Alfred Beach Sandal『DEAD MONTANO』インタビュー
INTERVIEW[2014.01.08]
■ビールの王冠
●インターネットラジオ阿佐ヶ谷Rojioで歌詞について言及されていて、『ビールの王冠』は阿佐ヶ谷のバー「Roji」の話ってことでしたが。
北:ああ、Rojiって、友達ばっかりいるし、Rojiだけの話じゃないんですけど、今東京ってこんだけバンドがいて、どっかライブとかに遊びにいったら、おう!みたいになって、ちょっと飲んで、っていう感じだから、その感じというか。それだけじゃないんですけどね。なんていうんですかね、楽しいっちゃ楽しいんだけど、虚しい瞬間もあるんですよ。
●そういうのも歌に入ってますね。
北:そうですね。虚しさは大事ですね。
●前は、風景とか、言葉をひろって作ってると言ってましたけど、前のアルバムのインタビューの時に、そういう作り方とはちょっと変わってきた、って言ってましたね。ちょっと自分の気持ちが入るようになった、って言ってて。
北:ああ、うん。なりましたね。曲にもよるけど、この曲はアルバム中じゃ一番個人的っていえば個人的な気持ちみたいのが入ってる曲です。
●風景の中に、登場人物が出てきた感じがしました。
北:人いなかったからね(笑)
●いても遠くにいる感じで。
北:それはそうかもしれないですね。
●今回も、具体的な台詞はないけど、ちょっと表情が見える感じかなあと思って。
北:ああー(笑)まあ、そうかもしれないです。よくわかんないですけどね、なんか。自分から説明することもあんまりできないし。説明するのも野暮だから別にしないじゃないですか。
●そうですね。説明する歌詞というか、説明できる歌詞って、メッセージ性の強いものですよね。
北:ああ、そうですね。
●曲は、これは弾き語りにシンセのっただけみたいな感じですよね。
北:ほんとそれだけです。
●一枚目のCDRの流れで進化したみたいな感じですかね。あれに入ってるシンセの音色とも似てて。
北:そうかもしれないですね。安っぽい音が好きなんです。

■Dead Montano
●これは次の『Night Bazaar』へ繋ぐための曲として作ったんですか?
北:最初から短いインスト作って入れようと思ってて、どうしようかな、ってごちゃごちゃやってて。バンドっていうのは念頭にあったんで、イメージ的には男っぽいというか、シティじゃないんですよ。荒野とか、マカロニウェスタンみたいなイメージがあって。そういう感じのインストあったらいいなと思いながら宅録で作ったんです。声とかもサンプリングしてるんですけど、あれもマカロニウェスタンの映画からとってるんですよ。アルバムのモードっていうか、その時の雰囲気みたいなのを、映画の予告編みたいなつもりで作ったんですよね。
●なるほど。
北:最初はこれを一曲目にするかな、って可能性もなきにしもあらずだったんですけど、真ん中になりましたね。
●確かに、『ビールの王冠』から『Night Bazaar』にいきなりいくのは唐突ですよね。この曲を挟んでちょうどいいというか。
北:箸休めってわけじゃないですけどね。カセットのテレコとか使ってごちゃごちゃやってました。『ビールの王冠』とか『Dead Montano』とかは、ほぼ家で作ってました。
●この二曲はミックスが阿部共成さんですよね。
北:そうですね。
●今回、色んな人がミックスやってますが、曲によっていい感じにわりふられてて。
北:ああ、それも結果的にそうなったって感じなんです。録り自体は全部GOKでやって、近藤祥昭さんにやってもらったやつも残ってるし、得能直也さんがやったらいい感じになりそうなのはお願いして。自然とそうなりました。三人関わってますけど、それぞれ今までの流れの中で、それぞれと関わらせてもらってて、個人的に知ってるから、いい感じに自由な感じでやれたのでよかったかな。短い期間スタジオばっとおさえて、エンジニアさんもそこに来てもらってばっとやる感じでない、のんびりした進め方だったけど、それもあっていい感じの流れになったんじゃないかなって。アルバムの流れを考えながら作業してる感じだったので。
●短い期間で集中してやると、その期間のものだけになりますもんね。
北:そうですね。その時間のパッケージみたいになって、それはそれでもちろんいいんだけど、今回はそういう感じじゃなかったんですよね。
●それでも全体がばらばらな感じはしないですね。
北:ああ、そうですね。それはよかったです。

