COLUMN[2013.11.08]
夏目知幸の「なっしんぐ・すぺしゃる」
Vol.2 大変だ!実家がお引っ越し!
こないだ久しぶりに車を運転したんですけど、東京ほんとに自転車多いすね。混んだ車道の横をすーっと抜けていくおしりたち。そう、おしりが目につきました。かっこいい自転車のサドルって小さいから、おっきいおしりの女の子になるとおしりの3分の2がこぼれてる。かわいいなあと眺める。車内ではザ・スミスがかかっている。スタジオZOTに借りたこのタバコ臭いバンで聴くといつもとちょっと違う気がする。あれ、なんだったか、スミスの曲で自転車のPVがあった。「この話聞いた事あったら止めてね」(※注1)だ。オダジ(※注2)が教えてくれた。

なぜ僕が車を運転したかというと、実家が浦安から引っ越すことになり、次の家では僕の部屋はないので荷物を運び出さなくてはならなくなったから。引っ越しの理由はいろいろあるとは思うけれど決定的なのはやっぱり3.11か。両親、液状化でガタガタになった浦安を目にしてここにずっとは住めないと痛感、落ち着いたいま引っ越しに踏み切った、て感じだと推測。
故郷と実家が別の場所になるさびしさについてぼんやり考えながら進まない車の中おしりハンター化した俺。信号待ちでたまたま、キレイな(と思いたい)女性自転車乗りがすっと車左前方に止まった。白い自転車だ。まっすぐで長い髪を後頭部でキレイにひとつにまとめてる。アウトドアブランドの真っ青のアウターにカーキのミニスカート、黒いレギンス。あのおしりの帰る場所のことを思う。こぼれた3分の2もしっかりと受け止める椅子がある。「どっぷ~ん」みたいな音がした。なるべくゆっくり音読してもらいたい。「どっぷ~ん」だ。温度がある。温かい。これを安心というんだなと知った。

実家につき、荷物をまとめて車に入れた。
ピアノも引き取った。ヤマハの電子ピアノ。それからスペシャルゲスト、亀幸。小5の時にハムスターを飼う事を反対され、それならばと近くのホームセンターで亀を買って「もう買っちゃったから。」ていう顔で帰宅、飼いはじめた亀、亀幸。おれ知幸だから亀幸と命名。ちなみに妹も一緒に飼い始めたのだが、妹の方の亀の名前はカメリ。自分の名前がエリだからカメリ。完全にパクり。でもカメリて名前の方がオリジナリティもインパクトもある。負けたと思った。

亀幸の入った水槽を助手席の足もとに置いて出発。「おまえも新しい場所での生活がはじまるね~。」なんて話しかけながら東京への帰路。
四谷辺りでずっとかけっぱなしにしていたスミスが突然止まった。車内音楽はカセットアダプターに自前のCDウォークマンを繋いで流していたので、電池でも切れたかと思って見ると、水槽にぽちゃんしていた。驚き慌てる亀幸。おじゃんになったCDウォークマン。割と最近買い替えたばっかり。引き上げると中からじゃぼぼぼーと水が出て来た。新宿御苑の下を通るトンネルが混んでいる。それを抜け山手線を越える。甲州街道。タバコに火をつけた。「もう冬も近いからお前来て早々冬眠だね~」と亀幸に話しかけた。そういえば亀幸はタバコの匂いは初めてのはずだと気づいて、なんとなくやめようかなと思ったり。

…これ、コラムなのか?

また来月~!
んじゃまた~

(※注1)
The Smiths Stop Me If You Think 投稿者 Celtiemama “Stop me if you think you’ve heard this one before” / The Smiths 聞いた事なくても止めたくなる歌詞。秀逸なチャリビデオをどうぞ。 (※注2) オダジ=小田島等。 日本のイラストレーター、デザイナー。(で、いいのかな…?) シャムキャッツでは『』、『GUM』、『たからじま』のイラスト、デザインをやっていただいております。 アーカイブ作品集 『ANONYMOUS POP』(P-VINE BOOKS)最高。 漫画単行本『無 FOR SALE』(晶文社)や監修本『1980年代のポップ・イラストレーション』(アスペクト)にもやられた。僕はオダジのファンなのです。 ホームページはこちら! →http://odajimahitoshi.com/
夏目知幸
バンド、シャムキャッツのボーカル&ギター。現在Turntble Filmsとスプリットアナログ12インチ発売ツアーを行っている。好きな食べ物は中華焼きそば。最近気になる事は「マキシ丈ワンピを流行らせたのは誰なんだ」です。

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