一色徳保『それでも、僕の足跡は続く』インタビュー
INTERVIEW[2015.10.07]
続くんですよ、生きている限りは。
何かを表現し続けていくっていうか。何の仕事でも何かをやれば残っていくし、誰かの心に残る事もあるだろうし。そういう風にして続いていく。

初のソロ作品は様々な「初めて」に挑戦した極上のポップアルバム。「つばきとは違う」角度のアレンジから引き出された新しい歌達はとてもカラフルで新鮮。声の温度も曲のキャラクターも、つばきとはまた違う、でもつばきに還っていくであろう、初めて聴く「一色徳保」だ。これからのつばきも楽しみにさせてくれる、挑戦的かつ良質なソロアルバム!全曲紹介つきインタビュー。
●遂にソロアルバムが完成ですね!いつ頃から考えていたんですか?
一色徳保:2009年くらいから、出してみたいなっていうのはありました。出せる状況になったところで、出したいなっていう思いが強くなったのもあるけど。
●ライブのときに、つばきのメンバー2人が他の活動でも頑張ってるから俺も、みたいな発言がありましたけど。
一色:そうそう(笑)。そういう気持ちもあったのかもしれない。2人とも色んなところで活躍してるから、音楽的にも成長するし。やっぱ自分もね、成長しなきゃいけないと思うし。バンドの為に、フィードバックしないとな、と思って。違う場所で、違う表現の仕方を、勉強できるじゃないけど、吸収出来れば良いかなって。
●実際はいつぐらいから動いてたんですか?
一色:別にソロアルバム作ろうと思って曲を作ってたわけじゃないんだけど、退院してからすぐ書いた曲も何曲か入ってるし。これはちょっとつばきじゃ形にしずらいなっていう曲があって、お蔵入りになってた曲とか置いておいた曲とかも何曲かあって。退院してからもずっと作ってたしね。
●昔に元ネタがあった曲とかもあるんですか?
一色:いや、昔の曲は無い。全部退院してからの曲。
●はい、本当に良いアルバムになりましたね。
一色:ありがとうございます。今回のアルバムに参加してくれている小佐井君は昔「ウラニーノ」というバンドでサポートしてて、彼は曲をアレンジするのも得意な人で俺が作った曲を一緒にアレンジしたり、リアレンジしてもらったり。今回8曲くらいやってもらったのかな?10曲中。
●ああ、クレジットにお名前多いですね。
一色:そうそう(笑)。ソロアルバムを作りたかった理由の一つにつばきと違う事をしたいっていうのもあって。それは、ソロの作品はポップでキャッチーなものを作って、バンドが苦手な人とか最近つばきを聴いてない人とかにもまた聴いて欲しいなと思って、そういうきかっけになれば良いなと思ってソロを出す事にしたから。だから小佐井君にアレンジしてもらって間口を広げたいなっていうのはあったんだよね。だからまあ、半分…半分は言い過ぎだけど(笑)小佐井君の力も大きかったよね。
●今回小佐井さんにお願いしようと思った決め手はなんだったんですか?
一色:ウラニーノ見たときから何となく、俺の周りにはいないタイプって言うか、俺とは違うセンス、そういう感じはあったから、どっかで誘ってみたいなって、思っていて。つばきでもソネさんが居ない時にサポートやってもらってるんだけど、そんなにガッツリじゃないから、ソロやるって時に「誘おうかな」っていうのがありますね。
●はい。ちなみにどんな人なんですか?
一色:個性的ではあるね。凄く良い人で、でもクセはある。ミュージシャンだからね。後は、優しい。小佐井君は色んなところでサポートしたり、アレンジしてたりもするんでね。そういうのが得意っちゃ得意なのかもね。色んな音楽知ってるし。
●はい。レコーディングの中で楽しかった事とか大変だった事は?
