マカロニえんぴつ『アルデンテ』インタビュー
INTERVIEW[2015.02.16]
『アルデンテ』は、ここにいるぞっていう、主張の一枚。
基本的に全部情けないんですけど、溜まったモノをそれぞれの唄で何かに変えようと必死になってるっていう、聴いた人にグッと来て欲しいなっていう思いで。

メンバー全員が現役音大生で構成されている5人組バンド、初の全国流通盤をリリース!
自分達の事を「負け側の人間なんで」と言い張る男子達の等身大の6曲が詰め込まれている。エモーショナルな歌声とキャッチーなメロディ、真っ直ぐに歌われるリアルで核心的な歌詞の世界は、深く刺さって勢いだけじゃない何かを残してくれる。ここから何かが変わりそうな気がする一枚だ。鬱屈したパワーが鳴らされるとこんなになるんなら、ずっとLIFEはイケてないまま居て欲しい、かも(笑)。
今回はバンド初のインタビュー!(らしい!) ボーカル・はっとりに話を聞いた。
●まずは自己紹介をお願いします。
はっとり:ボーカルギターのはっとりです。生まれは鹿児島で、すぐ東京の武蔵野に越して、1歳半くらいまでは武蔵野だったそうなんですけど、2歳から大学入るまではずっと山梨で、なのでふるさとは山梨ですね。僕自身は…好きなことをやってる時の集中力は凄いかなって。イラストと音楽が好きなんですけど、絵を描いてる時と曲を作ってるときは他の事が聞こえないくらい集中してると思います。
●芸術家肌なんですね。
はっとり:そうなんですかね…でも、人と接するのはそんなに得意じゃないのかも知れない(笑)。人見知りだったり、結構それを悟られないように、頑張るタイプなんですけど…根は、人見知りで。「人」には興味あるんですけど、対面するとちょっとこう…っていう感じなんですよね。ミュージシャンにありがちな。良い言い方するとシャイみたいな(笑)。
●人見知りなバンドマンは多いと思いますよ。特にボーカル、みたいな(笑)。
はっとり:そうですよね(笑)。
●はい。バンド結成は大学でって事なんですが、サークルという事ですか?
はっとり:僕らは音楽大学なんで、同じコースの友達と結成したのがこの「マカロニえんぴつ」ですね。音大の入ったコースが、ROCK&POPSっていう、世界でも異例な軽音楽を取り扱ってるコースで、そこで皆自然にバンドを組んだり、サポートミュージシャン目指す人はバンドは組まずに色んな人のサポートしたりするんですけど。
●ああ、もう学部としてそういうコースがあるって事なんですね。
はっとり:そうです。だから、そこで組んだバンドですね。ロックの学校ってあんまりロックじゃないですけど(笑)。
●そんな(笑)。それで、大学で初めましての人たちと組んだんですか?
はっとり:そうですね。大学入ってすぐ、あんまり話したこともないようなメンバーと(笑)、とりあえずかき集めて結成したかった、いち早く!何か、高校の時やってたバンドは高校終わりくらいの時に解散して、東京に出て新しく自分で結成して、プロになりたいなっていう思いがあったので。
●ちなみに高校の時のバンドはオリジナル曲をやるバンドだったんですか?
はっとり:はい、やってました。でもジャンル的には違いますね。ちょっとハードロックっぽかったかもしんない(笑)。結構激しめでしたね、声もハイトーンで唄ったりして(笑)。
●高音鍛えられましたね(笑)。大学でプロを目指してバンドを起こした時のコンセプトは?
はっとり:漠然としてましたね…。ハードロックだけじゃなくて幅広く好きなんですけど、そん中でも、くるりとか、奥田民生さんとかみたいに、「唄」に魅力がある、「唄」が中心のバンドがやりたくて。その、僕自身、唄に助けられる時が凄く多くて…自分が音楽に助けられたように、誰かにとってのそんな音楽が作れたらなって。そう思ってバンドを作りましたね。ポップが好きだけど、ロックも好きだからそういったテイストを入れた音楽を。
●そういう思いでバンドを組んで、メンバーは最初に組んだままの面子なんですか?
はっとり:あ、キーボードだけ最初違いますけど、初期の段階で変わって、そこからはメンバー変わってないですね。
●結成は2012年ですね。
はっとり:そう、入学した年ですね。4月に入学して、初ライブが6月なんで。
●早いな!(笑)。
はっとり:ははは(笑)。本当に急いでましたね、僕は。とにかくバンドがしたかった。
●結成2ヶ月弱で初ライブで、もうオリジナル曲演ってたんですか?
