音速ライン
『from shoegaze to nowhere』(フロム・シューゲイズ・トゥ・ノーウェア)インタビュー
INTERVIEW[2013.10.05]
■M.02 ありがとね
藤井:これは、俺が作詞しなかった初の作品で。
●はい。箭内道彦さんが作詞ですね。共作することになったのはどういうところから。
藤井:さっき大久保も言ってたけど、『Alternative』の時に、俺が凄く生々しく放ったメッセージを受け取るのが大変でしたっていう人が結構いたので、
●ああー。
藤井:生々し過ぎてね。じゃあ…俺じゃない第三者が、福島の気持ちを書いた物を俺が歌ったほうがいいんじゃないかなって。福島の気持ちに関してはね。風とロックでツアー回ってるときに箭内さんに駄目もとで話をして、「箭内さん歌詞書いてもらえませんか?」って。そしたらスゲー簡単に良いよって言ってくれて。ただ、「福島の気持ちを書いてください」って言ったんだけど、人によっても場所によっても全然違うから、福島の人の気持ちはコレですっていうのは書けないわけで、だから「藤井君のことを書くんだったらいいよ」って。それで、この歌詞は箭内さんと俺がそれまで話してたことで、箭内さんが印象に残った言葉しか使ってないの。
●おおー。それは凄いですね。
藤井:うん。「藤井君が言った言葉で書いたよ」って。それが条件だったんだよね。書いてもいいけど、藤井君の言葉以外は駄目だよって。
大久保:本当凄いんですよ。箭内さん全部覚えてて。
藤井:あの時、こう言ったじゃん、って。
●一緒にツアー回ってて、同郷ですし、同じ気持ちだったんでしょうね。
藤井:多分ね。おかしくなりそうなんです、とか本当に言ってたし。全部そう。
●唄ってて、これはもう自分だな、って?
藤井:もう、歌詞が上がってきた時点で、分かってくれてるなって。スゲー見ててくれたんだなって感動したね。…福島のさ、原発の事が何も片付かないままで、現実とどう向き合っていくかって事なんだけど、難しいんだけど夢見ていかなくちゃいけないし。その時点で色々考えてくれる人っていうのはいっぱいいるわけで。忘れてる人もいっぱいいるけどね。考えてくれてる人に対してありがとね、とか。例えば俺と大久保の関係でも、俺とバンドやってるから自動的に巻き込まれて考えざるを得ない状態になってたりするんだよ。そういう身近な人達に「ありがとう」って言う時期でもあるんだよね。2年半って。もちろんまだまだ色々あるんだけど、「ありがとう」っていう気持ちに対しては「ありがとう」としか言えないっていう。そういう状態が良いなって。ふざけんじゃねぇよって言うよりは、あいつも考えてくれてるんだな、ありがとねって。そういうのが大事な時期に来てんだなって、多分箭内さんも考えてくれてるんじゃないかな。うん。
●2年半たってるからこその。
藤井:うん、怒りの時期は過ぎた。超怒りの時期は『Alternative』で発散して。まだまだあるけど、そればっかり言っててもしょうがないから、より、ジョン・レノン的な方向に。
●ピースフルな方に。
藤井:うん。
●この曲はタワーレコードの先行シングルの2ヴァージョンと、アルバムとで3パターンあるじゃないですか?シングルの時の大サビがアルバムでは無いのはどうしてですか?
藤井:ああ、「コントロール…」のエリアは、俺はもうライブではそこは歌いたくなくて。ライブではみんなで楽しく騒いで終わる曲にしたかったから、こういう形になった。
●えっ。じゃあ限定盤は無くなる前に買わないと聴けなくなるんですね。
藤井:そう。幻のヴァージョンになるよ。
●でもあのくだり、とても好きです。
藤井:うん、メッセージ的には絶対にあれは聴いて欲しいんだけど、ライブで、あそこでしんみりして欲しくなくて。盛り上がって終わりたいから。だからやっぱ3ヴァージョンある意味はあるよね。

■M.03 Paint[]
●これは何て読めば良いですか?
2人:「ペイント」
●その後ろの部分は?
藤井:これは枠です。その中を塗りつぶせって事。
●はい。これ、ワウが効いてますね。
藤井:懐かしいでしょ?