一色:レコーディング前から、ずっと忙しくて、当たり前だけどつばきも平行してるし。時間のやりくりが大変だった、追われてたね。あとは色んなミュージシャンとやり取りしてたから大変だったね。
●ああ、小佐井さん以外の参加アーティストはどんな風に集結したんですか?近しい人もいますし。
一色:皆会った事はあって、あ、ショウジアキラ君(ドラム&カホンプレイヤー)だけ会った事無かったかな。ショウジ君は小佐井君の紹介で。ドラマーの森信行さん(ex.くるり)は何回か会った事があって、いつか一緒にやってみたいなって思っていたので誘いました。
●大迫さんはつばきでもサポートしてるし、ソロライブでも弾いてますよね。
一色:大迫(章弘・e-sound speaker)はギターボーカルだから、俺もそうだったしやっぱり一人そういう感覚の人がいて欲しかった。あと同期だから分かってもらいやすいというのもあったし。ただ、今回メンバーを誘う時に、そもそも「つばきじゃないソロアルバムにしよう」っていうのがあったので、つばきフレンズをやってくれたメンバーとか誘いたいんだけど誘えなかったんだよね、そうなってくると。
●ああ、そうか。
一色:つばきフレンズのメンバーと一緒にやるとつばきのイメージが強く出ちゃうかなって。出来るだけそれは避けようと思って、だから我慢して誘わないようにして。つばきフレンズじゃないメンバーっていうか。大迫は入ってるけど。だから次にソロを作るとしたらつばきフレンズのメンバーも誘うかも知れないしね。
●はい。アルバムのコンセプトを決めて動き出したのはいつぐらいだったんですか?
一色:ソロを作ろう!と思ったのは…7月にレコーディングしてたから、その半年前くらいからかな。
●去年末くらいから?来年15周年だしな、みたいな。
一色:逆を言ったらやるなよって事だよ(笑)。つばき15周年だからつばきに集中しろってところなんだけど、昨年リリースした、つばきのアルバム『真夜中の僕、フクロウと嘘』は…復帰してから、新しいつばきになって、あれで一個「形」が出来たなって凄く思っていて。良いアルバムだと思うし、もうちょっとこのアルバムを皆に聴いてもらいたいし長く聴いて欲しいなって。でも次のフルアルバムをつばきで出しちゃうと、そのアルバムの曲が中心になってしまうし、ライブであんまり演らなくなるでしょ。
●ああ、そうですね。
一色:だから、それも何か勿体無いなっていうのもあったし、ソロをやりたいっていうのも大きかったんで。…15周年でつばきをやるっていうのは分かるんだけど、つばきも長くやってるからさ、知ってるじゃん?もう、そこから広めようと思ったらさ。
●あー、つばきの新作だとつばきを知ってる人に向けてになっちゃう?
一色:そう、だから、つばきをもっと知ってもらう為には何があるかなって思ったら、ソロで、バンド物聴かない人にも聴いて貰って、というところならチャンスあるんじゃないかなって。キャッチーな曲とかさ、色んな曲書けば、結局俺がつばきみたいなモンだから。俺がソロを出して、取材とかしてもらっても、結局は11月につばきでワンマンツアーありますって言うし。つばきの事バンバン言うし、つばきの事を知ってもらうきっかけになれば良いなって、ソロやる事で。昔聴いてた人とかにも「全然違う事になってるんだな」って知ってもらえれば良いし、じゃあもう一回つばき聴いてみようとなるかも知れない淡い期待もあって(笑)。
●一色君のっていうよりつばきの為でもある。
一色:うん、要はつばきの為って俺の為だからさ。だからそういう事になる。
●はい。バンドのソングライターでボーカリストがソロを出す時って必ず線引きの部分、とか聞かれると思うんですけど、それじゃあそれもあんまり無い?
一色:歌詞に関しては無いかな。今回ソロでやりたかったのは、音楽的なところで違う表現をしてみたかったので、歌詞に関しては一貫してこういう表現を書きたいっていうのはあったんで。ちょっとずつ書ける様にはなってきたと思うんだけど。
●こういう表現っていうのは?
一色:ストレートな言葉を、説得力持って、書きたいなって言うのはずっとあって。俺なりのね。例えば「大好きです」みたいな言葉を、恥ずかしげも無く書ける、じゃないけど、それを歌ってもかっこ悪くならない説得力を持って書ける様になりたいなって、気持ちはずっとあって。それはソロでもつばきでも変わらない。
●ああ、活動歴もあるし、そういう言葉を歌ってもしっくりくるように。
一色:やっと、追いついてきたかなって(笑)。二十歳前後って中々ね、「愛してるけど」とか書けないよ。やっと書いても大丈夫な年齢になったかなって。