はっとり:はい、今回のミニアルバムに入ってる『なんだったっけ』って曲はもうその時には演ってましたね。高校卒業して大学入るまでって結構ヒマになるじゃないですか?その間に結構曲を溜めてたりしたので。あと、高校の時もバンドとは別で自分ソロみたいなのを宅録で作ってたので、ジャンル的にはハードロックではない物を作ってたのが、マカロニえんぴつにそのまま反映された感はあります。
●はい。今日ははっとりさんお一人なので、他のメンバーの事も教えてください。どんな人達ですか?
はっとり:はい、まずはギターの田辺由明、彼だけちょっと年上なんですね。
●あ、アニキなんですね。
はっとり:あ、本当にあだ名「アニキ」なんですよ(笑)。風貌もゴツイし、頼れる存在なんです。優しいですね、優し過ぎてストレス溜まってないかなって心配しちゃうくらい。人の陰口とか言ってるとこ聞いた事もないし、なんか、良い人です、とても。あと歯並びが良いです(笑)。笑った時の顔が素敵ですね。「アニキ」と「よっちゃん」があだ名です。パートが同じ、ギターを弾く人っていうのもあるんですけど、僕とルーツミュージックが近くて。僕、元々洋楽のハードロックが好きで、それは多分父親の影響なんですけど。それこそ往年の、ディープ・パープルとか結構渋い系が好きだったんですけど、彼もその辺はドンピシャで話は結構合うかなって感じです。泣きのギターソロを弾くんで、そこにも僕は惚れてます。あとビールが好きですね、メンバーの中で一番呑みます。
●はい。ではベースの高野さん。
はっとり:高野賢也、こいつは、変わってますね。僕、血液型って結構信じちゃうタイプの人なんですけど、他のメンバー僕含め全員A型で、賢也だけはAB型なんですよ。AB型の人ってちょっととっつきにくい所あるじゃないですか?まさにそうで。ヘンな事言います。変わってますね。だからこそ、面白いアイデアとかを唐突に出したりするのはいつも賢也だったりするんで。何考えてるのか分からない所が逆に良いかなって。あんまり一緒にいたくない(笑)でも面白い奴です(笑)。
●(笑)。はい、次はドラムのサティさん。
はっとり:ドラムのサティ、僕が一番初めに声をかけたのがサティで。何でかは忘れちゃったんですけど、バンドやろうぜって。彼も結構聴く音楽が玄人寄りで。The Doorsとか。
●おー、渋いトコいきますね。結構みなさんルーツ物好きですか。
はっとり:そうですね、よっちゃんとサティは渋いの好きですね。そういうところでも感覚が似てるかな。人間性としては、一番冷静かも知れないです、性格的に。いつも第三者目線で見てるというか。あとはフラッと一人でどっかに消えたりします(笑)。自由気まま、悪く言っちゃうと協調性が無いってなっちゃうんですけど(笑)。一匹狼オーラはありますね。サティにはコーラスもやってもらってるんですけど、違う名義でシンガーソングライターとしてライブをやってたりもしてて、だから唄うまいですね。唯一と言っていいか、他あんま歌上手くなくて、みんな(笑)。
●(笑)。
はっとり:今、賢也を鍛えてる途中なんですけど(笑)、サティはコーラスも上手いんで助かってますね。プレイもとても器用です。
●ではキーボードの長谷川さん。
はっとり:長谷川大喜、大ちゃんですね。うーん、大ちゃんは一番のほほんとしてますね。凄い楽天的と言うか、バンドの中で一番王子様タイプというか、女の子にモテちゃいますね、こいつは。元々、こいつだけコースが違って、電子オルガンコースでエレクトーンなんで、周りが女の子ばっかりなんですよね。なんか、学年でも男一人みたいな。
●あー、だから女の子の扱いにも慣れてるとか。
はっとり:ああ、そうかも知んないです(笑)。大ちゃんは2013年の春頃から入った、かな。僕もうろ覚えなんですけど、2013年の春からこのメンバーですね。
●2012年結成で、2013年春から今のメンバーで。学外のライブをやり始めると環境も広がると思うんですが、そのあたりは?
はっとり:あー、学校の中のバンドのネットワークだけでやってると、どうしても…視野が狭くなっちゃうっていうのを最初から懸念してたので、外で刺激を受けようっていうのでバンバン外でライブをやってましたね。神奈川のバンドなんで最初は横浜のクラブリザードかな。それから新宿Marbleさんには結構お世話になってて、そこに出るバンドは熱い、ハートで唄うバンドが多くて。そういうライブを見たときに、何かこう…上手い下手を超えたグッと来る物を持った人って魅力的だなって。俺、好きだなって思いました。だから、自分もそういう…何か、さらけ出して良いんだ、ダサいくらいがカッコイイんだっていう、気持ちにさせられましたね、外で活動していくと。それは転機だったかも。それまでは無かった感覚ではあります。
●それが2014年くらい?2013年あたりですか?