■Night Bazaar
北:これは前にカセットとEPで出したやつよりも、ちょっとラテンぽい感じかな、リズム的に。あと、もうちょいシュッとしてるっていう感じ。
●この曲もCDRの頃からありました?
北:いや、それまではいかないような気がする。
●結構古い演奏のYouTubeがあがってますよ。VIDEOTAPEMUSICさんとやってるのとか。[動画]
北:あれって『One Day Calypso』のあたり?
●いや、もっと前だと思います。
北:うそお!七針でバンドでやってるやつですよね。
●そうです。あとmyspaceにもあがってましたね。
北:うん。最初のデモをあげたのはmyspaceで。ああ、七針のは2011年1月だ。
●じゃあ『One Day Calypso』より前ですね。2011年の7月なので。
北:あれ?『One Day Calypso』って2010年くらいかと思ってた(笑)じゃあ『Night Bazaar』すごい古いな。アルバム結構古い曲ばっかだな。
●でも、ちょうど半分が新しい曲って感じですね。新旧足りないことなく漏れることなく入ってる感じですよね。
北:そうですね。そういう意味じゃ、在庫を出した感じはありますし、新しいのも入れたし。

■殺し屋たち
●これは若干『One Day Calypso』寄りというか、セッション寄りというか。
北:まあまあまあ。崩れ度みたいな感じではね。
●これは最初にやった時は弾き語りですか?
北:ライブでやってるのは三人でやってる気がする。いや、覚えてないな(笑)弾き語りでもやらないことはないんですけど。これ、ベースから入る曲が作りたくて、ベースから入ってくれ、って。あとは、ドドッていうみっちゃんのバスドラ。これでもうこの曲いいわ、いい曲だな、って思って(笑)ちょっとジャズっぽいけど、わりと得体の知れない感じもあるし。短調、マイナーの曲を作りたいと思ってた時期で、それで作ったのかな。あと、この曲作った時に住んでたのがアパートの4階だったんですけど、夜中にぼけーっと窓の外とか見てて。ヒッチコックの『裏窓』って映画の、自分の知らないところで起こってる事とかを、偶然覗いちゃうみたいなモチーフが頭の中にありながら作った曲です。最初は単純な三拍子の曲だったけど、バンドになったら、ドラムとかベースのアレンジでもうちょい変な感じになって。面白い感じになってよかったなと思ってます。

■トーチカ
北:これもマイナーの曲作ろうと思ったら、ぶっちぎりで暗くて、自分でも引くくらい暗くなって、うわー…って。
●アルバム以外でも、今までの曲の中で一番暗いかも。
北:めちゃくちゃ暗いですよね。
●でも、これぞビーサン、って感じもします。
北:多分、リズムの感じとかもそうだし、
●ギターの感じもそうだし。
北:そういう意味では、そうかもしれないですね。最初、人に聞かせてみた時に、キモ怖いって言われて。気持ち悪くて怖いって何もいいことない(笑)ポジティブな感想が一個もないじゃん、って。
●(笑)
北:だから、絶対この曲やろう、と思った(笑)素敵な曲ばっかりやってもしょうがない。
●今回、ざっくり言って、素敵めというか、明るめの曲多いですもんね。
北:素敵め(笑)でも、あんまりマイナーの曲って作らないですね、不思議と。わりと皆そうな気がするな。そんなこともない?作ってるか?
●どうですかねー。でも、メジャーな曲でも北里さんの曲は寂しい情景の曲も多いですよね。
北:それは性格の暗さ(笑)100%パーティーソングみたいなのは、自分の性質にないから。でも、弾き語りでマイナーな感じだと、どろどろして、四畳半じゃないけど、怨念ぽい感じになるのも嫌だし、って思ってて。
●でも、これを聴くと、暗くて怖いのと、ちょっとギャグというか、面白みがある気がします。
北:(笑)バンドでやったの観たことありましたっけ?
●まだないです。弾き語りだけで。
北:バンドだと、わりとウケる感じですよ。途中メタルみたいなんすよ。
●それすごい聴きたいです(笑)
北:音源で言ったら、間奏でシンセのノイズ入るところあるじゃないですか。あそこがブラックメタルみたいになって(笑)
●聴けるの楽しみにしてます(笑)

