles in Dreams』を、Analogfish初代ドラマーでもあったバロンなかざわが日本語訳しカバーした曲だ。

下岡の弾き語りの特徴の一つが、このように洋楽を日本語訳詩で歌うことである。レパートリーで最も多いのはアメリカのバンドCAKEの曲。この日もCAKEの『Got To Move』、『Tougher Than It Is』、『Sad Songs & Waltzes(原曲:Willie Nelson)』、『Mexico』を自ら訳した歌詞で弾き語る。

彼が訳し、歌う言葉は、シンプルだが世界や人心の本質を突き、聴く者に響く。非常に少ない言葉数で現された世界が、しなやかな強度とぶれない意味をもつ。そして、少ない言葉数だからこそ、聴く者は想像力を働かせ、思い浮かべた情景を自分に重ね合わそうとする。

特に印象に残ったのが、『Tougher Than It Is』の訳詩だ。「人は自分の人生を綺麗に見せたがる 時に自分の人生を難しくしたがる」と歌われるのを聴いて、自らの生き方を振り返させられ、はっとする。筆者はもう10年以上前から、彼が書く詩の鋭さに撃ち抜かれてきた。訳詩でもそれは変わらない。この先10年も、そしてその先も、下岡の表現に惹き付けられるんだろうという予感がする。

「ここのライブのチケット、1分で売り切れたんだってね。他のバンドが即完するのを見て羨ましいって思ってたけど、俺たちも遂に!」と喜びを顕にする下岡。そして、「カリー河は、みんなが良いってい言うから来られて良かった。四日市は初めて来たけど、意外と大きな町なんですね」と語る。

オリジナル曲は、新曲の『TOKYO』、穏やかなメロディに固い決意を乗せた『荒野』、バンドバージョンとは大きくアレンジを変えたイントロで始まる『夕暮れ』。そしてその他のカバー曲は、「友達の歌を」というMCから前野健太の『ファックミー』。新旧織り交ぜた、バラエティに富んだ内容だった。

「このツアーで健太郎はどんどん上手くなってる。今日でツアーの前半が終わりなんだけど、ツアー中ずっと一緒にいたから・・・しばらく健太郎から解放されて嬉しい」

場内爆笑。こういうことをストレートに言えてしまう関係性。さすが30年来の仲。見ていてとても微笑ましく思った。
後攻は佐々木。けだるく『Tired』からスタートし、下岡が作り、その後佐々木が譲り受けた曲『Alternative Girlfriend』と続く。下岡はギターも歌も繊細だった。それに対して佐々木は声量豊かでダイナミック。2人続けて聴くと、改めてこんなに違うタイプのシンガー・ソングライターが同じバンドにいるなんて不思議だと思う。しかしこの対照的とも言える個性の違いが、Analogfish最大の特徴であり魅力であるのだ。

「最近晃も弾き語りをすることが多くなったので、ツアーに誘ってみたら『いいよ』って言ってくれて。晃とは出会って30年です。これだけ長いつき合いだと、自分の親より一緒にいる感じです」

「さっき晃は、やっと僕から解放されると言ってたけど・・・僕は意外と一緒に居られるな、って」という発言に場内爆笑。やっぱりこの関係性、面白い。素敵だ。

中盤、3曲続けて音源化されていない新曲を。「さっき晃が東京の歌を歌ったので、僕も」と、都会の夜のしめやかな怠惰とやるせなさを歌う『タナトス』。ハイトーンボイスで繊細な愛を歌う『Pixie』。そして、続く『Time』が圧巻だった。熱く「Time! Yeah!」とシャウトを繰り返す、ロック色が強い一曲。佐々木が持つ声の力強さが生かされている曲だ。新曲を量産していく中で表現の引き出しが増えている。それは、「『最近のぼくら』(2014年リリース)を作り終えて発売する前、僕が『やれやれ、ようやく制作作業が終わった』と思っていたら、晃はすぐ新曲持ってきた。正気か、と(笑)。僕も負けてられないと思って曲を作りました」というMCからも感じ取れた。

終盤は、最新作『Almost A Rainbow』収録のアップテンポの曲を続けて2つ。『Will』の跳ねるような疾走感が素晴らしい。そして弾き語りでもキラキラとした華やかさは変わらない『Baby Soda Pop』。盛り上がった客席から大きな拍手が沸き起こった。そして『Tonight』を高らかに歌い上げて本編が終了。