●なんかね、(笑)ファイヴ・サーティ、みたいな(笑)。
藤井:あー!嬉しい(笑)。こういう会話がしたいんだよね(笑)。
大久保:あはは(笑)。
●ワウと言えばと思って(笑)。ドライヴ感も90年代っぽいなと。
藤井:ははは(笑)。これライブでやるの凄い楽しみ。
●歌詞的には?前向きですよね。
藤井:何か、時間軸に意味があんのかな?って。生き方次第で、時間軸にしばられてんのはどうなのかなって。だってさ、1年365日とかで過ごしてる意味ってあんのかな。
●お、大きいところ来ましたね。
藤井:うさぎってさ、長生きして10年くらいなんだけど、人間はそれの8倍から9倍くらい生きるわけじゃん?ってことは、俺にとっての一日がちゃーこ(藤井家のうさぎ・3代目)にとっての8日とかになるでしょ。だから2日留守しただけで、ちゃーこにとっては2週間居ないことになってるのかなって。そういう刻み方すれば、万が一早く死んじゃったとしても、まあ、悔いはねぇんじゃねえかなと。時間軸の捕らえ方によってね。人生長いと思ってるから無駄に過ごす時間があるわけで。
●じゃあ人生の濃さ、みたいな事?
藤井:そう、濃い人生って何だろうなって。「消えてしまっても それはそれでいい」って言うのは、そう思えるような瞬間瞬間を生きることだなって事なんだけど。イコール、自分色に染めていくしかないじゃん、そういう事って。
●なるほど、何というか、やったれ!みたいな感じもありますね。
藤井:やったれ感!
大久保:言われてるし(笑)。やったれ!
●全体的に歌詞も若い印象があるし。
大久保:若い(笑)。
藤井:青い?
●それです。勿論色々分かった上でのって処ですが。
藤井:この歳で分かってない青さ出したらね。
大久保:そしたらある意味天才だな!(笑)
藤井:あはは(笑)。これはもう、ライブで早くやりたいね(笑)。


■M.04 変身の術
●カウントが(笑)。
大久保:ジュンさんの。また生かしちゃいました(笑)。
藤井:こういうの生かすとライブが見えるもんね、オバケちゃん(笑)。
●これも応援ソングですよね。
藤井:迷ってる暇は無いよ、迷ってるんだったらやっちゃった方がいいよっていう処を後押し。意味の無いことなんて無いんだから、やって失敗したらそれはそれで。迷ってもやもやしてるんだったらやっちゃいなっていう。やっちゃえ!
大久保:また(笑)。
藤井:やったれやったれ!
大久保:コラ!(笑)。
●これ、最初ちょっとキーが低いですか?
藤井:そう?
大久保:キーというよりメロディと歌い方じゃないですかね。
藤井:俺に言われてる感があるからかな。沁みてる人はそう感じるのかも。最後も「自分次第でしょう?」って聞かれてるしね。
●タイトルの、へんしんのじゅつっていう、
藤井:あ、これ読みは「へんしんのすべ」ね。
●あっ。すいません!リアルに恥ずかしいです。
2人:わはは(笑)。
藤井:本当に幸せな日々って自分のマインド次第だからさ。変身の術はみんな持ってんだけど、それをどういう感じで使うかとか、変わり方はそれぞれだし、ただもやもやしてんだったら変わっちゃった方が良いよって。
●はい。お話を聞いてると、前も色んなきっかけが散りばめられてたと思うんですけど、今回はきっかけと共に「こうしたら良いよ」ってその先も提示されてるような。
藤井:そうだね、ヒントになれば良いなって。俺も迷ったりもやもやしたりするから、そういうときに、悩んでるんだったらやっちゃった方が良いなって思うから書けるわけで。
大久保:だから昔と違うのって、結局自分の感情に素直になってきたね、曲書くことに関しては。
藤井:そうだね、確かに。だから年取ったんだね。
■M.05 Lost
●はい。これが先にあった曲ですね。
藤井:これは自然に出てきて、何が言いたいかとかではなくて。それぞれの物語をっていうのもそうだし、一人一人みんな、物語を作って生きてるわけだから、凄いことだと思うんだよね。今、眼に見えてる人にだってそれぞれあって。それって、何かしら記録に残さないと死んだらおしまいなわけで。
●あー。
藤井:そういう事を思って生きてる人って、居るようで居ないような気が。
大久保:まあ、自覚というかね、噛み締めながら生きてる人はそうは居ないだろうけどね。確かに。
藤井:うん。しんどいけどね。でも、そういう風に生きてた方がね、間違いないからね。日々を噛み締めて生きてる上で、大事な思い出も忘れるんじゃなくてさ、ちゃんと憶えてないと勿体ねえなって。この曲書いてからなんだけど、昔の彼女何やってんのかなとか、
思ったりすることもあったりして。幸せになってれば良いなって思ったりもするし。
●ちょっと懐古して。
藤井:そうやってたまーに思い出してさ、曇り空の月灯り程度くらいに色んな人の事を思い出しても
良いかなって。太陽がギラギラ照らすんじゃなくてね。
●喪失とか失恋かと思ってたんですけど、そう考えると暖かい気持ちになりますね。
藤井:そう、みんなもそんな気持ちになれればいいなって。やったれやったれ!