■Coke,Summertime
北:『Night Bazaar』とかと同じなんですけど、一個言いたい単語をサビで連呼するっていう曲ですね。サマータイムって言いたかっただけ。おれ、たまにそういう曲、あるんです。ただその単語を力強く連呼したいっていう(笑)
●力強く(笑)
北:あと、ホットケーキが美味しくて有名な喫茶店があって、家からチャリで環八下っていけば行けるんだけど。梅雨明け直後にスカーンって晴れた時に、休みだしホットケーキ食いに行こう、って、環八をチャリで南下してる時に、なんでも出来るみたいな、初夏の無敵な感じ、マリオでスターとった時みたいな気持ちになって、その時に原形というかモチーフを思いついて作った曲ですね。
●なるほど。
北:実際、コーラを持った小学生を追い越したりしたんですよ。夏きたわーって感じで。
●サビで連呼系のせいか、明るい曲だからか、ちょっと地獄ディスコ編成でやりそうな感じもしました。
北:一回くらいあの編成でもやったことあるかもしれないですね。リズム強めの曲だからっていうのもあるかな。
●そうなんですね。
北:デモの段階だとシンプルっていうか、馬鹿っぽい感じっていうか単純な感じだったんです。デモを二人に渡す時は、ドラムとかベースを軽く入れてる場合もあって、これもサンプリングとかで入れてて、ミニマルな感じだったんですけど、バンドに持っていって、その辺のダイナミズムは大分変わったかな。Aメロの方はちょっとレゲエっぽくって、サビでボサノヴァみたいなニュアンスのリズムかな。
●なるほど。『Rainbow』と『Coke,Summertime』を、2012年のとんちまつりで聴いて、すごく印象に残ってました。フォーエバーヤングにサマータイムか!って。
北:まあ、半分ギャグですけどね。でも、別に笑わせたいわけではないから。ばかばかしさが欲しいくらいのことで。

■モノポリー

<曲の生まれたいきさつ> ホライズン山下宅配便楽曲人気投票ベスト10を演奏するライブが2011年12月18日に行われた。そして、投票で1票も入らなかった曲は、そのライブの前日にボーカルの黒岡まさひろが弾き語りライブで別途披露した。ABSは、どちらの日にも演奏されなかった、数票しか入らなかった曲をホライズンの代わりに弾き語りで歌うという趣向で12月18日に出演。楽曲人気投票のために、ホライズンのメンバーは今までの曲リストを作成したが、その際に一曲、メンバーが誰一人曲も歌詞も何も思い出せなかった曲があり、そのタイトルは『夏はモノポリー』。この『夏はモノポリー』というタイトルだけをたよりに、ビーサンが代わりに思い出してくれ、と言われて、この日に初披露となった。実際はもちろん、ABS作詞曲だが、本人は当日のMCで、これはギターの伴瀬さん曲っぽいな、とコメント。

