COLUMN[2014.05.11]
夏目知幸の「なっしんぐ・すぺしゃる」
Vol.5 『ツアーメン』
アルバムが出てツアーをしています。残すところあと2公演。

バンドはツアーで成長するってよくききます。きかされます。確かに、します。同じメンバーと車に乗って色んなところへ行って、毎回違う環境で、違うお客さんの前でバンドをやります。いろいろ考えなきゃならない事が増えるし大変ですがグッとみんなの意識が集中するチャンスでもあります。そういうの乗り越えていくと自然と演奏が良くなります。ま、普通に、一緒にご飯食べたり飲んだり寝たりするだけでもぜんぜん演奏って違ってきます。

バンドは恋愛と似ています。最初は寝泊まりだけでも楽しくて、お互い分かり合えて成長しますけど、長くやっているとそうでもなくなります。仲がいいのが普通になるからです。居心地がいいのに甘んずると良くないです。ダレてきます。キュっとフレッシュでいる為にはやってみた事ない事をやってみるとか、ちょっと喧嘩してみるとかが必要です。失敗してもいいのです。居心地のいい100点よりチャレンジして20点のほうが価値があったりもする。やってみなきゃわからないです。
なのでバンドはツアーで毎晩違うライブをします。僕らもしかり。とてもスリリングです。

ここ2ヶ月インタビューを受けさせてもらう事が多く、自分のルーツについてよく聞かれました。そこで思い出したっていうか、あ、そうかと気づいた事がありました。僕のはじめて買ったCDは奥田民生『股旅』なんですけど、やっぱりこれにかなり影響をうけているなあと。たぶんこれのせいで僕はバンドってのを強烈に意識するようになりました。
当時はJ-POP全盛。打ち込みも多かったですが、バンドも多かったです。スピッツ、ミスチル、ラルク、LUNA SEA、グレイ、エレカシ、ウルフルズ、などなどたっくさんいました。で、奥田民生。僕が好きになったのは「さすらい」とか「イージュー★ライダー」そして「恋のかけら」がヒットしていたからです。それが収録されると知り『股旅』を買ったんです。

すごくよく覚えてます、最初に再生した時の感じ。今で言うところの、今僕たちすごく言われますが、「ゆるいな」って思いました。当時はそんな言葉なかったですけど。たぶん今の言葉に訳すとそんな感じだと思います。ちょっとかっこよくいうと「ラフ」って感じですね。僕にはちょうどよく感じました。あと、すごくリアルだなって思いました。今聞き返すと、すごくバンドバンドしているアルバムです、『股旅』。
過度な装飾がなく、過度なメッセージがなく、時おりふざけた言葉で鳴らされる曲たち。少年夏目、グッと来てしまいました。

それから数年たち、中学三年生、修学旅行中の思春期夏目は京都で民生のツアーバスを発見、とても興奮しました。なんか、よく思い出します。

またそれから一年後、高校一年生のとき、渋谷公会堂で初めて奥田民生のライブを観ました。それまで僕は中学生のときゆずのアリーナコンサートいったり、高校入ってラママにゴーイングステディー観に行ったりしていました。どちらも熱狂的でお客さんが全員シンガロングしまくりのライブです。そういうのをライブだと思っていた青二才夏目。民生のライブは衝撃でした。客ちょう大人しい 笑。あと、民生ちょう淡々と曲をこなす。アジらない。そしてなんとMC中、禁煙の構内でタバコを吸う。うわ。なんとかっこいいんだろうかと思いました。
はい。
やっぱりそうですね、書いていたらなおさら、やっぱり影響受けてるなと思いました。

そんなこんなで、『股旅』を最近聞き返しています。
とてもいいです。「ツアーメン」という曲があります。最初聞いた時はただただかっこいい曲だなとしか思っていませんでしたけど、今聞くと、違って聞こえて、またいいです。


夏目知幸
バンド、シャムキャッツのボーカル&ギター。3/19に3rdアルバム『AFTER HOURS』リリース、現在全国ツアー中。好きな食べ物は中華焼きそば。最近気になる事は「マキシ丈ワンピを流行らせたのは誰なんだ」です。

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