はっとり:2013年の終わりから2014年の夏くらい、ですね。Marbleには凄いお世話になってて、そういうバンドにも出会えて、考え方も変わっていって。去年は今のレーベルにも目を止めていただいて。そこが一番の転機ですね。ちょうど3枚目の自主盤を出した後くらいから考え方も変わって来たというか。『零色』っていう曲が入った自主盤を5月に出したんですけど、その曲出してから、「お、良いな」って反応が多くて、周りから。その曲がもしかしたら転機かも知れないです。凄く具体的に言うと。
●はい、自主制作盤も作ってたんですよね。
はっとり:はい。スパンとしては割りと早いほうだったかも。それも何故かと言うと、学校にそういう録音環境が元々あるんで、学校で録音した物を手売りしてた感じです。ライブしながら曲作って、っていう普通のバンドマンと同じような活動をしてましたけど。3曲入りのデモ音源を4枚作りました。
●はい、あとこれは凄くたくさん聞かれてると思うんですが、
はっとり:あ、バンド名ですか?(笑)
●はい(笑)バンド名の由来や意味を教えて下さい。
はっとり:はい。「マカロニ」って覗くと空洞じゃないですか?その空洞の部分って存在しない物で、だけど…有名な哲学者の言葉で「ドーナツの穴を食べる」ってあるんですけど…それに近い物で、何も無いような物だけれども、その存在意義を意識して……それに対して「えんぴつ」って、物を「在り」にしていくものじゃないですか?例えば白紙に線を入れるだけでそこには「存在」が出来る。何にも無い穴、その「無い存在」を自分達で意味の在る物にしていきたい、それをえんぴつで書き進んでいくっていう、意味を込めて、穴の象徴「マカロニ」と存在を作る「えんぴつ」で「マカロニえんぴつ」です。
●おー。語感も可愛いですね。
はっとり:はい。組み合わせて気持ちいい言葉で。あと、ありきたりな名前で埋もれてしまいたくないって言うか、そういうのも漠然とあったので。カタカナとひらがなで、もうマカロニと鉛筆なんてくっつきっこないじゃないですか?
●そうですね(笑)。最初なんだろ?と思いました。
はっとり:(笑)斜に構えてるじゃないですけど、ちょっと捻くれていたいっていうスタンスはあって。変わったバンド名にしたいなってありましたね。

●マカロニえんぴつの楽曲はどんな風に作られているんですか?
はっとり:僕が基本的に宅録、打ち込みとかして…アレンジも結構固めちゃうんですね、一人で。それをメンバーに持っていって、変えるところは変えて。大元は僕が作り上げた状態でメンバーに渡す感じですね、詞も曲も僕なんで。とにかくメロディが良くなきゃ俺は嫌だと思ってて、そこでひっかかる、グッと来る物が良いと思ってるんで、メロディが先っていう場合が多いです、歌詞よりも。弾き語りで鼻歌とかでサビが出来上がって、それをとりあえず打ち込んでみて、Aメロなりその後の展開なりを打ち込みしながら膨らましていくっていうやり方かも知れないです。
●はい、最初の一歩は楽器を触ってる時って事ですか?
はっとり:そうですね。
●ギターで、コードから探していく?
はっとり:あ、そういうやり方もあるんですけど、弾き語りでコードを弾きながら鼻歌で同時に出来ていって、というのと、ギターのイントロを最初に作って、そっから膨らましていくっていうやり方もあります。何か断片が一個出来れば、膨らむっていう。自分で楽しみながら、だんだん曲が出来ていくのも楽しみなので。
●はい。最初のインスピレーションって、曲を作ろうと意識してからなのか、何かがあって曲を作ろうと思うのか、色々パターンはあると思うんですけど、はっとりさんはどうですか?
はっとり:ああ、この感情はメロディにしておいた方が良いなって思う瞬間があるんですよ。だから何かあって、作りたいな・作らなきゃってなって作りますね。そこでボイスメモとかでサビなり思いついたフレーズなりすぐメモするんですけど。自分自身は作りたがってますね、常に。で、大体作りたいなと思うときは、ハッピーな時じゃないんですよね。その、何か…やるせなかったり、何かこうモヤモヤしてたりとか、切ない時は曲を作る一番の原動力になってるかも知れないですね。
●切ない時…曲作る人には朝方とか夜型とか、昼型もありますけど、どうですか?
はっとり:完全に夜型ですね。深夜2時以降は作曲モードみたいな(笑)。それで出来たのをちょっと録音して、満足して寝て、次の日起きて聴くと「ダメじゃん」みたいな(笑)。
●わはは(笑)。
はっとり:ボツになったりは多々あります(笑)。でも自分が盛り上がってる時に、何か断片は残しておきたいという感じですね。