北:出来た直後から思ってたけど、これは多分、いい曲だ、と思って(笑) ●タイトルだけ言われて作ったのって、どんな感じの曲かなーってその時に観てたんですけど、あれ、すごいいいな?!って思った覚えあります(笑) 北:おれもそう思った(笑)あれ、いいじゃないですか、これはちょっと、これからもやらせていただこう、って。 ●じわじわライブでもやってましたよね。 北:一応、あのイベントのための、みたいな曲だったから、説明するのも面倒くさいし、その後も自分のライブでやるのは野暮かな、って思ったんだけど。 ●最初のうちは、たまーにやるレアめな曲みたいな感じでしたよね。 北:そう。ライブでやるときには必ず説明してたし。 ●だんだん説明短くなってきたから、本当にホライズンの曲なのかな、って思ってた人もいるかも。 北:それは多分、一番説明が面倒ではしょってた時期かな(笑)その説明すらもなくなって、自分の曲みたいにやるようになって。でも、冷静に考えてみたら、これは自分の曲だな、って。全部自分で作ってるから(笑) ●そうですよね(笑)タイトル以外は。 北:で、タイトルも、もちろんどうしようかと思ったんですけど、許可をとりまして。次アルバムに入れたいと思ってて…って。そしたら、当のホライズンの人たちは、はあ…みたいな感じで。あ、そうなの。いいんじゃない?みたいな(笑) ●(笑) 北:でも、きっかけを他人から与えられてるっていうのはわりと珍しいから、思い入れありますね。曲作りって大体自分のインスピレーションから作るから。 ●そうなんですね。今回この曲はリードトラックですよね。 北:そうですね。そうなっちゃってますね。 ●『モノポリー』が7inchで先行リリースされましたけど、アナログは初ですね。前にインタビューで、次はカセットかアナログ出したい、って言ってましたが、どちらもリリースしましたよね。 北:両方作りましたね。アナログはやっぱりいいですね。 ●あれはSummer Of Fanから出そうと? 北:Summer Of Fanとは、2012年のリゾームライブラリーに出た時に知り合ったのかな。わりと馬が合うっていうか、すぐ仲良くなって。すげえちゃらんぽらんな人たちなんだけど、それもよくて。たまになんなんだよってなるけど(笑) ●そのあと、向こうでライブするときに一緒のことが多いですよね。 北:ああ、名古屋は殆どそうかもしれない。お世話になってますね。 ●意外と早くカセットに続いてアナログも出ましたね。しかも今回はアルバム先行のシングルカットで。 北:ね。たまたまなんだけど、それは。アルバム作ってる時に、アナログ出すけどどうする、ってなって、今ちょうど作ってるから、一曲シングルみたいにして、B面だけそこにしか入れないやつにしようか、って話をしてて、今回のアナログが出来たって感じですね。 ●いいタイミングで。 北:よかったですね。 ●あと、この曲のVIDEOTAPEMUSICさん制作のビデオ、すごくいいですね。[動画] 北:あれ、ビデオくんちの風呂だけど(笑) ●フルCGにも見える不思議な質感の映像でしたけど、実写なんですね。 北:ね、変わってる、妙な感じがすげーするすね。水中カメラ買ったから使いたいってビデオくんが言ってて。じゃあ…沈めるか、って(笑)サンプリングじゃない感じでPV作ろうってビデオくんと話してて、でも結局ちょっと使ってるからサンプリングっちゃあサンプリングなんだけど。まあ、水浸しになってしまいました、折角モノポリー買ったのに、びちょびちょ。 ●(笑) 北:あと、この曲で多分初めて、ガットじゃないアコギを弾いてる。レコーディングで使ったのは初めてです。最初は全部エレキでやってて、それはそれで成り立ちそうだったけど、アルバムの中で考えたら、色がずっと一緒なんで。確かそれはGOKの近藤さんの提案だったんですけど。それありかも、ってやってみて。両方のパターンのテイクもらってたんですけど、通して聴いてみた感じ、アコギの方がいいかも、って。ライブではエレキだから違うんですけど。 ●なるほど。最初聴いた時にすごくギターが印象的だったんですが、そういう試みもあって、聴いた時にギターに気持ちがいったのかもしれませんね。 北:それはあるかも。そう言われてみれば、結構新しい試みはしてるのかもしれないですね、無意識に。