カミナリグモ 『REMEMBER ICEGREEN SUMMER』インタビュー
INTERVIEW[2013.09.10]
■M6.僕でいたいのさ -REMEMBER THE SUMMER Ver.-
上野:この曲は、このアルバムの中では一番昔に作った楽曲で。遡ると2003年とかに作った曲ですね。
●じゃあジャスト10年前ですね。
上野:うん、『王様のミサイル』のちょっと後くらい。まだ大学生だった頃。当時一人で弾き語りをやってたので、それもあって結構ギターを頑張ってちょっとしたフレーズを結構弾いたりしてて。弾き語りでも成立するようなね。だいぶギターを頑張ってる(笑)。
ゴマ:わははは(笑)。
●頑張ってる(笑)。
上野:そう、一人で頑張ろうとしてた頃の曲で。当時は当時なりに音楽活動に行き詰ったりとかして、そういう中で出来た曲なんですけど、根本的な処は今と変わらないなって。今は色んな経験もして、当時よりも大人っぽく対応できることも多いんですけど…やはり、少年時代の延長と言うか。特有の感情的な部分が色濃く世界観の中に現れているような楽曲ですね。
ゴマ:その2003年とかは僕がカミナリグモをサポートする前で、啓示君が一人で演ってるのを何回か見たことがあります。当時、この「僕でいたいのさ」って曲に救われる部分もあって。…他人の生き方とかに憧れもありつつ、でも自分自身が自分であり続けるって、それは難しいけれどもそうあるべきっていう、それは今も昔も変わらない処があるし。
●これってギターとピアノだけですか?声の響きとかもグッと迫ってくる感じがあって。
ゴマ:そう、これはギターとピアノだけですね。「僕であること」に他の色付けは要らないっていうか。そこは変わらないから、ギターと鍵盤だけでやりました。前にリリースした時ともほとんど変えてないですね。
上野:……アレンジ的にも「僕でいたいのさ」と。
ゴマ:そう、そこ!
●はい(笑)。

■M7.YAWN SONG -REMEMBER THE SUMMER Ver.-
●これはピアノで弾き語り、ですか?
上野:ギターのループもちょっと入ってますね。メインはガッツリピアノって事で、最初の方向性を決めて。こういう2人で完結するっていうコンセプトの中でバリエーションを出すのに、ピアノが伴奏の主体になるアレンジって、
ゴマ:皆無だったね。無かった。
上野:うん、全く無かったので、これは良い機会だなって。やってみたら思いのほかしっくりきて。
ゴマ:カミナリグモはこういうアレンジをする事は無いって俺は思ってたんで。やっぱり啓示君のギターがあって、そこに鍵盤が違うところで立つっていう、立ち位置だと思ってたから。今回やってみて、それが『YAWN SONG』っていうのも良いなって。
上野:原曲はアップテンポな曲だったんでね。こうやって全くアレンジを変えても曲の良さが損なわれないっていうのは、やっぱり…その…曲が良いっていう(笑)。
●恥じらいながら言わないで下さい(笑)。
ゴマ&上野 わはは(笑)。
上野:曲が良いのかなって、思っちゃいますよね(照笑)。
■M8.Innocent Wind
上野:この曲が唯一、今回の中で全くの新曲です。他の曲は特典音源とかセルフカバーなので。これは前々からあった曲なんですけど、こういうエイトビートのミドルテンポな楽曲って結構たくさんあったので、候補から漏れてただけで。今回バランス的にも良いなという事で入れました。元々は友達の結婚式で唄って欲しいと言われて…その友達はカミナリグモの活動初期にスタッフとして手伝ってくれてた人なんですけど、でもちょうど結婚式の日が福岡でライブが入ってて。ビデオレターで新曲を書き下ろして送りますって、作った曲です。今回の耳で観る映画っていうキャッチコピーがありますけど、この曲もそれに相応しいと言うか。こういう登場人物の心模様って、自分は結構好きで。ツンデレ感と言うか(笑)大体、感動的な映画って最初は仲が悪かったりするじゃないですか?ちょっと斜に構えた主人公がだんだんその、心を開いていくみたいな。
ゴマ:そうだね(笑)。
上野:そういう心理描写があって、ラブソングなんですけど…物語の中では、ああいうツンデレ感は大事だと思うね!
ゴマ:そうだね!悪いところから始まるとかね。
上野:疑い深い主人公が自分の事を理解してくれる人に出会うっていう流れで。だからカミナリグモの音楽を理解してくれてる人達に向けても唄っていけるメッセージだなって。このツアーでも心を込めて唄って行きたいなと思ってますね。

■M9.カバン
上野:これは今年の春の『MY DROWSY COCKPIT』ツアーのファイナルの特典で。でも曲自体は結構前からあって、2005年かな。当時も音楽活動に行き詰っていて…行き詰ってばっかりなんですけど(笑)。
全員:わはは(笑)。
上野:まあ、カミナリグモって、ずっと編成が変わり続けてきたバンドだからその時々で別の悩みもあって。2005年は一旦ライブ活動を休止してるんですけど、それを決断する時に作った曲です。内容もそういう気持ちが汲み取れるような歌詞の世界になってるんですけど。やっぱり長い人生どこかで、一旦ね、背負ってきた物を肩から下ろしてリセットして、また進んでいくっていうタイミングってあると思うんですよね。そういう時に是非聴いて貰いたい楽曲です。前回のツアーファイナルで特典音源にしたのも、一つ、自分の中でもこのタイミングで唄いたい歌っていう意図もあって。チャレンジしてた大きなツアーが終わって…その後の予定というのも当時は白紙だったので。ツアーではアンコールで唄ってたのかな。
ゴマ:そうだね。
上野:とてもその時の気分に合ってるなと思って。悲壮感もありますけど、最後には「何も怖くないさ」って、強がりかもしれないけど、進んでいく事を止めない主人公の姿がしっかりと見てとれるので、とても自分らしい曲かなって。
ゴマ:この曲を詰めてた時は『MY DROWSY COCKPIT』ツアーが始まる前だったし、単純にこの曲が2人でやるのに良いねって事だったんですけど、ツアーの後どうしようかってまだ見えてない状態で『カバン』と共にツアーを回っていって、その中でこの曲を聴きながら、あらためて2人でも出来ることがたくさんあるって思いましたね。