アンコールは2人揃ってステージへ。Analogfish結成当時、1999年・長野県喬木村での話を始める。

佐々木 「長野では、『怨念部屋』と呼んでいた四畳半で、2人で曲を作ってました」
下岡   「俺は楽器ができなくて、健太郎が全部やって」
佐々木 「今と同じです。・・・ここ笑うところです!(笑)」
下岡   「俺が健太郎を怨念部屋から連れ出そうとしたけど、頑なに拒んでたよね。あれ何だったんだろうね」
佐々木 「今ではそこから出られて、四日市まで来られるようになりました!」 

そんな絶妙な掛け合いに客席は爆笑、そして大きな拍手。昔の秘話(?)が聞けたレア感がたまらない。

佐々木が「この2人でライブをするので、せっかくだから結成当初の曲をやります」と語り、アンコールでは超初期の未音源曲を。その頃作った曲で流通音源になっているのは、『ラジオ』と『世界は幻』くらいだそうだが、今回やったのは『バキューム』、『ポール好き好き』、『梅雨』、『トペコンヒーロー』という曲。10年以上彼らのライブを観ている筆者でも、『バキューム』と『トペコンヒーロー』は1度聴いただけ、『ポール好き好き』と『梅雨』に至っては、タイトルすら初耳だった! 超レア!

佐々木メインボーカルの『バキューム』、『ポール好き好き』、『トペコンヒーロー』は、音源になっている初期の曲『白黒ック』や『ラジオ』のような、どちらがメインボーカルでどちらがコーラスかわからないでっかい声で2人が歌う曲だった。最高だった! 両名ともビートルズ、特にポール・マッカートニーが好きという理由で作った『ポール好き好き』はタイトルを聞いて爆笑したが、ポップで癖のあるグッドメロディを2人で全力で歌うのが痛快、爽快だった。下岡メインボーカルの『梅雨』は、しっとりとしたメロディに実に下岡らしい不思議な歌詞が乗っていた。

こうやって超初期の曲を聴くと、彼らが生み出す中毒性のあるメロディと耳に残るポップさが、結成当初から変わらず根底にあるのがわかる。長野時代の若い衝動と現在の成熟した表現。変化したものと今でも続いているもの。彼らの変化や進化を楽しみにして何度もライブに足を運びながら、こんな風に変わらない部分を目の当たりにして嬉しくなっている自分がいた。

鳴り止まない拍手に、このツアー初めてのダブルアンコール。曲は『Nightfever』。イントロは2人でギターを弾き、途中下岡はギターを置いてボーカルのみ。徐々に熱く言葉を乗せていく下岡の歌に、佐々木が優しく撫でるようなコーラスを乗せていく。2人の異なる個性がぶつかり合いながらも融合する、Analogfishらしい曲だ。「夜の熱」が発散していくのを感じながら、この場でこの2人が並んで歌うのを観られて心の底から幸せだと思った。

「また是非、ここに来たいです」という2人。超初期の曲も披露され、彼らの原点を確認したツアーだった。2016年もそれぞれのソロ活動に、そしてもちろんバンド本体の活動にも期待したい。

(文/撮影:山岡圭)

OFFICAL HP
Analogfish http://analogfish.com/

Analogfish 「KYOTO TO TOKYO」

2016/02/14(日) 京都 磔磔
2016/02/20(土) 新代田 LIVE HOUSE FEVER


SET LIST:
下岡晃
01. 夢を見るのさ(カバー)
02. GOLD RUSH
03. Got To Move(CAKEカバー)
04. Tougher Than It Is(CAKEカバー)
05. Sad Songs & Waltzes(CAKEカバー)
06. ファックミー(前野健太カバー)
07. TOKYO
08. 戦争がおきた
09. 荒野
10. 夕暮れ
11. Mexico(Cakeカバー)

佐々木健太郎
01. Tired
02. Alternative Girlfriend
03. 希望
04. タナトス
05. Pixie
06. Time
07. Will
08. Baby Soda Pop
09. Tonight

Encore1
01. バキューム
02. ポール好き好き
03. 梅雨
04. トペコンヒーロー
05. Showがはじまるよ

Encore2
01. Nightfever