大久保:(笑)。
●…やったれにハマりましたね(笑)。
■M.06 under the sun
藤井:これは、風とロックの広島の時に、Houribe LOU(ホウリベ ルウ)君ていう、ダルシマーっていう楽器をやってる、
大久保:ハンマーダルシマーね。藤澤由一君ていう。
藤井:この曲、印象的な音が聞こえると思うんだけど、その子と知り合って、絶対この音アルバムに入れたいなって思ったから、連絡先聞いてレコーディングに呼んで日帰りで来てもらって。
●おおー。シャリシャリ感のある、軽い音の弦物のですか?
大久保:そうそう。弦を叩いて音を出す。
藤井:ピアノの起源なんだよね。
大久保:不思議ですよ、見た目。弦が60何本とかあって。
藤井:ネットで調べて見てみ。で、この音を使った物をって曲を考えて。だからLOU君の音ありきで作った曲。
●ちょっとケルト音楽っぽくてお琴にも近いし、何の音だろうなって思ってました。じゃあ音のイメージから曲を作っていった?
藤井:そうだね、これは。
●歌詞の世界をこの方向に持ってきたのは?
藤井:あまりにも眩し過ぎるとさ、暗いところからいきなり眩しい所に出たりすると何も見えなくなるでしょ?でも、それでも前を向いて、行かないと。で、段々眼が慣れてくるじゃん?どんどん人生が分かっていくっていう、感じ。
●哲学っぽいですね。
大久保:文学少年だね。
藤井:(おもむろにカバンから本を取り出して読むポーズ)
●いやいや(笑)。はい、タイトルは?いくつか意味がありますけど。
藤井:めちゃめちゃ眩し過ぎる処って焦げちゃいそうとか。そこからさ、また日陰に入ると、もう眼が眩しい所に慣れてるから、暗くて見えない、だからどっちかに進んでいかないと一向に見えない。答えは自分なんだよね。それでも夢を見て、明日の夢を見て、生きてるわけだから。
●はい。良い歌詞ですよね。
藤井:うん、俺コレが一番好きかも。個人的に好きなのはこの曲で、言いたいことを言えたのが『傘になってよ』かな。だから6,7って重要かもね。


■M.07 傘になってよ
藤井:これはね、本当に歌詞をよく読んで貰いたい。うん。
●言いたいことは全部歌詞にあると。
藤井:うん、詰まってる。気持ちなんかさ、曇りやすいんだけどさ、こんな悲しみがさ、溢れた状況の中で、どうか曇らないでくださいってところだね。うん。光を放つような歌を唄うっていうのは、そういう曇りやすい気持ちを曇らないようにする唄を唄いたいなって。それってやっぱり唄が傘になってるんじゃないかなって思って。
●なるほど。何に対して「傘になってよ」って言ってるのかと思ってたんですけど、そこだったんですね。
藤井:曇りやすい、いろんな事から。うん、一番言いたかったのはそこかな。何か、「物語」とかじゃなくて、俺が今一番言いたいことは。
●最後の一節が弾き語りになってるのも良いですね。沁みます。
大久保:ああ。
藤井:オサムさんが(エンジニア・杉山オサム氏)入れたほうがいいよって言ってくれて。
●これは歌詞カードを見ながら聴いてくださいと。
藤井:うん、そうだね。