■M10.Goodbye, yesterday!
上野:この曲も実は特典音源で、前回のツアーの広島会場限定音源で。アレンジは当時配布した物とは結構違ってます。元々は僕がカープファンっていう事で広島FMでカープにまつわる番組をやってたんですね。その中で選手のテーマソングを作るコーナーがありまして、河内貴哉投手のテーマソングとして作ったんです。僕と同い年の選手で、当時は3球団競合のドラフト一位で期待の大型左腕だったんですよ。入団して3年目くらいまでは150キロくらいの剛速球を投げて、スライダーも切れまくって、オールスターにも出たりしたのかな。その選手がフォームを崩して不調になって怪我もしてしまって、リハビリが長かったので育成選手っていう一軍の試合に出れない扱いにまでなってしまったんですね。もう復活することはないんじゃないかってほとんどのファンが思ってたんだけど、去年、育成選手から二軍で投げ始めて、結果を出して、一軍の試合に登板して、8年ぶりの復活勝利を上げたんですよ。
●凄いですね。
上野:うん、でも当時は先発のピッチャーだったんですけど、復活してからは130キロ出るか出ないかで、ほとんど変化球で、ワンポイントで出るようになって。
●あの、すいません、野球詳しくなくて、あんまよく分かんないです…。
ゴマ:あははは(笑)。
上野:(笑)その、前とスタイルが全く違うんですけど、結構抑えたんですよ。それを見て僕は感動してしまって。当時には戻れないけれど今の自分なりのスタイルでまた這い上がってくるっていうドラマがあるんだって、凄く希望が湧いて。そういう流れもあって、この曲を作って。FMの担当の方がこの曲を河内投手に伝えてくれて聴いてもらって、河内選手も「感動しました」って言ってくれて、なんとマツダスタジアムの登場曲にしてくれたんです。自分としても嬉しかったですね。でもちょっと前にまた怪我をされてしまったんです。逆にそういうときにもまたこの曲を聴いてもらいたいなと思います。また復活した河内投手に会えるのを一ファンとして心待ちにしています。
●はい。人をテーマに書いたということで。
上野:うん、河内投手のイメージでもあるし、バンドとしてのメッセージとしても。やっぱり人生って順風満帆では無いと思うので、この歌詞の世界が沁みる人は多いんじゃないかなって思います。最後の「水溜りは今日を映してる」って事で、この、ジャケットにこういう写真が使われてるっていう、感動的なエンディングな。
●ああ!!
上野:是非、注目してみてください。この曲僕だけ喋ったね(笑)。
ゴマ:あはは(笑)河内投手のくだりね(笑)。まあバンドとしても、真新しい僕に会いに行くっていう、プラスなイメージの明るく前に進んでいく、行きたいっていうアレンジになってます。

●もうツアーが始まってますが、このサイトを見ている人に向けてメッセージをお願いします。
ゴマ:本当に、最初に言いましたけど、新しいことを色々やってみようっていうのが分かる音源になってると思います。今後色んな事をやってみるのが楽しみだなっていう、きっかけにもなりましたね。出発点は2人でツアーをやろうっていうところだったので、この音源を持ってツアーを回るんですが、それも単なる2人のアコースティックツアーと言うよりは、色々と出来る限り駆使してやってみようかなって。こういうカミナリグモも面白いなって楽しんでもらえるようにしたいなって。
上野:3月にバンドの大きなツアーが終わって、その後の具体的なイメージは無かったんですけど、ふたりグモのツアーをやって、音源をリリースしようという事を思いついて…それを実行に移していくことで、凄く自分の気持ち的には軽くなったと言うか、前向きになって。2人で出来ることをしっかりと突き詰めて行きたいという気持ちになったと言うか。2人で出来るという形を作ることで、また、これからカミナリグモの活動をコンスタントに続けていける一つのきっかけになるというイメージが湧いたので、最近は凄く気分が良くて。一時、曲を作るモチベーションが下がっていたんですけど、自分の気分が変わったのでまた新しい曲が出来ていくような気がしていて、今凄くワクワクしています。
●はい。ありがとうございました。(TEXT&PHOTO:朝倉文江)

■カミナリグモHP http://www.kaminarigumo.com/

『REMEMBER ICEGREEN SUMMER』
01.アイスグリーン -REMEMBER THE SUMMER Ver.-
02.バスと占い師 -REMEMBER THE SUMMER Ver.-
03.ローカル線 -REMEMBER THE SUMMER Ver.-
04.エイプリルフール
05.ブックマーク -REMEMBER THE SUMMER Ver.-
06.僕でいたいのさ -REMEMBER THE SUMMER Ver.-
07.YAWN SONG -REMEMBER THE SUMMER Ver.-
08.Innocent Wind
09.カバン
10.Goodbye, yesterday!
BSE-153 \1,800(tax in)
2013.09.11発売